第3話 「ブルーローズプリンセス」

 ブルー・・・お嬢様は、海のように広く、空のように澄み切った穢れなき心、穏やかでお優しい方にございます。

 お嬢様は、自らお話する場面は少ないものの、私のような卑しい身分の話にも耳を傾けてくださり、

 私の話が飛んでも、オチが無くても、言葉に詰まっても、その慈愛に満ちた優しい眼差しを向け、決して人の話の腰を折るような事はせず、ゆったりと落ち着いて聞いて下さるので、

 受け入れて貰えた安心感から警戒心が解け、身分を弁えずついつい饒舌になってしまいます。

 お嬢様の穏やかな心地よいオーラに包み込まれると、まるで心が抱きしめられたような気がして、お嬢様への愛おしさが溢れております。

 そして、お話されると、表現力の幅は広く、語彙力に富んでいるので、実はお話上手で、知的で冷静な分析力から、いざという時の言葉の重みが段違いでございます。


 聴き上手は、お話上手……私には、その素養がないので、羨ましい限りでございます。


 プリンセスの名に相応しく、皆からの信頼感も厚いお嬢様。

 しかし、その権力を誇示する事は一切せず、人一倍、平和を愛するお方でございます。


 フフフッ……あの時の事、覚えていらっしゃいますか?


 ある日のティータイム……大旦那さまの急用で、大人の使用人たちは出払っており、ティータイムの給仕を任されたのは、幼いページボーイ達と私でございました。


 私が、お嬢様へ紅茶を注ぎ、デザートをテーブルに並べる度に、後ろから『グゥ~』『グゥ~』と音がなるので、何事かと振り返ると……

 ページボーイ達が、よだれを垂らしながら、お腹を鳴らしているではありませんか。

 使用人と言ってもまだ子供でございますからね、彼らなりに一生懸命ガマンしていたのでしょう。

 しかし、私もまだ新米だったので、職務を全うしなければとピリピリしておりました。

「お嬢様の目の前で……なんて、無礼な奴らめ!!」とページボーイ達を咎めると、お嬢様は冷たい目で私を睨みつけ、ページボーイ達に悲哀の表情を浮かべましたね。


 あぁ、裏で叱るべきだったなと反省致しました。


 すると、お嬢様はページボーイを椅子に座らせ、焼き菓子を手渡すじゃありませんか。


「なりませぬ、こ奴らは犬以下にございます。お屋敷の雑草でも食わせておけば、良いのでございます!!

 お嬢様と使用人がテーブルを共にし、ティータイムを過ごすなんて絶対にあってはならぬ事でございます!」と申し上げると……


 お嬢様はおもむろに席を立ち「じゃぁ、私が立てば良いのね」と仰り、ページボーイ達に紅茶を注ぎ、給仕するという有様。


 結局、デザートや紅茶はページボーイ達が平らげ、ティータイムは、少年たちが『キャッキャッ』と楽しむ場になってしまいました。


 あの時は、本当に面目御座いません。

 でも、お嬢様は、お菓子や紅茶を一口も召し上がっていないのに、いつになく満足そうな表情をなさっておりました。


 しかし、しきたりを破ってしまったページボーイ達には罰を与えなければなりません。

 おしおき部屋に送られるのを覚悟して、しょんぼりしてるページボーイ達を観ると、お嬢様の表情は、一変して硬くなり

「私が悪いの。だから、この子達を叱らないでお願い」と悲しそうな声で仰られましたね。


 なので、私こうお答えしました。

「お嬢様、何か勘違いなさっておりませんか? お嬢様もしきたりを破ったら罰を受けるのは当然でございますよ?

 おしおき部屋に行くべきは、ページボーイではなく……お嬢様でございます!!!」


『冗談です。ウソっぴょん♪』と言おうとしたら……


 それを聞いたページボーイ達が、私にマジギレして、お嬢様を守るべく、全力でこちらに襲い掛かってくるのではありませんか。

 噛みつかれた跡とかまだ残ってますからね……もうほんと災難でございました。


「か弱きものを守る為に、捧げなさい」

 大旦那さまがいつも口にしている当家の家訓の意味を身をもって知らされましたよ……


 でも、あのぅ……

 お嬢様にお仕えして私結構経ちますが……

 お嬢様の為に、使用人らしい所、まだ一何一つ出来てない気がするんですけど……私ここに居て良いのでございましょうか?

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ドルチェプレートカラーセラピー おゆたん @Oyutan

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