第40話
日本が震撼した歴史的問題作がついに上陸。
「マジカルポリス・らん!」
「マジカルサムライ・あんてぃでござる」
「マジカルエクソシスト・とかめっ!」
授業によって更生した元動物の魔法少女たち三人が織りなす、悪との戦いを描いた物語が今、始まる!
◇
「学級閉鎖しましたッス」
『えぇ……』
らんの衝撃的な発言にあんてぃととかめが困惑の声を出す。闇の動物だった頃、自分たちのために課題を出して更生してくれた教室がなくなったというのだ。
ようやく光の補習部屋にやってきたというのに、魔法少女に擬人化した途端開幕学級閉鎖宣言である。
「それでは……某たちはいったいこれから何をすればいいでござる?」
「そうだよっ! せっかく魔法少女に任命されたというのにっ!」
「いえ、やることは決まってるッス!」
そう、彼女たちが闇から光の陣営にやってきて、そして魔法少女として任命されたその使命はただ一つ。
「私たち光の陣営と敵対する巨悪……外道首領『ダークパイセン』を倒すことッス!」
「外道首領――」
「――ダークパイセンの討伐っ!」
ダークパイセンを倒さなければ光の陣営に光はない。彼らを倒せるのは彼女たち三人の魔法少女たちなのだ!
「というわけで次に行うべきは――」
らんが二人を連れてどこかへと連れていく。
そうして辿り着いた先は……砂浜だった。
「『鋼のビーチトレーニング』ッス!」
「なるほどでござる」
「先ずはフィジカルだねっ!」
数時間後。
「力が漲る……ッス」
「力が溢れる……でござる」
「力がぱわーっ!」
筋肉モリモリとなった魔法少女たちがついにダークパイセンがいる居城に殴り込みに行く。やがてかつての飼い主、かつての仲間だったダークパイセンと相まみえる魔法少女たちに、ダークパイセンが苦々しい顔を浮かべる。
『この俺を倒しに来たのか、ダークアニマルヒーローたちよ! 闇から生まれ、俺のために戦ってきたお前たちが俺に牙を向けるか!』
「もう私たちは改心したッス!」
「力が溢れるでござる!」
「力がやーっ!」
『なんでその二人は話通じないの?』
「行くッスみんな!」
『やーっ!』
守りがないダークパイセンに修行して筋肉モリモリとなった彼女たちの攻撃は非常に痛い。このまま攻撃が通れば戦いが終わる……だがただでやられるダークパイセンではなかった!
『舐めるなよ! 我が闇の創造を食らえッ!』
『なっ!?』
ダークパイセンの手に闇が集まる。
そして現れたのは可愛らしいマスコットだった。それはまさに三人にとっての『仕組まれた運命の邂逅』だったのだ。
「きゅ?」
『かわいい~!』
一瞬にして『メロメロ』となった三人はダークパイセンに攻撃するのをやめて自分たちの家にマスコットを持ち帰る。
そして彼女たちの脳内に溢れ出すマスコットとの存在しない思い出。彼女たちの間ではそのマスコットとの絆は幼少の頃にまで遡り、共に戦い、共に過ごした存在として認知されるようになった。
ここで彼女たちとマスコットのきゅーとの絆の深さを語ろう。
――そう、それは今から十年前(捏造)。
「きゅーっ!(やめるのだあんてぃちゃん! とかめちゃん!)」
「某には許せないことが一つある……それは某が大事に取っておいた『ヘルヘイムのリンゴ』を食べたことでござる!」
「あんてぃちゃんだって私の食べたかった限定おにぎりを食べたよねっ!」
「きゅーっ!(やめるのだ! やめるのだ!)」
『きゅーは黙ってて!』
「きゅ、きゅーっ!?(痛いのだ! ぶたないで欲しいのだ!?)」
その時コンビニ袋を手にしたらんが部屋に入ってきた。
「あれ二人共どうしたッス? 二人が好きなリンゴとおにぎりを買ってきたので一緒に食べようッス」
『わーい!』
「き、きゅー……(よ、よかった……のだ……)」
これによって三人ときゅーとの友情が深くなったのである。これが三人とマスコットの尊い思い出。だがその友情も長くは続かない。
「た、大変ッス! きゅーが、きゅーが!?」
『え!?』
なんときゅーの寿命は僅か一日。
宿敵ダークパイセンの手によって生み出されたきゅーは翌日の朝にはもう天に召されてしまったのだ!
