第四話:何だかえらいことに巻き込まれ始めたんですが......
......王都、城のとある一室にて。
そこにはラッツェルの姿があり、椅子に座りながら誰かが来るのをずっと待っていた。
どれぐらい待ったことか、ノックの音が聞こえてきた。
「ラッツェル様、ギルド長ゴウーダ様を連れてきました」
「入ってくれ」
騎士がドアを開き、その後ろからゴウーダが入ってきた。
「申し訳ないゴウーダ殿。 急にお呼びしてしまって・・・」
「構わねぇよ、俺も丁度大方の用事は済ませたところだからな」
「さて・・・要件に関してだが、その前に・・・ギルドに向かった際に面会を断られた冒険者たちに関してだけど・・・」
「あいつらの事ですか・・・それなら現在治療を受けて明日には動けるまで回復する。 面会なら―――」
「いや、僕が確認したいのは彼らのケガに関してですよ。 ゴウーダ殿」
ラッツェルの言葉にゴウーダは先ほどまで余裕そうだった顔つきが締まり、眉間にしわが寄る。
「―――話が、見えねぇな」
「単刀直入に言いましょう。 今回負傷して戻って来た冒険者メンバー四名、傷は弾丸によるものではありませんか?」
「どこでそれを・・・!」
「やはりですか」
「あっ・・・このっ! 最近のお若い騎士様は“引っかけ”をしやがるのかよ・・・!」
「私なりに覚えた交渉術ですよ、ゴウーダ殿。 ―――それに、ここから先のお話は是非ともあなた方ギルドと共有しなければならないと思いまして・・・」
「共有・・・? 一体なんの・・・?」
「今より数時間前、我が騎士団の内ひとりが負傷したのです。 銃弾による負傷で」
「あぁ!? それって・・・」
「話を最後まで聞いてください。 彼は足に銃弾を受けて重症です、ですが治療が間に合い命は助かりました。 現在病室で安静にしています」
「そいつはよかったな」
「ありがとうございます。 そしてそんな彼から不思議な証言を受けました」
―――頭に向かって銃弾が放たれ、弾いた瞬間。 足に銃弾を受けた・・・と。
「―――ッ!?」
「その顔。 やはり彼らが受けた銃弾による傷は・・・」
「バカな! 邪神の御使いがここまで来てたのか!?」
ゴウーダは席から立ちあがった。
その顔はサァ・・・と青ざめ、口を押さえながらも言葉が漏れ出ていた。
「邪神・・・!? 一体、それは・・・!」
「―――ラッツェル騎士団長殿。 あんたにも話とか無きゃダメだろうな・・・ここまで関わったのならば・・・」
ゴウーダはギルドで出た推測とその答えを全部ラッツェルに喋った。
ゴウーダの語る一言一言をラッツェルは真剣に受け止めながら聞き入れ、それと共に事態の重さと恐ろしさを噛み締めていた。
「―――以上が、事の顛末そして俺たちが導き出した答えだ・・・。 正直、推測の域でしかないが・・・」
「なんてことだ・・・では、あの時彼が追いかけていたという奴は・・・」
「大方、その御使いって可能性が高いでしょうな。 連射出来る銃を持っている辺り、確実と言ってもいいほどに・・・」
纏った話を終え、ラッツェルは頭を抱え、ゴウーダは険しい顔つきになっていた。
これまで過去にこの王都周辺で魔族の襲撃は多々あれど、邪神の情報は一切出ていなかった。
それが何故か今、しかも最悪な形で現れた。
「―――この話は、幾つかギルドにも伝えてはいる・・・だが、全部とまではいかなかった。 それでも他の通信手段を用いて連絡を取っている」
「今はそれに賭けるしかありませんか・・・」
「でしょうな・・・」
ラッツェルは突然席を立ち、ドアに向かって歩きだす
「何処へ?」
「決まっています。 逃がした御使いの捜索に向かいます」
「無茶だ! あんたらは冒険者でもないし、何より神の加護を受けていない!」
「唯一加護を受けているのは僕だけです。 ですので僕だけで向かいます」
「バカ言うんじゃねぇ! それこそ自殺行為―――」
「仲間が一人負傷し、苦しんでいるんです!!!」
「ラッツェル殿・・・」
「例え無謀であるとしても、これ以上誰かを傷つけるわけにもいかない。 それにもし、ここで御使いを逃がせば、取り返しのつかないことになりかねない・・・」
「だからって・・・!」
「後のことを頼みます、ゴウーダ殿」
「おい!」
ドアを開けると、そこにはエリノアが立っていた。
その顔つきは険しく、真剣な眼差しをしており、ラッツェルの顔をジッと見つめていた。
「どこに行くんですか隊長? また悪い癖が出てるんじゃないですか?」
「エ、エリノア・・・。 ―――ッ! 君も人が悪いな、人の話を盗み聞きなんて・・・」
「部下をほっといて単身で死に行くよりかは倍マシだと思いますけど」
「うっ・・・」
普段見せないであろう鋭い刃のような眼光にラッツェルはタジタジだった。
その後ろでゴウーダが笑っていた。
「あっはっはっはっはっはっ!!! 太陽鳥騎士団の長であるラッツェル殿も女子には負けますな!」
「ご、ゴウーダ殿まで・・・」
「よし! このゴウーダ、ここまで来たならば人肌脱ぎましょうかね!」
「何を・・・」
「これよりうちのギルドに所属する者たちを集め、緊急クエストを出す! 内容は・・・」
―――『邪神の御使いの討伐』・・・だ!!!
