第33話

 まえがき

 大変遅れてしまい、申し訳ございません。




 -----------------------------




「ハプニングカード『アニメ化の試練』! アニメ化されるまで、作者に訪れる試練を表したカード! その設定の内容は次の自分のターン、ランダムに出題される試練を解決することで様々な恩恵を得られるカード!」


 混沌王というコンテンツがデジタルカードゲームだからこそできる異色のカード。

 そして今最もエーシスの助けになれるかもしれないカードの一つでもある。


『発動された『アニメ化の試練』の設定により、儂は強制的にターンエンドさせられる……ターンエンドじゃ』


 そして次のエーシスのターンでデュエル仙人はエーシスに対してあらゆるキャラクターカードの設定を開示することができない。

 万能ではないけどまさに時間稼ぎにピッタリなカードだ!

 だけど当然強い設定にはそれ相応のデメリットが存在するのが世の常だ(一部のカードを除く)。


「試練に失敗した場合、私は手痛い罰を受けることになる。だからこの次のターン、私はなんとしてでも試練を突破しなくちゃいけない!」

『成功すれば良いがな……』

「私のターン、ドロー!」


 そして試練、オープンだ!


『『アニメ化の試練』が開始されました』

『ランダムに試練を出題します』

『確定しました。今回行う試練は――』




 アニメ化への機運。

 条件:自分ステージゾーンをキャラで埋める。

 成功時:お互いのメンタルを入れ替える。

 失敗時:条件未達成でターンエンドした場合、ステージゾーンに残ったキャラクターカードの枚数分×2のメンタルダメージを受ける。




 :アニメ化されるだろって作品は結構な確率でアニメ化されるよな

 :されますか……?(アニメ化待ちの人間)

 :き、気長に待てば……


「ステージゾーンをキャラで埋める……」

『アニメ化の機運は人がいなければ高まらない……つまりお前は計五枚のキャラクターカードをステージゾーンに揃える必要があるのじゃ』

「五枚、かぁ」


 ただ、今のエーシスには問題が一つある。


「今の手札は一枚のみ……」


 そう、何をやるにしても手札が一枚だけじゃあ心許ないのだ。


『それに加えて、その手札は自分の場にデザイナーキャラがおらんと発揮できないシチュエーションカードじゃ』

「やっぱり分かっちゃうか……」

『これぞ我が仙術、だからの』

「確かにこのカードだけじゃステージゾーンを埋められない」


 でも今のエーシスにはあれがある!


「ここで私は決闘者スキル『RE:バースワールド』を使用するよ! 真のデュエリストとやらは分かんないけど、私はカードを一枚その場で創造することができる!」

『……使ってきよったか』


 なんだろう……エーシスが決闘者スキルを使うと宣言した時、心なしかデュエル仙人の顔が険し気になったような気が。


『さぁ、スキルを使ってまでお前はなにをする?』


 デュエル仙人の問いにエーシスは静かに答える。


「――今、この会場には何もない」


 立地の悪いコンテスト会場。

 頭のおかしい審査員たち。

 だというのに、そこには人がいない。

 彼女たちを演出するドラマもない。


「ならば今ここで! 私がそれらの流行を呼び覚ます!」


 手を掲げた先に一枚のカードが生まれる!


「私が創造するのはこのカード! シチュエーションカード『ファッショナブル・ムーブメント』!!」


 かつて夢を見たルーキーとデザイナーのコンビがいた。彼女たちは夢半ばで姿を消した。だけど彼女たちの頑張りは、密かに伝わっていた!


「私は先達の夢を受け継いだ夢見るルーキーたちをこのステージに上がらせる!」


 デッキからファッショナブル・ルーキーと名の付いたキャラクターカードを三枚、ステージゾーンに特殊演出させる。


「来て! アカネ、アオイ、アカリ!」

『だがデザイナーのいないルーキーたちに何ができると?』

「『ファッショナブル・ムーブメント』の設定は終わらないよ! ルーキー三人集まったところで勝ち上がれるわけがないし!」


『え!?』


 三人のルーキーがエーシスのまさかの発言にビックリしてるんだけど。


「ムーブメントの更なる設定を開示! 時代は移り変わり、ルーキー一人にデザイナー一人という時代は変わった! 自分使用済みゾーンに覚醒したルーキーキャラがいる時、このステージゾーンに新しいキャラがやってくる!」


