第14話
SIDE エーシス
――マズイ。
今の心境を一言で言い表すなら、その一言が該当すると思う。
今、私の手札は完全に事故って初動が動かない状態にある。ここからコンボを重ねるなんて土台無理な話だよ。どのカードも特殊演出が必要なカードばかりで、ジャンルカード一つだってない。
だというのに。
(か、完璧な手札ってなにーっ!?)
え、私以外完璧な手札が揃ってるってどういうこと!? ちょっとマズイよ助けてお兄ちゃん! こっち手札事故ってるのに開幕理不尽なんだけど!!
「へ、へー貴女も完璧な手札なのね……!」
「え゛っ!?」
や、ヤバい。ここで上手く……ぽーかーふぇいす? をしないとブラフだってバレる……!
「そ、それはもう完璧な手札だね! この手札なら一ターンもあれば余裕でワンパンだよワンパン!」
「え゛っ!?」
「ま、まぁ? 麻呂も完璧な手札なのでこちらもワンターンキル行けるでおじゃるがぁ?」
「え゛っ!?」
嘘、ワンターンキル行けるの!?
ちょっと待って聞いてないよ! このまま何もできずにワンパンされたらお兄ちゃんに一生ネタにされるに決まってるじゃん!
:ねぇ、これって
:シッ!
:どう見てもアレだけど面白そうなので黙ります
:草
「ほ、ほー? 本当に大丈夫かなぁ……? 何せこっちは完璧な手札だからねぇ……どんなカードが来ても妨害しちゃうもんねー……?」
「ぼ、妨害!? ま、まさかその手札に妨害カードが揃ってるでおじゃる……!?」
「何せ私はあなたたちの仲間であるキタノさんを完封したセンリの妹だからね!」
「え、あの鬼畜美少女の妹ですって!?」
「ぬぅ……説得力がヤバいでおじゃる……」
:駄目だこれ腹痛ぇwww
:妨害とワンキル行けるとかマジで完璧な手札だ
:それがただの夢まぼろしじゃなければなぁ!
お、お兄ちゃんの名前を出したら怯んでくれた! ありがとうお兄ちゃん! お兄ちゃんが鬼畜でありがとう! 性格悪くてありがとう!
「あれ……なんか寒気が」
まぁそれはともかく!
でも問題はこの手札からどうやって展開するか。一応の解決策として次のドローに賭けるか、決闘者スキルを使ってカードを創造をするかだけど……。
「……っ」
完璧な手札と言った手前使うに使えない! こんな序盤に使ったら完全に手札が事故ってるってことがバレちゃうよ!
しかもこんな手札事故程度の挽回に一回限りのスキルを使うとか勿体ないよぉ!
『む、むむむ……っ!』
《みんなして悩んでるデス》
とにかく、先ずは相手の出方を見ないと……最初のターンは相手の確かミナミノという女子高生風アバターの人だったはず。
「私のターン……」
「ごくり……!」
「……私はこれでターンエンド」
『え!?』
た、ターンエンド!?
そんな……相手は完璧な手札のはず……なのにどうして展開しないの? ま、まさか相手も――。
「……何を勘違いしてるのかしら」
「え!?」
「これは別に、その、私の手札が事故ったからではなく……そう! 完璧な手札故に、貴女たちに猶予を与えただけよ!」
「ゆ、猶予!?」
「すぐ終わってしまっても詰まらないし? ワンキルできる完璧な手札故にじわじわとターンをかけて嬲ってあげるわ!」
そ、そんな……この人性格悪いよぉ! 私の方は完璧に事故ってるのに酷いよ!
お兄ちゃんですら完封封殺ワンキルとか平気で実行してくる冷酷無慈悲なのに!
「では麻呂のターン!」
マズイ、申告だとこの人の手札はワンキルを狙える手札! 妨害一枚もない私の手札だと止められない!
「麻呂は決闘者スキル『RE:バースワールド』を使用するでおじゃる!」
『え!?』
ここで決闘者スキル!?
完璧な手札のはずなのにどうして!?
あとなんで味方であるはずのミナミノさんも驚いた顔をしてるの?
(このような手札事故は麻呂に相応しくないでおじゃる! ならば一刻も早くスキルを使ってでも解消するのが貴族の務め!)
そうして麻呂眉さんの手に一枚のカードが現れる!
「真のデュエリストはカードをも創造するでおじゃる! 麻呂はシチュエーションカード『雅な輪転』をシーン展開! これにより麻呂は全ての手札を使用済みゾーンに置き、置いた枚数分のカードをデッキからドローするでおじゃる!」
『そんな、完璧な手札を全て捨てた!?』
いったいなにを考えていると言うの!?
あとなんでミナミノさんもびっくりしてるの!?