―――――。
バザールでの一件から数時間ぐらい経ったか、相変わらずバギーは道を進む。
今度は草木も少なく道の広い道路を走っていく。
しかし、どういうわけか走っている内に気が付けば妙な異臭を感じ取っていた。
「ん? なんか臭うな・・・なんというか・・・焦げ臭い?」
「グルルルル・・・」
「ん? どうしたファング? 臭いに当てられたか?」
犬の嗅覚は人の何倍も強い。
さっきまで寝ていたとはいえ、さすがにここまで臭いが濃くなれば起きてしまっても仕方ないだろう。
しかしなんだろうなこの異臭とも言える焦げ臭さ・・・
色んな臭いが混じって鼻がもげそうになる。
「参ったな・・・」
臭いの先はこの道の先と思われる。
多分、この臭いの先にはろくでもない出来事しか待ち受けてないだろう。
じゃあこのまま引き返すといえば無理だろう、あんなことをしでかしたんだ。
戻ればあの騎士たちが仲間勢ぞろいで待ち受けてる可能性が高い、むしろこちらを追いかけてる可能性だってある。
それなら脇道を逸れて進むか・・・? いやこれもダメだ。
先ほどの森とは違って視界が広いとはいえ、脇道に逸れるのは迷子になる確率が高い。
「これもうどの道一択しかねぇじゃん・・・」
そうもう残された道はこの悪臭の先へ進むしかない。
ワンチャン悪い出来事は終わっていて後の祭りだったってパターンに賭けるのもありだが・・・
「これまでの経験上、絶対悪い出来事に遭遇するよなぁ・・・」
もういい、仕方ないと割り切るしかない。
そう諦めと覚悟を決めながらバギーを走らせる。
―――――。
「最悪だ・・・」
その一言だけが漏れ出た。
あれからバギーを進ませて30分もしない内に臭いの先に辿り着いた。
そこは地獄の風景が広がっていた・・・
多分、村と思われる場所なのだろう。
木製の家と思われる焼け焦げた瓦礫がいくつも列を並べており、その瓦礫から人らしき焦げた物がむき出しになっているのが見えた。
そして何より一番目に映るのは・・・
「ハァーッハッハッハァーッ!!! 我ら魔の一族に歯向かう愚かな人間共よ!!! 所詮神の力を得ていない者共の力はこの程度かぁッ!!!」
村の中心で大声を上げながら笑っている藍色の肌をした筋肉ダルマだ。
耳障り、耳が痛い、不愉快と存在を否定したくなるような感じを出しているそいつは、
確実に相手を殺す為に作り上げたとしか言いようがない不規則な形状の棘を生やしたこん棒を片手に持っていた。
鬼の金棒という感じにも見えるが、あそこまで不規則な形をしているとなんか違うような気がする。
いや、そのことは二の次だ。
問題は、この惨状に関してだ。
辺り一面が火の海と化し、道端には黒く焦げた死体や焦げていないが明らかに致命傷とも言える傷を負って倒れている死体も転がっていた。
これまでの経験上、このような惨状は数回程度見た事あるが、どうしてもこの光景だけは慣れない。
焦げ臭い空気が充満していて人が焼ける臭いは感じにくくなっているが、それでもこの光景を見てしまうと顔が歪む。
「さぁ現れるが良い、神とやらよ!!! この魔将軍ホガイルが打ちのめしてやろう!!!」
あいつのせいでこの先の道を通りたくても通れない。
だがあの筋肉は伊達ではない、並大抵の銃では筋肉が防弾チョッキの役目をして受け止められるか弾かれるのどちらかだろう・・・
「仕方ないか・・・皆、一旦降りて」
荷台に乗っている皆を下ろして、荷台に手を当てる。
「パンドラシステム起動」
荷台を分解し、変換し構築する。
さすがに作り上げるものが複雑で強力ゆえに鼻血が出始める。
そこまでして作り上げたのは、対物ライフルだ。
対戦車ライフルとか作れるには作れるがあれは撃つとまず肩が外れかねん。
奴との距離が遠いのと今いる位置のおかげでに気づかれないが、迅速に行動していく。
ほふく前進のように地面に向かって腹を下にして横になり、ライフルに備わっている二脚でしっかり銃身を支える。
スコープのズームを調整し、照準をあの筋肉ダルマに合わせる。
ライフルには既に弾丸が装填されており、音で気づかれないようにゆっくりとボルトを引く。
「皆、僕が先にあいつに向かって撃つ。 多分それでも奴は倒れないだろうからみんなで攻撃を仕掛けて、けど無茶だけは絶対にしないで。 いいね?」
その指示に皆は理解したのか頷いたりして答えた。
あとはこちらが狼煙となる一発を撃てばいい。
「スゥ・・・フゥ・・・」
小さく深呼吸をする。
それと共に焦げ臭さと熱が肺に入る。
それでも集中は研ぎらせる、ただ慎重に、奴の大きな目玉に向かって照準を合わせる・・・
奴の動きが止まった。
今だ。
「フッ!」
―――ドンッ!!!
漫画や映画のように長く音が響かず、ただ轟音と呼べる大きな音が一瞬だけ鳴った。
その音の後、ホガイルとか言ってたか? 筋肉ダルマの眼球に当たった。
「ふぅぅーーー・・・」
角度、風、どれも好条件の中の狙撃。
上手く当たってホッとしているが、まだ完全に安堵してはいけない。
奴はまだ立っている、片方の眼球を貫かれても尚も奴は立っている。
見た目通り、化け物だなありゃ・・・
「ふぅ・・・!! ふぅ・・・!! 何奴だ!!! 姿を見せ―――」
―――ドンッ!!!
再度発砲した。
今度は狙いが逸れたが奴の耳を撃ち抜いた。
撃ち抜かれた耳は弾け飛び、痛みのあまりかホガイルは撃たれた耳を手でふさいで悶える。
「ガアアアアア!!!? 我が耳を・・・!! おのれぇ!!! よくも!!!」
そう言いながらホガイルは立ち直ろうとした。
だが二度目の射撃の間にうちの仲間がもう奴の懐まで接近していた。
ファングと黒フードくんがホガイルの両足に向かって刃と爪で切り裂く。
だが分厚い肉体ゆえかある程度しか肉を切ることが出来なかったが、裂いた傷口から血吹雪が出る。
「な、あぁ!!? 私の肉体を・・・!! 馬鹿なぁッ!!?」
余程自分の筋肉に自信があったんだろうな、だがあの二人の持つ鎌と爪の鋭さには負けたな。
・・・しかしまぁ黒フードくんの鎌はどうあれ、ファングの爪があんなにも鋭くリーチが長いとは思わなかった。
なんというか、爪で切る際にかまいたちみたいなモノでも起きてるのだろうか?
あの一瞬で腕・・・というか前足を降る速度が目にも止まらぬ速度だし、そうなのかもしれない。
やっぱ美しくてかっこいいなぁファングは・・・
「一体・・・何が・・・! ―――ッ!!? 馬鹿な!!! 死神にブラックウルフだとぉッ!!?」
へ? 何? 死神? ブラックウルフ?
「何故、邪神のしもべと深淵の狼がここに!!? そして今の攻撃は―――」
そうホガイルが言いかけるとミミックののしかかりが奴の脳天に決まる。
奴とミミックのサイズ感的にミミックの方が負けているが、それでもあののしかかり攻撃は痛い
思いっきり角からいってるよ、ありゃ痛いよ絶対。
それでいてミミックは地面に綺麗に着地した、見事だよ・・・
「こ、この愚か者どもめぇ!!! 潰して―――」
―――ドンッ!!!
させるかよ。
銃弾は振り上げた奴の腕、ちょうど動脈か静脈辺りを貫いた。
さすがに漫画のように手と腕がさようならする事はなかったが、その手と腕の間に大きな穴を開けたおかげかダランッと動かなくなった。
「ぎゃああああああ!!! 私の腕が・・・腕があああああ!!!」
残り7発。
もう奴はこれ以上動くことは出来ない。
一気に決める。
照準を奴の頭に合わせ、引き金を連続で引く。
―――ドンッ!!!
こめかみに当たる。
―――ドンッ!!!
今度は頬
―――ドンッ!!!
残った眼球
―――ドンッ!!!
顎
―――ドンッ!!!
首
―――ドンッ!!!
鼻
―――ドンッ!!!
口
連続で撃ったせいか砂煙が上がり、むせてしまう。
「ゲホッゲホッ! はぁ~・・・さすがにくたばったか・・・?」
むせながら起き上がり、ゆっくりと歩きながらみんなの元へと向かう。
辿り着くと、驚いたことにまだホガイルは虫の息だが、まだ生きていた。
マジかよ、あれだけ打ち込んだというのにどんだけ頑丈なんだ。
「みんなご苦労様。 怪我無くてよかった」
「ワンッ!!」
ファングは一言吠え、黒フードくんはお辞儀をして、ミミックはパカパカ蓋を開け閉めして答えた。
なんだ、なかなかどうして良いチームじゃないか僕ら。
「ば・・・かな・・・」
ホガイルがヒューヒューと弱々しい息を吐きながら口を開く。
「こ・・・んな・・・我が敗北するなど・・・ゲホッ! ありえぬ・・・」
「そうか? さっきまで勝利の余韻に浸ってたじゃないか。 それに、これはお前が望む戦いじゃないか」
「な・・・にぃ・・・?」
あっ耳は一応聞こえてるのか
聞こえてないつもりで喋ってたのに・・・
まぁいいや。
「一方的に相手を蹂躙し、有無を言わせずに叩き、ねじ伏せ、屈辱の苦汁を飲ませる。 お前はそういう自分が必ず勝つという戦いを望んでいたんだろ?」
「ぐ・・・うぅ・・・」
「そういう甘い汁だけを吸うだけの戦いなんざ、ただの茶番だ。 こういう風にな。 パンドラシステム起動」
手に持っていた対物ライフルを分解し、組み上げる。
そして次に出来上がったのは、爆薬。
たしかC4爆弾とか言ったか? そこそこの大きさと重さがある。
それをホガイルの吹き飛んだ鼻辺りに外れないようにねじ込むようにくっつける。
「がああああ!!! 何を・・・」
「お前はここに住む住民たちを侮辱した。 己のちっぽけな力を鼓舞する為だけにな」
「ぐぬぅぅう・・・!! 弱者は踏みにじられてこそ存在するもの・・・!! ゲフッ!! ヒュー・・・貴様のような訳の分からん奴になど」
「あ、そう」
「皆こっちに」という感じで無言のまま手招きをして皆を少し遠くの物陰まで誘導していく。
何分あれだけの量だ、威力は相当なものだろう・・・
「おい・・・! どこに行った!? まだ話は終わっていないぞ・・・!!」
さすがに足音が聞こえたのか、若干慌てるように喋り出す。
バーカ、もうお前に話す口なんかねぇよ。
爆薬には既に信管が刺さっており、コードレス式の起爆スイッチを片手にスタンバイする。
「よし、ファングちょっとごめんね」
ファングに専用の耳栓を付ける。
爆薬を作り上げるついでに作っておいた。
「ミミックと黒フードくんは大丈夫? これから凄い音がするから耳塞いでいてね」
僕の言葉に二人は大丈夫という感じで答え、スタンバイが完了した。
「おい・・・なんとかいえ・・・! まだ終わってなど・・・」
―――カチッ
起爆スイッチを押した。
―――ドオオオォォォォォォン!!!