 ルーキー三人をまとめて面倒を見るキャラ。

 即ち――。


「――『ファッショナブル・プロデューサー - TACTO』!」


 仮面を被った既視感のあるオネェが三人の元にやってくる。


『ここに、原石たちがいるわね?』

『え?』


 嬉しそうに、そして懐かしみながら声を発するに三人は頭に疑問符を浮かべる。だけどその次にが発したその言葉に、三人は目を見開く。


『どう? 貴女たちを導かせてくれないかしら?』

『……!』


 その言葉を受けるか受けないかは、火を見るよりも明らかだろう。


「プロデューサーの名前はルール上『ファッショナブル・デザイナー - タクト』と同名同ステ、そしてデザイナー扱いになるよ!」

『冥府より蘇ったか……!』


 更にプロデューサーとなったTACTOの設定により、ルーキーキャラに対する破壊耐性が付与される。

 これが年数を経て、少女たちを守れる立場を手に入れた大人の力だ!


「デザイナーとルーキーが揃ったことでステータスが変動する! デザイナー一人とルーキー三人のそれぞれ三セットのステータス変動だよ!」


 これで四人とも全ステ7。 


「そしてルーキーのステータスが変動したことにより、計三回の採点開始!」


 どのルーキーキャラも攻撃力は7。

 なので3のメンタルダメージを三回分だ!


「なお尺の都合により一括りで採点ね!」

『え!?』


 スタイリッシュなBGMと共に審査員が点数を下す。


『芋畑? 1点』×3

『時代の再来を感じる。2点』×3

『思いあがるな。0点』×3

『色がクレイジーだ。0点』×3


 :毒舌の審査は終わらねぇ!!(ドンッ!)

 :まるで成長していない

 :これが新しいムーブメント……?

 :マジでルーキー全員、同じ審査評で草


『今あいつウチの顔を見て言った?』

『ピンクじゃないのに酷いよお姉ちゃん……』

『やはりピンクは駄目なんですよ……』

『……あの野郎まだいやがったか』


 クラマ。

 MP20 → 11。


「これであと一人……! ここでTACTOの設定を開示! 使用済みゾーンから『ファッショナブル・ルーキー』と名の付いたカードを一枚――」

『ならば儂はこのタイミングでフラグカードを回収するとしようかの』

「えっ!?」


 あと一人だっていうのに、デュエル仙人はいったい何を!?


『フラグカード『切り札発揮詐欺』……条件はキャラクターカードが設定を開示しようとした時じゃ。このフラグにより設定を開示しようとしたキャラの設定を無効にする』


 エーシス。

 MP5 → 2。


「そ、んな……!?」

『キャラクターカードの設定でなければ『アニメ化の試練』の設定によって無効化されたことじゃろう。ならばキャラクターカード以外の設定を開示すれば良いこと』


 アニメ化の試練でも防げない弱点。

 やっぱりデュエル仙人はそこをついてきたか。


 :もうメンタルミリだよぉ!

 :クッソハラハラするぅ!

 :抜け目ねぇなこのジジイ!


