開けた道
「研究者?」
僕はルース兄様の言うことに首をひねる。
「そうだ!研究者」
「どういうことですか?」
ルース兄様は丁寧に僕に説明する。
「いいか、魔法の研究者っていうのは、新しい魔法を生み出すために様々な試行を繰り返す職なんだ」
「はい……?」
「だから研究者の研究は自分の魔力が無くなるまでが研究のタイムリミットなんだ。それに、不完全な魔法は要求される魔力も多く、使うのには結構覚悟がいるんだ。でも、お前は実質無限に魔力があるんだろ?」
「確かにそうですけど……?」
「だったら、新しい魔法へのアプローチも容易に、そして何回でもできるってことなんだ!」
ルース兄様はびしっと僕に指を突きつける。
「それに、研究が上手くいけば、それで爵位がもらえたり、収入を得ることだってできる!」
「だから、僕にぴったり?」
「あぁ!それに兄ちゃん研究者に伝手があってな!今すぐにでも手伝いとかができるんだ!学校との両立もしやすいし、何より研究者には変人も多いし、割と気兼ねなく過ごせる場になると思うんだ!」
「そうなんですか?」
変な人が多いなんてちょっとビビってしまうけど、僕みたいなちょっとスネに傷のある人にとっては良い場所なんだろう。
それに、ルース兄様が勧めてくれるということは、今の僕でも邪魔にならない場所なんだろう。
ルース兄様はそういう人だ。
「とりあえず、話だけ聞いてみるだけでも……」
「そうだな!それが良いだろう。明日、研究者の知り合いを連れてくる」
ええっ!?明日!?
「そ、それは突然ではないですか?相手の方にも都合が……?」
「そういう時に都合を全部無視することができる変人だから大丈夫だ」
「ええ……」
そして翌日。
その後、ルース兄様と入学や研究についての話をしたので、結局MpDやMpCの強化はできなかった。
流石に夜更かしして次の日の約束に寝不足顔で行くわけにもいかなかったからだ。
そんなこんなで僕は今、公爵邸の応接室にいる。
一体どんな人が来るんだろう……?
そう思っていたら、ドアが開いた。
ルース兄様がその研究者を連れて戻ってきたみたいだ。
「兄様——」
「君がルース君の言っていた子かね!?」
「うわっ!?」
兄様だと思っていたら、女の人が入ってきた!
「魔力が回復するとは本当かね!?」
「あ、えっと……」
突然詰め寄られて、肩をぐわんぐわん揺らされて、会話が頭に入ってこない……!
そう思っていると、女の人の後頭部をコツンと叩く人影が。
「もう、母様!良い加減にしてください!」
「あ、ミュリエルさん」
「久しぶりですね、リック君」
そこには、ルース兄様の婚約者のミュリエルさんが立っていた。
ミュリエルさんは一歩下がって綺麗な礼をすると、女性の両脇を持ち上げて引き摺って椅子まで移動する。
僕たちは向かい合って席に着く。
「もう!リック君は話を聞くというだけで、まだ研究所に入るというわけではないんですよ!」
「はは、すまないすまない、忘れておった」
「はぁ……」
って母様?ミュリエルさんのお母さんということは……?
「ハイント公爵様!?これは失礼しました!」
僕はすぐに立ち上がって、礼をする。
ハイント公爵は女公爵であり、僕が通う学園の学園長も兼任している。
「構わんよ、名乗って無かったし」
「ごめん、大丈夫か?」
そこにひょいとルース兄様が顔を出す。
「ルース兄様、ひょっとしてハイント公爵様が……?」
僕がそう聞くと兄様はきょとんと答える。
「?あぁ。ミラベルさんは研究所の所長も兼任しているんだ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
すいません!諸事情により投稿時間が遅れました!
次回は遅れないと思います!
次回は8月3日18時投稿です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます