第四話 冒険者さん、お侍に助けられる(1)
────キャインッ!
木々の合間から陽光が差し込む静かな森の中、甲高い悲鳴が
敵が完全に沈黙したことを確信したのか、周囲の茂みから四人の男女が姿を現す。
「えーっと、今ので何匹目でしたっけ?」
「五匹目だね。これで依頼の分は達成だけど…………」
生死を確かめるように
「笑えるくらい〝黒〟ばっかだな。俺ら呪われてんじゃねえか?」
「マウリよ、先週の
冒険者パーティー〝荒野の
そろそろ冬に向けた備えが始まるこの季節、低位の冒険者にとって森狼は格好の獲物となる。防寒具の需要が増えるため、普段は大して値の付かない毛皮の買取額が今の時期だけは高騰するのだ。
黒、白、茶などの単色から、
そういった事情もあり、毎年必ず数人は真っ白な毛皮を手に入れて、
「まだ日も高いし、もう少しだけ粘ってみようか」
「そうですねぇ……。せめて灰色を何匹か狩らないと、今月のお家賃が払えないです」
「黒五匹だと金貨一枚くらいだったか?」
「金貨にゃあ届かんわい。依頼の達成報酬と合わせても……まぁ、せいぜい二日分の食費になるかどうかじゃな」
背負っていた荷物を下ろしながら尋ねたマウリの質問に、バルトは三つ編みにした
乱獲によって倒すよりも見つけることの方が難しい森狼だが、今日は森に入ってすぐ群れに遭遇できたため、すでに依頼は達成済みだ。しかし、倒した五匹はどれも値段の安い黒の毛色ばかり。運が良いのか悪いのか、女神様に弄ばれている気分になってくる。
「こないだの武器の修理費っていくらだったっけ?」
「銀貨八枚だね。……今週中に払わないと出禁にするって親方に言われたよ」
「バルト、オーラフさんとはお友達でしたよね!? 待ってもらえないか頼んでみて────」
「パメラよ、もうすでに二度も延期してもらっとるんじゃ。あやつは
荒野の守人は、はっきり言えば金に困っていた。
低位の冒険者パーティーにはありがちな話だが、装備の破損で金欠になり、稼ぐために無理をしてまた装備を壊すという悪循環に
毛皮が少しでも高値で売れますようにと、普段よりも幾分か丁寧に倒した狼を解体する。作業をしながら顔を突き合わせて相談し、もう少し森の奥まで探索範囲を広げることに決めた。
「おい、見ろよ。
狼を探して森を進む道中、マウリが複数の足跡を発見した。
「……フランツ、どれが足跡か分かります?」
「いや、正直全然分からない」
「見た感じ四、五匹の小せえ群れみてぇだ。追うか?」
小鬼は単体では弱く、武器さえあれば子供でも倒すことのできる低級な魔物だ。ただし、
「そうだね。時間にはまだ余裕があるし、森狼を探しがてら追おうか」
リーダーであるフランツの判断に、異議を唱える仲間は一人もいなかった。
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