第12話

「さ、流石センリさんだね……」

「エゲツねぇぜ……」

《カオッチャ、デス!》


 デュエルから帰ってきたら、なんかみんなに引かれてる件について。


「あーらそこにいるのはエンジョイデッキ相手にガチガチのガチデッキで心をへし折ったお兄様じゃありませんかぁ!」

「勝ったのになんで煽ってくるの!?」


 普通逆じゃない?


「あの僕、六芒星の一人を倒して来たんですけど」

「あぁそれに関しては全く心配してなかったぜ!」

「寧ろ心配してたのは相手のメンタルの方だったよお兄ちゃん!」

「身内の心配をして妹よ」


 おかしい、僕は何一つ間違ったことはしていないはずなのになんだこの心の距離感は。なんかみんな僕から一歩離れてるような気がするんだけど。


「因みにキタノはどうなったんだぜ?」

「デュエルに負けた瞬間、粒子に還ったよ」

「やっぱり消滅したんだぜ……!」


 消滅という言葉を発した瞬間、周囲の人々から更に距離を置かれたような気がする。

 僕が消滅させたんじゃなくて、デュエルの仕様で消滅したんだよ?


「まぁとにかく、おめでとうセンリさん」

「うん……ありがとうございます……」


 なんだろう。

 こんな虚しい祝福は今まであったのだろうか。


 :これであと残り五枠かぁ

 :六芒星狩りが今始まる

 :競争率上がったな


「……競争率かぁ」

「そりゃあ今より強くなりたい人とか、まだスキルを持ってない人が必死になるもんだぜ」

「この私とかね!!」

「近いよエーシス」


 この負けず嫌いが、僕が先に決闘者スキルを手に入れて先を越されたと思っているのだろう。でもしょうがない。僕のバードボルテージバイクみたいなカッコいい乗り物を持ってないのが悪いんだ。


「今自分みたいにカッコいい乗り物を持ってないのが悪いって考えた?」

「何故分かったし」

「分からいでかこのやろー!!」

「ちょ苦しい苦しい!」


 :エーシスのハグ攻撃に窒息デバフを受けるセンリちゃんの図

 :これが姉妹のスキンシップ……

 :兄妹なんだよなぁ……

 :良いからてぇてぇだ!

 :てぇてぇ……


「取り敢えずこれで残る六芒星はあと五人。この調子で結社の構成員を倒していこうじゃないか!」

「あぁレフェ先輩の言う通りだぜ!」


 あの決意を固めているところ申し訳ないんだけど、誰か僕を助けて!?


 そう思った瞬間。


「そこのお主ら待つでごわす!」

『!?』

「ぶはぁっ!? た、助かった……」


 エーシスのハグ攻撃が緩んで、無事に逃れたのは良いんだけど……え、どちら様?


「キタノを倒したぐらいで調子を乗ってもらうのは困りますね……」

「キタノはオラたちの中で最弱だべ!」

「ふんっ! アンタらみたいな雑魚が私たちに勝てるとは思わないことね!」

「麻呂たちの偉大なる神通力……身の程を知らない愚民共にしかと刻むでおじゃる!」


 聞こえてきた方向を見るとそこには奇妙な格好をした五人組が変なポーズを取っていた。


「お、お前らいったい誰なんだぜ!?」


 お約束のように彼らの正体を尋ねるジャッジ君に力士の格好をしたプレイヤーが叫ぶ。


「おいどんらは我が結社カオスティック・ギルティアの六芒星! おいどんは宇宙横綱のヒガシノでごわす!」

「私は封印されしニシノ……!」

「田舎神のタナカ!」

「ふんっ! 泥棒猫のミナミノよ! 覚えてもらわなくてもいいんだからねっ!」

「天上天下唯我独尊の麻呂眉でおじゃる!」


 そして全員バラバラにポーズを取り――。


『我ら、絆によって結ばれた完全無欠の六芒星……チーム6B'S!!』


 ――そして後方で爆発が起きた。


「いや絆の欠片も見当たらない名乗りだーっ!?」


 力士、ビジネスマン、田舎小僧、ツンデレJK、平安貴族とか統一性も欠片もないんだけど!?


「せめて名乗りでも統一するんだぜ!」

「こんなのただのチーム『六人のバカたち6Baka'S』で笑えるんだけど」

「おいどんらの6B'SはバイクのBでごわすーっ!」

「バイクのBだったんだ……」


 いや、それよりも先ずは彼らが僕たちの前にやって来た理由だ。まさかキタノを倒したことによる報復……!?


