第13話
SIDE パイア
私の名前はパイアだンゴ。
アンの姉御と共に公式所属の混沌王デュエリストの一人だンゴ。
そんな私がまさか久し振りに姉御と合作デュエルをやるとか……緊張でプレッシャーがヤバいンゴ。
「近所のお姉さん風アバターに騎士風八尺様みたいなアバターとの合作デュエルでごわすか……これは負けられない戦いでごわす!」
「受けて立ちましょう……!」
は、八尺様ンゴ……?
確かに鎧は着ているけど……八尺様みたいなキャラクリはしてないンゴ。強いて言えばリアルみたいな身長はしてるンゴが……。
それはともかくこの宇宙力士とビジネスマンはいったいどこで張り合ってるンゴ?
「整備できましたニャ」
「ありがとうねー」
「GJンゴ……」
私たちが乗る乗り物は姉御が自らカスタマイズしたサイドカー付きのバイクだンゴ。
運転は姉御に任せて、サイドカーの方は私が乗るンゴ。対する相手の方だけど、準備が完了した私たちと違って、まだ乗り物に乗ってないンゴね。
「ふっ、寧ろおいどんらはお主たちの準備を待っていたでごわす!」
『……?』
「お見せしましょう……! これぞ我が結社、我がチーム6B'Sの力です……!」
『とうっ!』
っ!?
「いきなり二人が空を飛んだンゴ……!?」
「違いますニャ! これは飛んだんじゃなく、浮いてるんですニャ!」
「コズミック――」
「――アブダクションでごわすっっっ!!」
そう言って二人は宙に浮かんだ鈍色に輝く未確認飛行物体に吸い込まれて行ったンゴ。
まぁつまりUFOだンゴ。
いやもうこれ張り合うも何も向こうの勝利だンゴ。完全に永世色物枠として後世に名を残すレベルだンゴ。おめでとうンゴ。
「誇るが良いでごわす! この姿を見たものはお主たちが初でごわす!」
「嫌な初記念だねー」
「ンゴ」
「それでは行きましょう……! 合作ライドオン・デュエル……!!」
「アクセラレーションでごわす!!」
「アクセラレーションだねー!」
アクセラレーションって言って良いンゴ? それになんで姉御も順応してるンゴ?
「先頭はおいどんらでごわす!」
「うーん流石にUFOは反則だねー」
それで済まして良いンゴ?
ここに来て文明レベル差ダンチのレースが始まってるンゴだけど、大丈夫ンゴ?
「最初はおいどんのターン! おいどんはジャンルカード『スペースモウ・ワールド』を展開するでごわす!」
そのカードが展開された瞬間、荒野の光景が広大な土俵を中心に巡る宇宙の光景になったンゴ……!
「そしてキャラクターカード『銀河親方ハリテヤマ』を登場し、ハリテヤマ親方の設定によって手札から属性:相撲と書かれたキャラクターカードを特殊演出させるでごわす!」
全身機械化された親方が空中にビームを打ち出すことによって、相撲界のルーキーがヒガシノのステージゾーンに現れたンゴ!
「来るでごわす! 『スペースモウ・ツッパリのアサノ』でごわす!」
ヒガシノのステージゾーンに両腕が機械化された不良のお相撲さんが現れたンゴ!
「ここでおいどんはスペースモウ・ワールドの設定を開示するでごわす! 条件はスペースモウキャラ一人と属性:相撲のキャラ一人! コズミック・KEIKO!」
その瞬間、ハリテヤマとアサノが使用済みゾーンに置かれ、新しいカードがステージゾーンに置かれるンゴ……!
「親方の指導によってルーキーが超新星するでごわす! 土俵の上から降臨! キャラ覚醒カード『スペースモウ・ギャラクシア・アサノヤマ』を覚醒演出でごわす!」
これはキャラ覚醒カードだンゴ。
条件に沿った複数のキャラと特定シチュエーションカードによって覚醒する強力なキャラカードの一種だンゴ……!
:ようやくキャラ覚醒カード使ってきたか
:懐かしいなぁ……このカード群の登場でデュエルの速さが加速したんだよなぁ
:やっぱり思ったけど結社のデュエリストって階級が低いと使うカードが古い傾向にあるよね
「これでおいどんのターンエンドでごわす」
「なるほどねー。どうやら貴方たち結社は上の階級に行くほど現代デュエルに近付くってわけだねー」
「そうでごわす」
姉御の言葉にヒガシノが肯定するンゴ。
「十二星座はシチュエーションカードを、八神将はキャラクターカードを、そして我ら六芒星はキャラ覚醒カードをメインにしているでごわす!」
「まるで混沌王の歴史を見ているようだねー。そのパターンなら次の四天王は――」
「――おっと! その先を考える前に先ずは自分たちの行く末を考えるでごわす!」
「現代より遅いかもしれません……しかしそれで弱いとは限りませんよ……!」
ふむ、確かにその通りだンゴ。
現代デュエルは確かに昔より流れが速いと言われているンゴ。通常ならばそれで古いカード群はお役御免になり、価値がなくなるンゴ。
でもこの運営は違うンゴ。
昔のカードを冷遇したりせず、今でも昔のカードに関連したパックを出したりとちゃんと昔のカードを大切にしているンゴ。
故に強い弱いはあれどどのデッキもちゃんと戦えるンゴねぇ!
「さぁ次は私のターンです……!」
ついに封印されしニシノのターンが来たンゴ……ヒガシノの相方として選ばれた彼の実力とはいったい……ンゴ!
「私はジャンルカード『暗黒の領域ダークゾーン』を展開……! これにより自分ステージゾーンに存在する『スペースモウ・ギャラクシア・アサノヤマ』の属性を闇落ちに変化させます……!」
「え、ちょ、待っ」
「そして来たれ我が盟友……キャラクターカード『闇夜のシャドウ』……! 更に私はダークゾーンの設定を使い、シャドウとアサノヤマの二人を漆黒に染まらせる……!」
闇と影と漆黒が二人の身体を包み込み、この場にまた新たなキャラ覚醒カードが生まれるンゴ。
「宇宙的恐怖の闇に染まれ……!」
「おいどんのアサノヤマがぁぁーっ!?」
「『
裏の世界から暗黒の衣装を身に包んだ終焉の巫女が相手のステージゾーンに舞い降りたンゴ……!!
「いや出してどうするでごわすぅーっ!?」
「そこにコストがあったからですね……」
「おいどんのアサノヤマをコスト扱いしないで欲しいでごわすぅ!」
もう同じチームにいるのはやめた方が良いと思うンゴ……連携のれの字も見当たらない合作デュエルとか何しに来たンゴ……?
◇SIDE エーシス
「さぁ出しなさいよ……貴女たちのライディング・ビークルをね!」
「いやその単語初めて聞いたんだけど」
その界隈で通じてる単語が一般人にも通じるって考えはやめた方が良いと思うよ。
「で、呼ぶんだよねマナちゃん」
《センリのパートナーであるわっちゃあにも使用権限があるデス》
その言葉を聞いて私はやっぱりと心の中で頷く。そうしてマナちゃんが『それ』を呼び出すと……。
「え、なんなのこれ!?」
「やっほーい! 配信で興味あったお兄ちゃんのキャンピングカーだー!」
「なんと、麻呂以上の贅沢は不敬でおじゃるぞ!」
知るかそんなもん! いいから私はこのキャンピングカーに乗らせてもらう!
うわやっば、家より高級仕様とかお兄ちゃんの癖に生意気だなぁ!
《これでライドオン・デュエルに必要な乗り物の用意ができたデス》
「くぅ、デュエル前になんなのこの敗北感は!?」
「かくなる上は麻呂のとっておきを見せるでおじゃる……!!」
「え、とっておき!? 私知らないんだけど!?」
なんで同じチームなのに知らないのこの人。
「さぁ来るでおじゃる! 高貴なる麻呂の神聖な神輿よ!」
「え、こ、これって!?」
「往くぞ下民共! 麻呂たちの神通力を見るでおじゃる!!」
「え、やだぁ!!」
「ライドオン・デュエル!! アクセラレーション!!」
《アクセラレーション! デス!》
「あ、あくせられーしょん? だよ!」
そうして走り出す二つの乗り物。
方やクソデカキャンピングカー。
そして相手は――。
「ほっほっほっほっ!!」
「……っ! ……っ!」
ゴロゴロゴロッッッ!
「どうでおじゃるか、麻呂の神輿は!」
「さ、さいっあくなんだけどぉ!!」
うわぁ……ミナミノさんがあんなに顔を赤くするの分かるわぁ……私だったら見るなら良いけど絶対に乗りたくないと思うもん。
麻呂眉さんたちの乗り物それは。
ゴロゴロゴロッッッ!
「ほっほっほっほっほぉ!!」
「〜〜〜〜〜っっっ!!!」
一言で言えば車輪がついたひな壇である。
ひな祭りで雛人形を飾る壇のあれね。
二人は一番上の段に座ってるよ。
恥ずかしいね。
《ユニークデス》
「マナちゃん……君はそのままでいてね」
《?》
危ない……マナちゃんがいなかったら私は汚い大人になるところだった……。
なんかお兄ちゃんが『もう遅いよ』と言ってる幻覚が見えたけど疲れてるのかなぁ。
「ええい先ずは初手の五枚確認からよ!」
あっそうだ、とにかく先ずは初手手札の確認からしよう!
「……っ!」
こ、これは……!?
……ッスゥー。
ヤバい、全然初動が動かないよこの手札……はっきり言って事故ったんですけど!
いや待って私……ここで馬鹿正直に手札が事故ったみたいなリアクションをするのは得策じゃない。ここはブラフでも何でも良いから虚勢を張らないと……!!
……よし!
「……完璧な手札だね!!」
「……完璧な手札ね!」
「……完璧な手札でおじゃる!」
《完璧な手札デス》
『え?』
え?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます