第31話

『ランダムで先攻後攻を決めます』

『クラマが先攻になりました』


 デュエルが始まる。先攻はクラマだけど、なんで初手五枚のカードがデュエル仙人の目の前で浮いているの!?


 :あれはデュエル仙人が発する仙気によるカード操作!

 :知ってるのか、〇電!

 :適当言った!

 :無能!


『儂のターン……儂は手札からキャラクターカード『仙人道 - 見習い僧タクマ』を登場させ、設定を開示。デッキから仙人と名の付くジャンルカードを手札に加える』


 彼が加えたのは『仙人界山』。


『そしてそのままジャンルカードをシーン展開。ジャンルゾーンにこのカードが存在している場合、仙人と名の付くシチュエーションカードの設定は無効化されない』

「ずるい!!」

『仙人とはこういうものじゃ……!』


 :仙人=インチキだった……?

 :大体合ってる

 :草


『更に手札からキャラクターカード『仙人道 - 仙掌のライコウ』の設定を開示。手札にあるシチュエーションカード一枚を使用済みゾーンに捨てることで自身を特殊演出することができる……』

「捨てたのは……『108煩悩 - クタイトン』?」

『即ち、執着する心』


 ライコウがクタイトンと書かれたボールを振り上げ――。


『はあああああああ!!』


 ――そのままゴミ箱に捨てたああああ!?


 :物理で草

 :煩悩は物質だった……?

 :気軽にゴミ箱に煩悩捨てられるかぁ!


『クタイトンが使用済みゾーンに捨てられた時、クタイトンの設定が開示される……! お前の手札を一枚、ランダムに選んで捨てる!』

「そんな!?」

『はあああああああ!!』

「きゃっ!?」


 ライコウがボールを投げてエーシスの手札一枚を弾いた! そしてそのまま弾かれたカードが使用済みゾーンに置かれる。


 :いいピッチングだ

 :ライコウお前仙人やめろ

 :野球選手になれ


『ミドルフェイズに移行し、タクマとライコウを対象にシチュエーションカード『仙術へと至る覚醒』をシーン展開! 二人を導く仙人をこの場に登場させる……!』


『仙人様!』

『マスター!』

『ふむ……儂の出番じゃな』


 タクマとライコウの二人の呼びかけによって一人の仙人が山から下りてくる!


『『仙人道神 - 天仙明者のフツマ』を覚醒演出!』


 全ステ共に20の覚醒キャラだ!


『そしてそのまま設定を開示の助! 一ターンに一度、使用済みゾーンに存在する『108煩悩』と書かれたカードをデッキに戻してシャッフルをする!』


 なるほど、これで108煩悩カードを消費せずにまたデッキから引くことができるというわけか。

 恐らくデュエル仙人が出したフツマというキャラクターカードは、デュエル仙人のデッキのキーカードに違いない。


『仙人を甘く見た罪は重いぞ……これで儂はターンエンドじゃ』

「だったらそっちは服を甘く見ている罪がどれだけ重いか教えてあげる! 私のターン、ドロー! 私は手札からジャンルカード『ファッショナブルステージ』を展開!」


 神聖な空気と厳かな光景が広がっていた仙人界山にミスコン会場が!


『むぅ……無粋な』

「私にとっては神聖な場所なの! 続けて私はキャラクターカード『ファッショナブル・ルーキー - ミソラ』を登場! 続けて自分の場にルーキーと名の付くキャラがいる場合、手札の『ファッショナブル・デザイナー - タクト』を特殊演出させることができる!」


 田舎丸出しの少女がキョロキョロとステージを呆けながら見渡す。


『こ、ここが夢の舞台……!? なんか凄い立地にある会場で登るの大変だったけど……』


 そんな時、少女に声をかける一人の男が現れた。


『あら、ここに来れるなんて大した根性なのねぇ』

『だ、だれぇ……?』

『私はファッションデザイナーのタクト! 良いわね貴女、とても見所があるわね!』

『み、見所ぉ……!?』

『衣装とモデル、その二つの魅力が重ね合い高めていく! この場所はその二つがなければ勝ち進めないわ!』

『モデル……私なんかが?』

『貴女には才能を感じるのよ!』

『……分かりました! 私、タクトさんの衣装を一番にします!』

『私も、私の衣装で貴女を一番に立たせるわ!』


 そうして二人三脚のファッショナブルシンデレラ・バディストーリーが今、始まりを告げる!


「デザイナーとルーキーが場にいる時、攻撃耐久はお互いの攻撃耐久を合算した数値になる! つまり二人の全ステータスはそれぞれ7!」

『だがその程度では儂のフツマに届かんぞ』

「これだから服を着ない人は駄目なの!」


 服かどうかは関係ないけど、エーシスのデッキの真価はそれじゃない。

 エーシスのデッキの真価は――!


!」


 田舎娘とオネェデザイナーのコンビが結成されたことによってステージが今、始動する!


「自分ステージゾーンに存在するファッショナブル・ルーキーと名の付くキャラのステータスが変動したことにより、ジャンルゾーンに存在する『ファッショナブルステージ』の設定が開示される! 変動後の攻撃力の数値が10未満なら相手に3のメンタルダメージを与えるよ!」

『……ほう?』


 四人の審査員がミソラを10点満点で採点する!


『田舎臭い芋臭い。1点』

『素質を感じる。2点』

『ド素人過ぎて草。0点』

『色がクレイジーだ。0点』


 クラマ。

 MP40 → 37。


『うわあああああああああん!!』

『その、次があるわよ!』


 :辛辣で草

 :もうやめて! ミソラのライフはもう0よ!

 :0点だけにwwww?

 :追い打ち掛けてて草

 :やめて差し上げろ!


『威勢に反してその程度かのう? では儂はハプニングカードを――』

「残念だけど『ファッショナブルステージ』の設定によるメンタルダメージに、ハプニングドロー権は発生しないよ!」

『――ふむ、そうでなくては』


 エーシスが先制攻撃を入れたというのに、デュエル仙人に焦りの様子はない。序盤だから油断しているとか……?


「ファッションの道は果てしなく、そして長い! 最初は素人でも、二人で成長を積み重ねていけば誰もが認めて貰える!」


 エーシスがタクトに向けて手を向ける。


「タクトさんの設定を開示! 一ターンに一度、デッキからドレスアップと名の付いたシチュエーションカードを手札に加えることができる!」


 そうしてエーシスが選んだのはシチュエーションカード『ドレスアップ・ファースト』だ。

 そして加えたカードをエーシスが掲げる!


「私はミソラちゃんを対象に『ドレスアップ・ファースト』をシーン展開! ルーキーキャラを覚醒演出させる! 来て、『ファッショナブル・ルーキーファースト - MISORA』!!」


 これによって華やかな衣装を着た田舎娘が新生する!


「これでタクトさんの性能と合算して二人の全ステは10になる! ステータスが変動したことにより採点開始!! 10以上15未満なら7のメンタルダメージ!」


 ドゥラララララとドラムロールが鳴る。

 そして四人の審査員が採点を下した!


『衣装を着ただけ。2点』

『才能を感じる。5点』

『ピンクはあかん。0点』

『色がクレイジーだ。0点』


 :いや草wwww

 :草に草を生やすな

 :最後同じじゃねぇかwww

 :ミソラに対する悪意を感じる(笑)


『うえええええええええん!!』

『次もあるわ!』


 クラマ。

 MP37 → 30。


『なるほどのう……シチュエーションカードで覚醒を促し、数値を変動させることによってバーン効果を与えるデッキか』

「MISORAちゃんの設定を開示! 一ターンに一度、デッキの上からカードを三枚めくってシチュエーションカードがあった場合、一枚を選んで残りのカードをデッキに戻してシャッフルする!」


 一枚目、キャラクターカード。

 二枚目、シチュエーションカード。

 三枚目、シチュエーションカード。


「私は三枚目のシチュエーションカード『スタイリストの手引き』を手札に加えて、他をデッキに戻すよ! そしてそのままシーン展開!」


 対象はMISORA。


「このターン、スタイリストの力によってMISORAちゃんは更に魅力アップ! 変動後の数値は15になるよ! それでは採点開始!!」


 シャラララァと綺麗な音色が鳴り響く。

 四人の審査員が目を光らせた!


『衣装に慣れたようね。2点』

『成長を感じる。7点』

『色の選択が少し過激だ。1点』

『色がクレイジーだ。0点』


 :最後はそれしか言えない星から来た人?

 :1点の人、さっきから色変わんねぇよw

 :さっきもピンクだったやろがい!


『……』

『誰か最後の方変えてー!』

「15以上なので合計10のメンタルダメージ!」


 クラマ。

 MP30 → 20。


「やったあ! いきなり1ターン目で半分削ったよ!」

「やるじゃないかエーシス!」

「エーシスは私が育てたンゴ……」

「流石ですニャ!」

《エーシス勝てるデス》


 凄い猛攻に僕たちが喜びの声を上げる。

 頂点プレイヤー相手にあそこまで削るとは……六芒星との戦いで完璧な手札を引いた時とは思えない成長を感じるよ!


「フラグカードを一枚立てて、これで私はターンエンドするよ! さぁこれが服の力、ファッションの魅力! このまま次のターンで倒してあげるよ!」

『……笑わせるでない』

「え?」

『その程度で威張るとは……やはり仙人でないものに感情を制御することはできんようじゃな』

「どういうこと!?」


 デュエル仙人が仙気によるカード操作でデッキからカードをドローする。


『見せてやろう……! これぞ一年を通し、気と同化するために水浴びもしてこなかったデュエル仙人の仙術の力を……!』

「きったな」


 :きったな

 :きったな

 :きったな


 きったな。

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