第一話 お侍さん、異世界に降り立つ(2)
「「………………………………」」
しばしの
「はぁ……。貴様のその石頭は、一体誰に似たのやら」
腕組みしたまま天を仰いで大きなため息を
「ククク、父上でしょうなァ。確実に」
「
「貴様らは構わんのか。
「長男としちゃあ情けねェ限りですが、俺にゃ剣の
「拙者も異存ございません。剣の道を捨ててはおりませんが、
黒須家の剣術は次期当主となる跡継ぎではなく、当代随一の遣い手に受け継がれる習いとなっている。普段から屋敷を空けることの多い三男坊は知る由もなかったが、今回、兄弟が呼びつけられたのは、実はこの後継を決めるためだったのだ。
長兄は謙遜して見せたが、三人の腕前はいずれも父に勝るとも劣らない。御家に仕える歴戦の勇士と比較しても圧倒的な力の差があったが、その中でも、元親の才能は誰が見ても頭一つ抜けていた。周囲から
父は真意を見極めるように二人の眼を交互に見つめると、神妙な面持ちで元親へ向き直る。
「元親よ、
「是非も無く。もとより我が道は修羅道に通じております」
「よかろう、貴様に秘伝を授ける。その後、免許皆伝を
「
「これより先、無為に死ぬことは許さん! ひとかどの武士になるまでは家の敷居を
「ははっ!!」
父や兄たちからは見えていなかったが、当主の命に
黒須家の剣術の後継者には、武者修行の
このご時世に剣術
他家の武士を叩きのめすたびに寄せられる苦情に、父上や兄上が頭を下げてくれていることも。
「ただなァ、元親。兄ちゃんはちっとばかし心配なんだ。お前は
「何でも剣で解決しようとするのはお前の
腕は立つが型破りなところがある末弟を兄たちは案じたが、当の本人は
「ご心配には及びません、兄上方。俺も近頃は随分と我慢強くなったと自負しております」
「…………お
「当家の
「「………………………………」」
やけに立派な刀を持っているとは思っていたが…………
武士の魂とも言える刀を奪ってきたと平然と
父から最後の
目的地もなく、町から町へとより強い敵を求めて
立ち合った武芸者の大半は口だけが達者な期待外れだったが、中には眼を
しかし、その全てを斬り、その全てに勝利してきた。
◆ ◆ ◆
家を出て、もう十年近くが
あれだけ夢見心地だった旅路も、最近は心躍ることが少なくなっていた。己より強そうな相手を見つけること自体が徐々に困難になり、いざ立ち合ってみても敵が仕掛けてくる技や戦法は
そろそろ家に帰ることを考えるべきなのだろうか?
今の自分は、武者修行をやり遂げたと胸を張って誇れるのだろうか?
自問自答を繰り返す。天下無双に到達したなどと
──────つまらない。
命を
久方ぶりに見つけた〝自称、天下無双〟に
どうか命
願わくば、見たことも聞いたこともないような、
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