第15話
遠い昔、遥か彼方の銀河系で。
人類は宇宙に適応するため、その遺伝子に超人因子『SUMOU』を組み込んだ。
所謂、スペースモウ人類の誕生である。
彼らはSUMOU因子を取り入れたことにより巨大な体格を獲得した他、その身体にはあらゆる外敵を殲滅するTORIKUMI兵器群、サイバネ廻しによるサイボーグ改造が施されていた。
彼らが一度HARITEを繰り出せば、宇宙に風を生み出すことができるとされ、最早スペースモウは不可能を可能にする種族となった。
だがそんな彼らに闇の魔の手が迫る。
全てを
SUMOUのギャラクシーツッパリと
果たして、両者の行く末は……?
◇SIDE パイア
「折角おいどんがアサノヤマを登場させたのに何やってるんでごわすか!?」
「大丈夫ですこれも計算の内……」
「本当でごわすかぁ……?」
「何せ私の封印から解放された秘められし
「ただの勘じゃないでごわすかぁ!」
この人たち、何仲間割れをしてるンゴ……?
「というわけで私はフラグカードを一枚立ててこれでターンエンドです……!」
「ようやくターンが来たねー」
「……私のターン、ドローンゴ」
とにかく合作デュエル中なのに仲間割れは下の下だンゴ……私と姉御の二人で合作デュエルのなんたるかを見せるンゴ。
「……私はジャンルカード『
これにより宇宙土俵、厨二宇宙、東京に似た都市の計三つのジャンルカードが展開されたンゴ。
もうカオスだンゴ。漫画なら意味不明なジャンルで書く方も読む方も混乱するンゴ。
「私はキャラクターカード『姫騎士副長メイドオフィサーイバラギ』を登場させ、ミドルフェイズに移行するンゴ」
そしてフラグカードを四枚立ててターンエンドするンゴ。これで私の手札はゼロになり、ターンは姉御の方に行くンゴ。
「私のターン、ドローだねー! 私は手札からキャラクターカード『姫騎士総長プリンセスシュテン』を登場させるねー!」
攻撃力、耐久力共に5のキャラが姉御のステージゾーンに現れたンゴ。更にイバラギ副長が存在するお陰で、シュテン総長のステータスは更に倍の10になるンゴ。
しかし。
「その瞬間条件成立により、私はフラグカード『逃れられない食欲』を回収します……!」
それは相手ステージゾーンにキャラが登場した瞬間、その相手キャラのコントローラー権を相手のターンが終わるまで、自分ステージゾーンに移すカードだンゴ。
確かに姉御のエースキャラを強奪されればこの後の展開が止まるンゴ。だけど私がそうはさせないンゴ!
「そのフラグ回収を私のフラグ回収で止めるンゴ……! 相手が自分ステージゾーンに存在するキャラを対象にカードの設定を開示した瞬間、条件成立によりフラグカード『ヒューッと吹くアナコンダ』のフラグを回収するンゴ……!」
「クッ、フラグ破壊のフラグですか……!」
◇
『姫騎士様、食事の時間です……』
『しょ、食事だと……? 馬鹿な、鍛錬中は一切食べないと言ったはずだ……』
『あら残念ですね……折角姫騎士様のためにジャンクフードを用意しましたのに……』
『ジャ、ジャンクフード……!?』
『分厚いパティが五段重ね……更に熱々チーズもとろーりの、ハンバーガーでございます……』
『美味しそう〜……!』
姫騎士様、過去最大のピンチ。しかし、そんな姫騎士様に一人の男がやってくる。
『おっとそこまでだ』
『何奴……!?』
『お、お前は……伝説のベテランハンターアナコンダ殿!』
姫騎士団の依頼で教官役としてやって来たアナコンダが葉巻を吸いながら、ニヒルな笑みを浮かべてメイデンを見る。
『とんだ可愛らしい悪魔だ。ハンバーガー片手に誘惑してくるとは』
『……っ!』
『だが悪魔は炭酸をつけてくれなかったらしい』