「来るでおじゃる! ドロー!!」
そうしてデッキからドローした麻呂眉さんは、新しくなった手札を見ると――。
「――ふっ」
(わ、笑った!?)
そんな、完璧な手札を捨てたのになんなのその笑み!? まさかまた完璧な手札を!?
(……いまいちでおじゃる)
:あっこれ諦めの笑みですね
:うっそだろおいwww
:手札新しくしても駄目なのかよ(笑)
「(流石に二回もスキルを使えばバレるでおじゃるし……よしここは)麻呂はこれでターンエンドでおじゃる……」
『え!?』
「ふっ、勘違いするでない……これは、そう! 完璧な手札がより完璧な手札になったので、このまま行くとワンターンツーキゥ……する可能性があるので詰まらないと思ったのでおじゃる!」
この人もぉ!?
なんなの六芒星の人たちって!? どうしてこんなに人格破綻者が多いのぉ!? 何もできないか弱い美少女に寄って集って虐めてさぁ……っ!
きっと使用済みゾーンに置かれた完璧な手札も今後の伏線なんだ……もう駄目だぁ、おしまいだぁ……!
《わっちゃあのターン、ドローデス》
底知れない絶望の淵に立たされた私を他所にマナちゃんがターンを進める。
《ジャンルカード『鋼鉄の運命』を展開し、この設定によりデッキからキャラカード『鋼鉄の破壊神デストロ』を手札に加えて、わっちゃあは加えたデストロの設定を開示するデス》
確か鋼鉄の破壊神デストロの設定は手札から鋼鉄と名のついたカードを一枚捨てることにより自身を特殊演出させる設定があるはず。
《一枚を使用済みゾーンに置き、これによりデストロを特殊演出させるデス。そして使用済みゾーンに置かれた『闇より出ずるアキラ』の設定により、闇アキラを使用済みゾーンからステージゾーンに登場させるデス》
そしてデストロの設定。属性:闇落ちのキャラを自身のパイロットにすることができる!
《デストロ・クロス・アキラの完成デス》
「攻撃力20でおじゃるぅ!?」
「でも見なさい! 攻撃力は高いけど耐久力は5よ! 十分対処できるわ!」
《ミドルフェイズに移行して、手札からシチュエーションカード『代償を伴う未来視』を展開するデス。これによりわっちゃあはコストとしてメンタルを三消費し、デッキを上から五枚捲って、捲ったカードの並びを変えてデッキの上に置くデス》
マナナン。
MP40 → 37。
更に一回メンタルが減ったので、その分マナちゃんはハプニングカードを引く。ただしマナちゃんは発動をしなかった。
《わっちゃあは捲ったカードを上から『鋼鉄の守護神ガーディン』『鋼鉄の野菜メカベジ』『鋼鉄犬ファイ』『鋼鉄の絆』『出落ちボッシュート』の順でデッキの上に置くデス》
そしてここでついに闇落ちしたキャラの真価が発揮される……!
《闇アキラがクロス状態の場合、闇アキラの設定が開示されるデス。デッキから任意の枚数分ドローし、それがキャラクターカードだった場合自身の攻撃力を10アップし、それ以外のカードだったらハプニングカードのドロー権なしで自身のメンタルに10のダメージを与えるデス》
一見すればハイリスク・ハイリターンな設定。でもその直前にマナちゃんが仕込んだ策が今発揮される!
《引くカードは三枚デス! 当然先ほどのデッキトップ操作によりわっちゃあは確定でキャラクターカードを三枚引けるデス!》
「そんなまさか……攻撃力50でおじゃる!?」
《クライマックスフェイズに移行するデス! デストロ・クロス・アキラで麻呂眉に攻撃するデス!》
待って、マナちゃん!
完璧な手札の麻呂眉さんに迂闊に攻撃するととんでもないカウンターが――!
「おじゃるぅーっっっ!?」
『麻呂眉 LOSE』
『えぇええええーっ!?』
いきなり麻呂眉さんが死んだーっ!? え、なんで!? 完璧な手札のはずなのになんで妨害も何もなくメンタルブレイクを受け入れたの!?
あとなんでミナミノさんも驚いてるの!?
《これでターンエンド、デス!》
『………………』
まさかのワンターンキルに私はなにも反応できない……こ、これが完璧な手札。
「……ハッ!」
そ、そうだよ……マナちゃんがいるなら私はなにもしなくていいよね?
「わ、私のターン……ドローしてターンエンド!」
「え!?」
「こ、これはそう!」
えーと、あの。
「――いきなりワンパンで終わらせると詰まらないからだよ!!」
「ヒェッ」
私のブラフになんか顔が青くなってるようだけど気の所為だよね?
まぁとにかく。
そのあとワンパンすると詰まらない発言はどこへ行ったのやら、妙に展開が遅かったミナミノさんに対してマナちゃんがワンパンして勝ちました。
……ヨシ!
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