第34話
「エーシス!」
キャンピングカーの上にいたエーシスがフラリと体が傾いているのを見て、僕は急いでサウンドビジュアライズで彼女の体を支える。
「下ろすぞ!」
「ンゴ!」
アンさんの指示に従ってエーシスを車内に移す。
「大丈夫?」
「お兄ちゃん……疲れた……二度と相手したくない……」
:草
:頂点プレイヤーが相手なら誰だってそう思う
:でも妹ちゃん勝てたやんけ!
:センリちゃんとの練習もあるだろうけど、初心者が頂点プレイヤーに勝つという快挙やで!
:50000¥/ おめでとう!
:50000¥/ 妹ちゃんも頂点プレイヤーに勝ったとかヤバいなセンリちゃんの一族
「ところであのお爺ちゃんは?」
「粒子になってエーシスの中に入ったよ」
「やだぁ……」
:クッソ涙目で草生える
:そんなに嫌かwww
:まぁ服も来ていない仙人が体の中に入るとか悪夢以外何物でもないしなwww
:デュエル仙人「解せぬ」
:これは残念ながら当然
エーシスの心情的には嫌なのかもしれないけど、これって残念ながら仕様らしいんだよね。まぁそれで新しいスキルを手に入れられたんだから良いと思うけど。
「いや、僕でも嫌だな……」
「でしょ~……?」
「あの仙人今頃涙目になってるンゴ」
「とにかくエーシス、アンタが初めて四天王を相手に勝ったんだ。よくやったよ!」
「ありがとうアンさん……!」
アンさんの祝福にお礼を言うタイミングでエーシスの突進するように抱き着く人影があった。
「エ゛ーシ゛ス゛さ゛ま゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「うわぁ!? なになに!?」
「わ、わだぐじ……!! ハラハラドキドキで胃が痛かったですわあああああ!!」
「どうどう、リンちゃん!」
その子、エーシスがメンタルダメージを食らう度に顔を七色に変えてたからね。当人じゃないのに一番メンタルにダメージ受けてたのリンちゃんだと思うよ。
「? ジャッジ君、どうしたの?」
「あ、いや」
ふと、ジャッジ君だけ僕たちを遠巻きで見ていることに気付く。
「その、凄かったぜエーシス」
「でしょ~?」
「う、うん……!」
ジャッジ君もエーシスのデュエルを見て何かを感じたんだろう。いくらか前のジャッジ君の雰囲気に戻ったような気がした。
:そういえば四天王のスキルってどんなだった?
:結局デュエル仙人はスキル使わなかったな
:使わなかった(なお仙術)
:スキルおせーて!
「あぁ、そうそう! えーと獲得したスキルはねー……あった、『RE:ボーンワールド』だって!」
「今回はどんなインチキスキルなんだ?」
僕たちもアンさんと同じ気持ちだ。
これまでの決闘者スキルはどれもぶっ壊れと評しても文句はない性能をしていて、デュエル仙人とのデュエルでエーシスを勝利に導いた要因でもある。
これから四天王と勝負をするならスキルの詳細を知っておいた方が今後の対策も容易にできるだろう。
「あっ、それなら私が説明いたしますわ」
と、そこにリンちゃんが手を上げた。
「そういえば双極の一人だったね」
「だから双極の決闘者スキルを含めて解説をしますわ」
これはありがたい。四天王だけじゃなく双極のスキル概要も知れるのはかなりのアドバンテージだ!
「それでは先ず四天王が持つ『RE:ボーンワールド』の設定は――」
そう最後まで言い終わるそのタイミングで、キャンピングカーが突如として急ハンドルをする。
――ドゴンッ!!
そしてその直後に先ほど僕たちいた場所が爆発して、車体を揺るがすほどの衝撃がやってきた!
『!?』
「な、なにが起きたんだい!?」
「状況報告!」
混乱する頭をなんとか抑えて、僕は咄嗟にキャンピングカーのAIに命令を下す。
『外部カラノ 攻撃ヲ 検知』
「外部? ――まさか!」
窓を開けて外を見る。
するとそこにいたのは、無数のプレイヤー。
「徹底抗戦だオラァ!!」
「いくらセンリちゃんたちでもここから先は通さねぇぜ!!」
『デュエルで妨害をしろ!』
:げぇっ! 結社の構成員!?