その時、シュテンの食欲を刺激する良い匂いが周囲に広がる。
『鍛錬は終わりだ姫さん。向こうでイバラギがオーダーメイドバーガーをやってる。好きなパティをモリモリにできるぞ』
『なんだと!?』
『あ、ちょっ……!?』
『しかも姫様が好きな炭酸セットもある』
『行くぞアナコンダ殿!』
そうして姫様を誑かす悪魔は消え去り、姫騎士様はバーガーをドカ食いしたため再鍛錬が決定した。
◇
「そちらのフラグの回収は無効となり、私はフラグの回収に成功したンゴ。これによりニシノはハプニングドロー権なしでメンタルを3ポイントダウンするンゴ……!」
「ぐふぅっ……!?」
ニシノ。
MP40 → 37。
「ありがとうねーパイアちゃん!」
「ンゴ」
姉御のサポートは妹の役目……そう、この合作デュエルは私が姉御を支えるサポート役だンゴ。彼らのような似非チームワークとは違う、本物のチームワークを見せるンゴ。
「続けて私はミドルフェイズに移行してシチュエーションカード『姫騎士特攻服、集合!』をシーン展開するねー!」
そのカードは自分ステージゾーンにシュテン総長が存在する場合にのみシーン展開できるシチュエーションカードだンゴ。
「デッキから特攻服と名のついたキャラクターカードを四枚選び、自分ステータスゾーンに登場させるねー!」
そうして現れたのは四つの装備。
特攻服・プリンセスカチドキフラッグ。
特攻服・プリンセスブッコミナックル。
特攻服・プリンセスメンチHELLメット。
特攻服・プリンセスパラリラーアーマー。
「この四つの特攻服をシュテンにクロスさせるねー! これによってシュテンはシュテン・クロス・特攻服アーマーになるよ!」
これにより姫騎士総長プリンセスシュテンは以下の設定を選んで開示できるようになったンゴ。
①カチドキフラッグにより、一ターンに一回だけ相手キャラとの戦闘開始時、相手のキャラを強制的に破壊することができるように。
ただし戦闘によるダメージじゃなく、戦闘開始時による強制破壊なため、戦闘する相手がいなくなったことで相手メンタルにダメージを与えることなく戦闘が終わる。
②ブッコミナックルにより、このターン全てのステータスを今の数値分倍にして、相手キャラとの戦闘時に与えるダメージは貫通ダメージに。
③メンチHELLメットにより、一ターンに一回だけ相手キャラとの戦闘開始時、相手のキャラを萎縮させて設定の開示をできなくさせる。
④パラリラーアーマーにより、一ターンに一回だけ自身に対するカードの設定は無効にする。
「ただし①から④までの設定はどれか一つしか使えないし、使った場合他の設定を開示することができないんだよねー」
「でもここで私のイバラギ副長の設定が出てくるンゴ……! 副長がこの場にいる限り、総長の他の設定を開示できない制限を撤廃するンゴ!」
『ずるい!?』
ずるくて結構だンゴ。
キャラクターカードである特攻服アーマーのどれか一つでも対処されれば、ここまでの設定が盛れないンゴ。
恨むならここまでの設定を盛ることを許してしまった自分たちを恨むがいいンゴ。
「更に私はシチュエーションカード『カマセ・レギオン』をシーン展開するねー! サイコロを振って、出た数の分だけ相手のステージゾーンに可能な限り出すねー!」
振る出目のサイコロは四面ダイス……そうして姉御が出した出目は三。
「よって計三人のカマセがあなたたちのステージゾーンに現れるねー!」
「ぬぅっ、おいどんのステージゾーンにカマセが一人でごわす!?」
「私のステージゾーンにはカマセが二人もですよ……!?」
因みにカマセの攻撃力は1で、耐久力は3の雑魚だンゴ。
「クライマックスフェイズに移行だねー! 私はシュテンでメイデンに攻撃ー!」