凄い爆炎と爆風、そして爆音が鳴り響いた。
僕も事前に耳栓をしていたから耳に大したダメージは入らなかったが、
さすがに体がビリビリ痺れるほどの衝撃が伝わってきた。
爆発が起きて数秒後、何か水気のある重い物が落ちる音が幾つか鳴り、
爆発の煙と砂が混ざった物がこちらに流れこみ僕とファングは少し咳き込んだ。
少し生成した爆薬の量が多すぎたか・・・
煙が消えたのを確認し、ゆっくりと物陰から覗き込む。
先ほどまでそこに居たホガイルの姿は崩れており、ただの肉塊となっていた。
我ながらだがエグイことをしてしまったと思うが、罪悪感はない。
こいつがやった所業はこの村に居る人間全員をくだらない思想を言い訳にして惨殺し、この世界から一つの村を消したのだから。
「仇討ちと綺麗ごとは言わないけど、これで―――」
その時だった。
突風が吹き荒れ、風が吹いた方角を見るとそこには一人の女性が立っていた。
年齢的に幾つぐらいか・・・多分、二十歳来て間もないぐらいのお年頃の女の子か・・・
ただ他の人間と違う点を挙げるならば、獣耳や尻尾が生えていていることだ。
耳や尻尾の形状からしてファングと同じ狼と思われるが、ファングとは真逆に白銀のように光り輝く色をしている。
雪山に居そうな狼の耳と尻尾をしているせいか、先ほどの突風がまるで吹雪のような感じがして仕方なかった。
「誰だ・・・?」
この村の住民? いやそれにしては風貌が些か違う気がする。
声を掛けようとした。
だが、口を開くまでもなく、それは無理だと悟った。
―――憎しみに駆られたような眼差しをしていたからだ。
ゾッと来るような睨み。
その瞳に傍に居た僕の仲間たちがゆっくりと構え始めた。
明らかに有効的に済ませるような空気でもない。
一触即発。
その単語だけが僕の脳裏を過ぎる。
だが今、目の前に見える彼女は触れなくともあと少しでこちらに向かってその腰に下げた剣を抜いて襲い掛かるだろう。
そう考えていると共に彼女の手が剣の方に向かう。
あっ駄目だ、もうどんだけ声を掛けようと無理だ、逃げれない、戦う他に道がない。
手に持つ対物ライフルを捨てて即座に腰に付けた二本の剣に手を伸ばそうにも彼女の方が早い。
だがこれは西部劇でも何でもない、僕の前には僕を守ろうと仲間たちが居る。
これまでの経験上、ああいう手合いの人物ほど油断できないし純情でない程強いだろう。
だが、死ぬのは御免だ。
生きてやる。
ここまで来たんだ、生き延びてやる。
例えそれが誰かの命を奪う結果になろうとも。
さっきの筋肉ダルマのように戦いにならない物になろうとも。
彼女の手に剣が握られ、姿が消えると共に仲間をすり抜け、僕の目の前に彼女が現れる。
「パンドラシステム起動!!!」
例えみっともなくダサいやり方をしてでも!
生きる!!!
―――ギィン!!!
「ぐぅぅぅ・・・ッ!!」
「何ッ!?」
我ながら新記録とも言える組み換え速度だ。
あの一瞬とも言える5秒間の間に対物ライフルをシールドに変えるとか、
銃火器より単純な構築でなかったらバッサリ斬られて死んでたかもしれない。
そこまで大きくもなく頭と足が出てしまっているが、体を防御するには持ってこいの奴だ。
ただ難点は頑丈を重点したせいで凄く重いという事ぐらいか。
それから相手側もどれだけの馬鹿力を振るえばこれだけの衝撃が来るのか、
かなり踏ん張っていなければ危うく後ろに吹き飛ばされているところだった。
いや、少し後ろに下がった。
何故なら―――
「みんな!」
仲間たちが攻撃しづらくなるからね。
黒フードくんの鎌とファングの爪が彼女を襲う。
「チッ・・・」
再び彼女は消え、少し離れた位置に現れた。
まるで瞬間移動のようだが、やってることはもっとメチャクチャで単純なやり方。
あの子、足の筋肉とバネを利用して瞬時に指定の所に跳んでいるんだ。
その証拠に彼女がさっき居た場所の地面はエグるように削られている・・・
なんという脳筋プレイ・・・漫画やアニメとかの創作物でしか見たことないぞ、そんな芸当・・・
だがこれで先ほどの剣撃のバカみたいな威力も説明が付く。
彼女は筋力を活かして戦うスタイルだ、素早さもその分相まって厄介な相手になっている。
あんな細身の体から、どうしてそれだけの力が出てくるのか・・・
訳が分からない・・・
兎にも角にもまだ彼女は倒れていない、皆が気を反らしている間に双剣を抜いて構える。
同じように仲間たちも構えた。
彼女の姿が消えた、また跳んだ。
だが二度も同じ手は通じない、うちの仲間たちは優秀なんですね。
―――ガキィンッ!
金属と金属がぶつかり合う音が鳴り響いた。
先ほどはすり抜けられたが、今度は黒フードくんの鎌と彼女が持つ剣とがぶつかり合った。
ギリギリとこすれる音を鳴らしながら黒フードくんと彼女の押し合いの力比べが始まった。
だが素直に張り合うつもりもない、ファングが先頭に僕が後方から前後に攻撃を仕掛けた。
当然、彼女はまた跳んで逃げるだろう。
だが今の状態はこちらに取って好機!