「それでも私は……!」

『ならば使うか? その残ったカードを』

「っ!」


 確かデュエル仙人の言うことが正しいなら、エーシスの手元にある一枚のカードは場に存在するデザイナーキャラに対して発揮できるシチュエーションカードのはず。

 例え今はプロデューサーキャラでも、TACTOは便宜上デザイナーキャラでもあるのだから使えるはずだ。


「……」


 でもどうして、エーシスはそのカードを使わないのだろう。そう思った時、デュエル仙人の方から説明が来た。


『当然のこと……そのカードは確かに有用ではあるが、それと同時にデメリットも存在する』

「デメリットだって?」

『シチュエーションカード『ファッショナブル・借金デット』。そのカードは場にデザイナーキャラがいる時にのみ設定が発揮されるカードじゃ』


 その肝心の設定とはカードの種類を宣言して、その宣言した種類のカードを引ければデッキから更に好きなカードを一枚手札に加えられるという設定。

 だけどもし宣言したカードとは違うカードを引けてしまった場合、対象となったデザイナーキャラが使用済みゾーンに送られる。


 つまり折角出したTACTOが下手をすれば使用済みゾーンに行ってしまうことこそが最大のデメリットと言えよう。

 だからこそエーシスは悩んでいるのだ。


『お前には引けまい。仙人ではないお前では』

「……」


 エーシスのデッキはバーン効果を狙ったデッキだ。それ故か他のデッキよりシチュエーションカードの比率が多い傾向にあるデッキでもある。

 だけど当然シチュエーションカード以外のカードも入れてあるのは当然のことだ。安牌を狙ってシチュエーションカードと宣言するか、それとも万が一の確率で出てくるイレギュラーを警戒してシチュエーションカード以外を取るか。


 まさに二者択一。


『ここが、お前の終わりなのだ』


 それでも。


「……あのさぁ」

『っ?』


 そこで立ち止まる彼女じゃない。


「どうして私が引けない前提なの?」


 他ならない、僕の妹だというのならば!


『お前が仙人じゃないからだ』

「仙人じゃないからなに? 私はカリスマファッションデザイナーだよ?」


 嘘付け。

 エーシスはただのファッションのオタクじゃないか。まぁそれでもファッションという分野では誰にも負けない覚悟を持っている点は、認めるけど。


「私はTACTOを対象にシチュエーションカード『ファッショナブル・借金デット』をシーン展開! ルーキーのために体すら張るの覚悟をここで見ていってよね!」


 ついに残ったシチュエーションカードが設定を発揮する。それと同時にエーシスが、デッキの上に手を置く。


「私が選ぶカードは、それは――」

『……』


 エーシスが目を見開いて、叫ぶ。




「――フラグカード!」




『……なんと……!?』


 エーシスの言葉によって目を見開くデュエル仙人。そんな彼の姿を見て、エーシスは口角を上げた!


「ドローッ!!」


 そうしてエーシスは、引けたカードを空高く掲げる!


『ギャグ漫画式・デストラップ』!」

『何故、引くことができた……!?』

「自信満々に語るお爺ちゃんの顔が気に入らなかったからね! そりゃあ安牌じゃなくて高確率で真逆のカードだろうなって!」


 つまりデュエル仙人の表情で判断したというわけだ。仙術によって全てが見えていたからこそ、自分が見られていることに気付かないわけだね!


『修行、不足じゃったか……!』

「条件達成したことにより、私は他にもカードを一枚手札に加えることができる! 私が加えるのは当然キャラクターカード!」


 一般演出を使っての登場。

 エーシスが登場させるのは勿論。


「来て……『ファッショナブル・ルーキー - ミソラ』!」


 夢半ばで消えた少女の、復活だ。


『――ただいま』

『――おかえりなさい……!』




 ――そしてついに、条件が達成された。




『試練の突破を確認しました』

『アニメ化の試練達成による報酬を与えます』

『両プレイヤーのメンタルを入れ替えます』


 エーシス。

 MP2 → 11。


 クラマ。

 MP11 → 2。


 :逆転したああああああ!!

 :やりやがった……妹ちゃんやりやがった!

 :いけえええええええ!!!


 エーシスが声高らかに叫ぶ!


「またルーキーが現れたことによってステータスに変動が起きる! ミソラの全ステータスが7になる! 採点省略!!」


『えぇ!?』

『えぇ!?』

『えぇ!?』

『色がクレえぇ!?』


 これによって相手のメンタルに3のダメージを与える。


「服を着るってことは夢を着るってこと……! 何も着ていないお爺ちゃんに私が負けるはずがない!」

『……!!』

「これで……っ、メンタルブレイクだぁ!!」


 エーシスの言葉と共に光がデュエル仙人を飲み込んでいく。そしてその光を仙人のメンタルはゼロになり――。




『――……見事じゃ』




『エーシスVSクラマ』

『エーシス WIN』




『結社カオスティック・ギルティアの四天王を倒しました』

『ジョブ:決闘者の限定スキルを習得する条件を満たしました』

『決闘者スキル『RE:ボーンワールド』を習得しました』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る