『そんな、きゅーが!?』
きゅーは死んだ。
深刻なペットロスになった三人は腑抜けになった。あれだけ鍛え上げられた筋肉も最早皆無。攻撃をしてもゼロダメージになるだろう。そしてそれを見越したダークパイセンの次なる手が忍び寄る。
『行け『次元怪盗ジエンドフォックス』よ! 彼女の心を奪え!』
「コン!」
新たな刺客によって三人に激震が走る。
三人が住んでいた部屋にとかめが血相を変えて入ってくる。そんなとかめにあんてぃは怪訝そうな顔をして尋ねた。
「どうしたでござる?」
「た、大変だよっ! らんに恋人ができたってっ!!」
「ござる!?」
空前絶後の大ピンチ。
私たちは決して裏切ったりしないと約束を交わした三人に裏切り者が発生。期せずして独身となった二人はらんの元へと駆け付ける。
だがそこで見たのは。
「彼氏が死んだ……」
『らん?』
腑抜けとなったらんだった。
狐獣人と恋に落ちたらんだったが、その矢先に狐獣人の正体がダークパイセンが遣わした刺客であることをダークパイセンにバラされ、彼氏を目の前で生贄にされたのだ。
更にきゅーというマスコットを失ったばかりのらんにはかなりの心労だった。
「鬱だ、死のう……」
らんは死んだ。
恋人を失ったことで心の拠り所が消えたのだ。
「もう二人になったでござるな……」
「私、許せないよ……っ!」
決意を新たにする二人だがペットロスの影響もあって戦力にはならない。一方自ら召喚したジエンドフォックスを生贄にしたダークパイセンは、時空から新しい戦力を呼び出すことに成功した。
その名も『覇龍神王ジャッジメントディザスター』。
かつて光の陣営に所属していた強大なる覇龍が闇に飲まれた状態で、敵の手によって召喚されてしまったのだ。しかもペットロスとなった二人に単純な力では到底彼の覇龍には勝てない。
もしここにらんがいてくれれば彼女の力で倒せたのかもしれないと、失った後で悔やむ二人。そして迫る覇龍。覇龍の攻撃の矛先はあんてぃだった。
「ここまででござるか……!」
「駄目ーっ!!」
諦めるあんてぃだが、そんな彼女をとかめが突き飛ばす。彼女たちの絆が生み出した『決死の身代わり』だった。
「駄目でござる、とかめぇ!」
「大丈夫……っ!」
覇龍の爪がとかめの体を貫いた時、とかめの力が解放される。自身の命と引き換えに覇龍の力をそのままダークパイセンに返す一生に一度の奇跡だった。
「命……燃やすよっ!!」
『ぐわーっ!!?』
とかめの犠牲によってダークパイセンに一矢報いた光の陣営。だがここでどう巻き返す? 頼りになる仲間は消え、残ったのはペットロス状態の自分。
あんてぃは心が折れそうになった。
頭に生えている触角も項垂れて使い物にならない。
「――そうだ、アイドルになろう」
魔法少女マジカルサムライ・あんてぃ。
気が狂った瞬間である。
――否!
これは気が狂ったのではない。
これは光の陣営によって齎された天啓だった。まさに『愛ドルLIVE - 奇跡の萌え』の始まりだったのだ!
「これで某が客を集めきれなければ世界は終わるでござる……!」
今ここに、サムライライブが始まる!
彼女のライブでファンが三人も来れば大成功。彼女の歌声は果たして世界を変えられるのか……運命の集客!
一人目。
ドラゴンハンターを営んでいるユウタ。
二人目。
つい最近風呂が壊れて涙目な巫女、タマリ。
そして最後――!
「お願いでござる、お願いでござる……! 某の、某たちの花道にどうか……! 散っていった仲間たちにどうか、救いを――!!」
ライブ会場に訪れるのは……。
「待たせたな」
そこに現れたのはそう、ユウタと同業のつい最近擬人化趣味に目覚めたドラゴンハンター、リョウマだった!
これで三人のファンが訪れたことにより、世界を覆っていた闇落ちの闇が晴れていく。その突然の事態に驚くのは当然、ダークパイセン一人のみ。
『馬鹿な……俺のネガティブワールドが!?』
「某の歌を聞けぇーっ!!」
『GYAAAAAAA!!?』
闇が晴れたことにより正気に戻ったジャッジメントディザスターにあんてぃのライブが炸裂する! 光ある道に仲間を戻す曲『恋はジャッジメントロード』によって闇の陣営にいたジャッジメントディザスターが光の陣営へと舞い戻ったのだ!
「頼んだでござる……覇龍どの」
『GYAAAAAAA!!!』
一人で決死のライブを終えたあんてぃを残し、全てを託されたジャッジメントディザスターがダークパイセンの元へと飛び立つ。
とかめの力によって怪我を負っていたダークパイセンに、ジャッジメントディザスターの一撃を受ければ消滅は必至。
『俺の、負けなのか』
負けを悟るダークパイセンに光の陣営の頭首『ライトジャッジ』が語り掛ける。
『――カオッチャ。楽しかったぜ、先輩』
その言葉を最後に、ジャッジメントディザスターの一撃がダークパイセンに迫る。そうして光と闇の戦いは今――。
「らん……とかめ……きゅー……終わったでござる……」
『ジャッジVSリフeR!”#$%――……レフェ』
『ジャッジ WIN!』
『結社カオスティック・ギルティアの四天王を倒しました』
『ジョブ:決闘者の限定スキルを習得する条件を満たしました』
『決闘者スキル『RE:ボーンワールド』を習得しました』
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