第5話 不幸

 生物の焼けた匂いが、嫌いだった。


 悲痛を見るのが、嫌いだった。


 でも、一番嫌いだったのは。


『──』


 名前を呼ばれないことだった。


 いろんな嫌いに囲まれていた。


 不幸だった。


 こんな不幸な日々が、永遠に続いてほしい。と、思うはずなかった。


 だって、終わりたいと思っていたから。


 常に不幸を願わない者は。


 不幸を知る者だ。

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