「
「だったらこっちは特攻服設定を開示するねー! 開示するのは①の設定! これによりシュテンの戦闘相手に選ばれたメイデンは強制破壊されるねー!」
「ば、馬鹿な私のメイデンが……!?」
メイデンは戦闘に対する耐性を持っていても、設定による破壊耐性は持っていないようであるンゴ。
「更にパイアちゃんが展開した
「まさか……そのためのカマセ・レギオン!?」
「先ずは一回目! 特攻服設定の②を開示して攻撃力は20に! そのままカマセAに20の貫通ダメージだねー!」
「や、やめ――ぐはああああああ!?」
ニシノ。
MP37 → 17。
「ま、まだまだです! メンタルダメージを受けたことにより私はハプニングカードをドローします……!」
ニシノが引くハプニングカードによって戦況が変わるンゴ……果たして引いたカードとは……ンゴ。
「引いたカードは『助手のアクシデント』です……! これにより相手のキャラ一体を行動不能に――」
「あっ④の設定を開示して無効にするよー」
「アッハイ」
どうやら勝利の女神は厨二ビジネスマンに微笑まなかったようだンゴ。
「続けて二回目! ②の設定はこのターン中なのでまだまだ続くよ! カマセBに20の貫通メンタルブレイクだねー!」
「そ、そんな……この、私が……っ、ぎゃあああああああああ!!?」
『ニシノ LOSE』
「あ、あぁ……まさかニシノがやられたでごわす……!?」
「攻撃はまだまだ続くんだからねー? それじゃあ次はあなたのカマセCに攻撃ー!」
よし、これでヒガシノにメンタルダメージが入るンゴ!
「――と、思っているでごわす?」
『!?』
「ニシノの悪足掻きによってシュテンの④の設定を使わせるのを待っていたでごわす! おいどんはシチュエーションカード『SUMOU界の復興』をシーン展開するでごわす!」
これにより使用済みゾーンに置かれた属性:相撲のキャラがステージゾーンに復帰。ヒガシノが蘇生するキャラは――。
「再び脚光を浴びるでごわす! おいどんのエース『スペースモウ・ギャラクシア・アサノヤマ』! 更にジャンルカード『スペースモウ・ワールド』の設定により、相手キャラは属性:相撲のキャラと優先的に戦わなければならないでごわす!」
シュテンの矛先がアサノヤマに変更されたンゴ!
「更に先ほど使用した『SUMOU界の復興』により蘇生された属性:相撲キャラはこのターン倒されず、戦闘によるダメージを受けないでごわす!」
「……っ! でもこっちの
「ここで二枚目のシチュエーションカードでごわす! おいどんはシュテンとカマセを対象に手札から『恋するコンタクト』をシーン展開するでごわす!」
◇
これは、禁断の恋物語。
『カマセ! どうしてお前はカマセなんだ!』
『カーマカマカマセ……!』
片や姫騎士の総長。
片やクソ雑魚存在価値なしのカマセ。
二人は敵同士であるはずなのに、まるで運命が舞い降りたかのように一目惚れしてしまう。果たして二人の恋の行方は……!
◇
「これにより、この場にカマセCがいる間シュテンの攻撃力はゼロになるでごわす!」
そうなった場合カマセCに攻撃を仕掛けてダメージ貫通しても、相手メンタルに何もダメージを与えられなくなったンゴ……!
「さぁこれでお主はターンエンドしておいどんのターンになるしかないでごわす! ごーごっごっごわすぅー!」
「変な語尾だンゴ……」
「いやお主に言われたくないでごわす」
でも、これで何もできなくなったのは確かだンゴ……そう思って姉御の方を見てみると――。
「――……あぁん?」
あっ(察し)。
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