:嘘だろ、まだこんなに戦力が!?
:お前ら配信見れなくてもトレンドとかで分かってるだろ! エクストラリワードとか嘘だったんだぞ!?
「あ、あの! 私が見つけたのエクストラリワードじゃなく、ただゲーム内イベントを作れるリワードなんですの!!」
「そう思ってるのは嬢ちゃんだけだ!」
「え!?」
まさかの返答にリンちゃんが目を見開く。
「俺らはなぁ! あの方から教わったんだ! 世界を混沌王社会に塗り替えるその仕組みについてをなぁ!!」
「あ、あの方って誰ですの!?」
「俺たちはあの方が理想の社会を作ってくれることを信じている!」
「俺たちは選ばれしデュエリスト! 我が結社カオスティック・ギルティアの構成員だぁ!!」
結局あの方って誰!?
「……まさか?」
「ジャッジ君?」
「いや、なんでもないぜ……ちょ、危ない!?」
「迎撃用意!」
『迎撃シタイト 思イマス』
キャンピングカーからロケット砲が展開され、次々と襲い掛かってくるキャラクターたちを迎撃していく。
「とにかくこの人たちを蹴散らしてアジトに乗り込むしかない! リンちゃんは運転席でAIをナビゲートして!」
「わ、分かりましたわ!」
「僕たちはアジトに辿り着くまでに迎撃するよ!」
『うん!!』
:ついに最終決戦か!
:おい、俺たちも参加するぞ!
:え、いいのか!?
:スキルはないけどそれでもデュエリストの一員だろ!
:あいつらが物量で攻めてくるならこっちも物量だ!
結社の総攻撃を受けて視聴者のみんなも僕たちに加勢するつもりらしい。現に夢幻鉱山近くに来ていたデッキ持ちのプレイヤーが加勢する光景も見える。
「オラオラァ! 俺たちを置いて先に行けセンリちゃん!」
「こいつら全員、倒しても構わんのだろう?」
「先ずは一番槍を務め――ぎゃああああ!?」
「クソ、なんだこいつら!?」
「いきなり現れて俺たちを妨害しやがって!」
「ハッ! 結社の力をその身に――ぎゃああああ!?」
:大混戦だ!
:また祭りか? 私も同行しよう
:花〇院
「そこを右にですわ!」
『恐ラク 右 デスネ』
「確実に右ですってば!?」
その時だった。
――ブォォォオオオオン!!!
「っ!? この音は!?」
腹の底が響くほどの大爆音にアンさんが目を見開く。そして流れ弾をも恐れずに窓から身を乗り出すと、アンさんが叫ぶ。
「あ、アイツは……!」
「――ようやく貴女と対決することができますのね」
「この私とキャラ被りしてる口調の方はまさか!?」
心当たりがあるのかリンちゃんが顔を蒼褪める。僕もアンさんに倣い、窓を覗くとそこには……。
「その口調、そのいけすかねぇ雰囲気……まさかアンタは!」
「五年ぶりでございまして? 東の総長様?」
「西の総長……!」
え、なに……総長!?
見ればそこにはバイクと呼ぶのに異様な乗り物があった。
大型バイクによって牽引されながら走る台……その上で、フリルの付いた特攻服を着た女の人が椅子に座りながら優雅に紅茶を飲んでいる光景だった。
「私は四天王が一人……お嬢様総長のアルビトロ」
「そして私はお嬢様に仕える四天王の一人……執事副総長のガマゴンでございます」
え、四天王が二人!?
いやでも待って……。
「四天王五人いない!?」
:リフェリー、アービター、クラマでこの二人だろ?
:五人いるーっ!?
:我ら五人で結社の四天王!
「まさかアンタが結社にいるとはねぇ……!」
「貴女を倒すために、結社で牙を磨いてきましたことよ」
「エセお嬢様が無理に優雅ってんじゃないよ!」
「うるっせぇですわねぇ!!」
あの人エセなんだ……。
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