「キタノはどうでもいいでごわす!」

「あの方は私たちに泥を塗った愚か者……キタノ一人の敗北で私たちとのデュエルを単なる作業だと思われるのも癪です……!」

「つまり汚名返上のためにやって来たんだべ!」

「ふんっ! 光栄に思ってもいいんだからね!」

「麻呂たちの力を見るのでおじゃる!」

「チームの結束とはいったい……?」


 実は仲悪いんじゃないのこの人たち。


「……分かった。キタノを倒したのは僕だ。戦うなら僕が適任だよね」


 そう言った瞬間、彼らは急に僕から目を逸らした。心なしか顔に汗を浮かべて、顔を引き攣っているような気がする。


「えーちょっとそれは勘弁したいと言いますでごわすか……」

「別にキタノを倒してスキルも手に入れてるし戦う必要もないと言いますか……」

「ぶっちゃけ鬼畜戦法を取る都会の美少女と戦いたくないんだべ!」


 :露骨に避けてて草

 :あんな風に完封負けとしたくないよなぁ

 :チャレンジ精神ないんか?

 :おかしい……普通センリちゃんがチャレンジャー側なのでは?

 :これがラスボス系男の娘……!


「あっやっば」

《センリの顔に青筋が見えるデス》


 僕はゆっくりと田舎小僧に指を指して笑顔を浮かべる。


「そこの人、僕とデュエルしようか」

「え、オラァ!?」


『混沌王の対戦を申し込まれました』

『限定ルール:デュエリストのさがによって強制的に対戦を承諾します』


「しまったべぇっ!?」

「あぁ!? 田舎神のタナカが指名されたでごわすぅ!?」

「な、なんてことなの!?」

「タナカはもう脱落ですか……!」

「骨は拾うでおじゃる……」

「誰かオラの勝利を祈ってくれだべ!?」


 ねぇ、なんで僕が指名しただけでそんな反応になるの?


「終わったら君たちの番だからね……?」

『ひぃっ!?』


 :封殺相手とか嫌すぎるし……

 :エンジョイデッキ使いには荷が重すぎる

 :結社のボスは誰か分からないけど、こっちのボスは間違いなくセンリちゃん


「おいそこの公式デュエリスト! おいどんらとデュエルをするでごわす!」

「合作デュエルです……!」

『合作デュエル!?』


 合作デュエル……つまり二対二のタッグマッチだ。僕が田舎神のタナカを指名したことで四人になり、ちょうどエーシスたち四人と数が合うことになった。


 でもいつまで経っても指名による強制デュエルのアナウンスがされない。どういうことなんだろう。


「そういや俺たち乗り物を持ってないぜ!」

「俺もだね」

「クッ、おいどんらは合作ライドオン・デュエルを前提にルールを組んでるでごわす!」


 そう言われてもジャッジ君たちに乗り物が持ってないんじゃあ……そう思った瞬間、後方からけたたましい音を響かせながらこっちに近付いてくる乗り物がっ!


「パラリラパラリラだねー」

「主役は遅れてやってくるンゴ……!」

「アン先輩にパイア先輩だぜ!」

「クロもいますニャ」


 アンさんが長いハンドルのバイクに操縦し、その隣のサイドカーに乗っているのはパイアさんとクロだ!

 でもこのバイクのデザイン、これ多分昔存在した暴走族のバイクみたいな感じだよね。


「クロだー! わしゃわしゃわしゃー」

「やめるニャやめるニャ……でももっと撫でてくださいニャ」

「その合作デュエル、私たちが受けるねー」

「なるほど……ではお主たちとのデュエルはおいどんとニシノが相手をするでごわす!」

「私たちの連携を見るといい……!」


 これで合作デュエルの一組は決まった。残るはミナミノと麻呂眉の相手。


 彼らの相手をするのは――。


《わっちゃあたちもやるデス》

「えぇ? でも乗り物を持ってないんだけど」

《大丈夫デス。乗り物なら用意できるデス》

「……あっなるほどぉ! よしならあなたたちの相手はこの私とマナちゃんが相手だよ!」

「ふんっ! ちょっとばかり顔もスタイルも良いからって調子に乗るんじゃないわよ!」

「明らかにミナミノよりも上でおじゃ――」

「ふんっ!」

「おじゃあっ!?」


 勝負が始まる前に仲間割れが起きてる……。


『話は聞かせていただきましたぁ!』


 ここで様子見をしていたデュエ宮さんがマイク越しに声を張り上げる。


『センリ選手のデュエルが終わってもまだ戦いは終わらない! 今度のデュエルは合作デュエルだぁ!』


 アン&パイアVSヒガシノ&ニシノ。

 エーシス&マナナンVSミナミノ&麻呂眉。


『果たして公式デュエリストと結社のデュエリスト、どちらが勝つのか!?』


 六芒星との最後の戦いが今始まる――!




「あれ、オラに対する言及はどこだべ?」

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