「黒フードくん、そいつを掴んで!」
「なっ・・・!?」
黒フードくんは僕の指示に瞬時に対応して彼女との鍔迫り合いを弾いて無理やり止め、そのまま彼女の腕を掴んだ。
これで動けない。
「うおおおおお!!」
思わず唸るように大声が出た。
漫画やアニメでも時折こういったモノあるが、こういう場面ではどうしても声が出ちゃうものなんだなと僕は思った。
肉が裂ける音が聞こえた、そんな気がした。
実際はそこまでズバッ!とか効果音みたいな音はしない、ただ感触で伝わる。
手ごたえありだ。
ファングの爪と僕の双剣、二人の力いっぱい込めた斬撃を受け、彼女は血しぶきを上げていた。
黒フードくんが掴んでるせいで後ろにも下がることが出来ず、ただその場に構えて立つだけだった。
・・・ん? 構えて立ってる? あの一撃を受けて・・・まさか!?
「黒フードくん! そいつから離れて―――」
一撃。
まさにそういう感じの威力と迫力だった。
ボッ! という空気を打つような音さえも聞こえる程だった。
彼女の放った斬撃は、黒フードくんを吹き飛ばし、衝撃波がこちらにまで伝わるほどだった。
「ぐっ・・・ぶはっ! はぁ・・・はぁ・・・」
一撃を放った後、彼女は吐血し、膝をつく。
なんて奴だ・・・あの斬撃を喰らって尚もあれだけの一撃を繰り出すっていうのか・・・
いや、それよりも!
「黒フードくん!!」
僕は吹き飛ばされて倒れている黒フードくんの元へと急いだ。
黒フードくんの元に辿り着き、傷の具合を見る。
上半身から腹の部分にまで斬撃の跡が残っており、そこから黒いモヤのような物が漏れ出ていた・・・
「しっかりしろ! 意識を保つんだ! 死ぬな!」
黒フードくんの手を握り、どうすればいいのか必死に脳みそをフル回転させる。
治療は無理だ、僕自身に回復魔法が使える力はない。
パンドラシステムにも一応治癒能力はある。
だが他者ではなく自分自身にでしか使えないし、反動もあるから使い勝手が悪い代物だ。
あのバザールで手に入れた物ではどうにもならない、ファングやミミックに頼るべきか!?
僕は心配そうにこちらを見る二人を見つめる。
駄目だ、この様子だと二人も僕同様に治癒や回復魔法は持ち合わせていない。
どうする!? どうすればいいんだ!
「ぐ・・・ああああっ!!」
雄たけびが聴こえた。
彼女だ、さっきまで膝をついてた彼女が血を出しながらも立ち上がってきた。
その顔は苦痛に歪んでおり、痛みに堪えていると分かる顔をしていた。
嘘だろ・・・まだ立ってこちらに戦う意思を向けれるのか!?
不味い、この状況は非常に不味い!
負傷した仲間を庇いつつまだ動ける奴に対して戦うなんて芸当、漫画やアニメの主人公でも無い僕には無理すぎる!
幾ら何度も異世界に転移している身でも、こういった状況を打破できるだけの知能も力も不足している。
異世界で手に入れた力も死んでは元の子もない、賽の河原の石積みと一緒、死んでしまったらその時点で全てがなかったことになる。
僕のどうしようもない体質、これのせいで僕は死を恐れている。
どんなに努力しようとも結局死ねば最初からやり直しだなんて・・・そんな現実主義な理不尽・・・!
「クソッ・・・!」
駄目だ、悪い方へと思考が傾いて集中力が持たない・・・
ファングとミミックが僕と黒フードくんの前に立って守ってくれてる、でも彼女の力量を考えれば倒すのは難しい。
嫌だ、せっかく手にした僕の仲間を失うわけにはいかない!
でもどうすればいい!?
誰か、誰か助けてくれ!
―――「御使いの負傷及び被害を確認、敵対人物を排除します。」
閃光が突然現れ、彼女の体に当たる。
貫通はせず、まるで光の光線が肌に激突するように当たって彼女は燃え尽きて黒墨まみれの瓦礫へと吹き飛んでいった。
声がした方、光線が飛んで来た方を見ると
―――そこには二つの物体が浮いていた。
片方は艶やかな球体をした紫と水色を併せ持ったような色合いをした奴。
もう片方はごつごつとした岩のような四つの突起がある星形みたいな見た目をしているが、
ところどころに紋章のように光る線が血管のように浮き出ている奴。
「一体・・・なんだあいつらは・・・」
夕焼け空の光も相まって、彼ら?の姿が神々しく見えた。
敵? いや恐らく違う、だって彼らは僕らを守った。
それに今、彼女の事を敵対人物とか言ってたような・・・
「御使いの負傷を検知、負傷状態重度と断定。 これより治療を開始します。」
そう言うと、球体の方がこちらに近づき、不思議な力を使って黒フードくんを浮かし、暖かい光に包み始めた。
一体これは・・・何が起きているんだ・・・?
「人間の対象を確認。 対象への接触を試みる。 貴公の情報を求む。」
ごつごつした方がいつの間にかこちらに近づいてきていた。
というか、へ!? じょ、情報!?
「あ、えっと・・・あ~・・・僕の名前はカイコ・・・枯木工房の社長、年齢は20歳。 趣味は物作りと設計図描き・・・です」
思わず簡単なプロフィールみたいなの言っちゃった。
こんなケース初めて過ぎて動揺する。
「・・・・・・。」
僕の自己紹介を聞いてから数秒間沈黙続く・・・。
「対象の返答を確認。 特殊個体と判断。 これより記憶の読み取りを始める」
へっ? 何?
―――ドスッ! ドスッドスッドスッ!
頭に何かが刺さる。
痛みはないが軽い衝撃が伝わる。
よく見るとごつごつした奴から触手のような物が伸びている。
なんだ、これは。
――――――。
「初めまして、俺はカイコ。 君の名前は?」
「僕は天丈 豊。 よろしくね、社長さん?」
「ハハハッ・・・好きに読んで構わないよ。 カイコでも、社長でも・・・」
――――――。
「僕はね、この町を出てどこか遠くで雑貨屋さんでもやろうかなって思ってるんだ!」
「良いじゃないか。 きっと素敵な雑貨屋さんになるよ」
「へへっありがとう・・・まぁ、でも叶う見込みはないんだけどね・・・」
「えっ?」
「あっ、んん! なんでもない!」
――――――。
「なんで豊が・・・! 豊があんな目に遭わなければならないんだ! 豊を生贄にして化け物をこの世に出すだけなんだぞ!」
「化け物ではない! 神だ! この腐敗した世界を浄化し、人類を正しき道に導いてくださるのだ!」
「そんなクソみたいな奴の為に・・・! あの子は渡さない!!!」
「ならばどうする? 私を殺すか!? どうあがいてもあの生贄は助からぬ! もう手遅れなのだから!!」
「クソがああああああ!!!」
――――――。
「しっかりしてくれ・・・頼むよ・・・生きてくれよぉ・・・」
「ごめん・・・ね・・・カイコ・・・僕、最初っからこうなるってわかってたんだ・・・」
「謝るなよ! なんで・・・死んで置いて行くのは俺の方なのに! 生きて長く続いていくのはお前の筈なのに!!」
「ねぇカイコ・・・僕ね、ずっと独りぼっちのままで死んじゃうだと思ってた・・・でも、君が居てくれた。 僕に思い出をくれた・・・」
「やめろ・・・やめてくれ・・・」
「僕すごくうれしかった。 独りぼっちじゃなくなった」
「やだ・・・やだよ・・・」
「だからね・・・カイコ・・・大好き―――。」
「あ、ああ・・・あああああああああ!!!」
――――――。
「死にぞこないがあああああ!!! 貴様のせいで贄は不完全のまま、我の体も崩れ落ちていく!!! よくもぉ!!!」
「よくもだと? ふざけんなよ。 いいだろう、てめぇの望み通り死んでやるよ。
俺の命を賭けて。てめぇぶっ殺して全部何もかも終わりにしてやるよぉッ!!!」
――――――。
「ぶふぉっ! ぶあっ! げほっ! はぁ~・・・はぁ~・・・あぁ、終わった終わったぁ・・・アハハッ・・・はぁ~・・・
もう、体の感覚もねぇや・・・ハハッ・・・あ~・・・クソぉ・・・なんでこんな時に死にたくねぇって思っちまうんだよぉ―――。」
――――――。
記憶が凄い勢いで流れていく。
これは・・・“前世”の記憶だ。
なんで、この記憶が今更・・・もしかして、こいつか? こいつが読み取ってるのか?
「やめ、てくれ・・・俺の記憶を・・・」
手を伸ばそうとしようとした、だが手が上がらない。
倦怠感はない、どちらかというと脱力感を感じる。
立ってはいられる、だが手と腕に力が入らない。
棒立ちのまま動けない、金縛りに近いものなのか?
そう考えている内、何かが抜ける感触を覚える。
頭に刺さった触手が抜けたようだ。
脱力感が次第に抜けていき、力が入ってくる。
だが、掴みかかる余力がまだ戻らない。
「無礼を許してほしい。」
ごつごつ野郎から声が聞こえる。
「君の脳から記憶や知識を読み取り、学習した。
我らには必要な行為だったとはいえ、君にとってかけがえのない記憶を勝手に見てしまった事を許してほしい」
・・・喋り方がさっきとはまるで違う、声色も人間に近くなっている。
「ふぅ~・・・今度からは本人の了承の上でしてくれ」
「了解した。 以後気を付ける。」
「そうしてくれ。 それで、こちらからの質問をしても良いかな?」
「我々の正体についてだな。 それについてだが・・・」
瓦礫が崩れ、中からボロボロになりながらもこちらを睨み、戦う姿勢を取る彼女の姿があった。
マジかよ・・・彼女の肉体は鋼鉄で出来ているのか?
「彼女を倒してからにしよう」
「それもそうだな。 但し、殺すのは無しだ。 暫く気絶してもらう程度にしてもらう。 ・・・俺の記憶を見たからには従ってもらうぞ?」
「了解した。 それではこれより敵対人物の無力化を開始する。」
俺は双剣を構える。
もう彼女には跳ぶだけの体力は残っていないのか、走ってこちらに向かってくる。
さすがにあれだけの攻撃を受けたんだ、そうでなくては困る。
「こちらから攻める。 君は後方からの援護射撃を頼む」
「了解した。」
走ってくる彼女に対して俺も迎え撃つように彼女に向かって走る。
普段ならやることがない行動。
前世の記憶を見たせいかな? 兎に角今は、がむしゃらに暴れたい。
何かを払拭したい、この心に残るモヤモヤを吹き飛ばしたくて、しょうがない。
「おおおおおおお!!!」
ただ、そうしたい。
「治療完了。 御使いの状態良好。 現状に関する記録を求む。」
御使いへの記憶の読み込みを開始。
接続完了。
―――。
読み込み完了。
「御使いと共に居る対象を味方と認識。 状況確認完了。 御使いへの指示を開始。
敵対人物への攻撃を許可。 武装による戦闘を許可します。」
同個体の戦闘を確認。
戦闘への参戦を開始。
「援護する。」
「了解した。 遠距離からの攻撃を集中して行う。
彼に当たらぬよう、そしてあの敵対人物への死亡を避けるようにするんだ」
「疑問。 敵対人物への死亡を避けるのは何故か?」
「彼との契約の元によるものだ。 それから戦闘の後、
彼の記憶を読み取る際は許可を申し出るように。 彼の記憶はとてもデリケートなものだ」
「不明な単語を感知。 デリケートとは?」
「貴重あるいは脆い物を差す。 これに関しては彼の記憶を読み取る方が良いだろう」
「了解。 これより敵対人物の無力化を開始します」
後方から放たれる光線が増えた。
後ろを見て確認できないが、多分球体の奴が参戦したんだろう。
しかし、これだけの猛攻撃を受けながらも、彼女は苦い顔をしつつも殆どを弾いたりかわしたりしている。
なんて体力だ、普通ならこれだけの傷を負っているなら膝をつくか倒れたりして動かなくなる筈だろう?
このまま無茶をすれば絶対に殺してしまう。
それだけはダメだ、それだけは―――
「ガウッ! ガアアア!!!」
「ファング! 黒フードくんも!」
黒フードくん、傷が癒えている!
あの球体は黒フードくんを癒してくれていたのか!
上々・・・! 二人が彼女の気を反らしているのなら、今しかない!
「ミミックくん、跳んで!」
その指示を待っていましたと言わんばかりにガタガタと箱を揺らし、高く跳び上がった。
さすがにその光景に彼女は気づいたがファングと黒フードくんそして後方の球体とごつごつの攻撃を受け流すのに必死で動けない。
そうこうしている間にミミックの高度が一気に下がっていく
「くっそがああぁぁぁぁッ!!!」
彼女は最後の力を振り絞るように黒フードくんに浴びせたあの一撃を放とうとしていた。
そうはさせるかよ!!
―――ドスッ!
「がっ・・・!? あっ・・・!」
咄嗟にだったが、双剣のうち一本を彼女の振り上げる腕の方の肩目掛けて投げる、
それはまるで野球選手のように美しく綺麗な一直線を描いて見事に彼女の肩に命中した。
「もうこれで終わりだ・・・!」
その直後、ミミックののしかかりが彼女の脳天に当たり、そのまま重さと共に顔から地面に落ちた。
「やった・・・よな?」
恐る恐る彼女に近づき、ミミックを退けて肩に刺さった剣を抜く。
無反応だ。
目を見ると白目をむいているが、ちゃんと脈がある。
何度も言っちゃうが、マジかよ・・・どんだけ頑丈なんだこの子・・・
「はあぁぁ~~~・・・!」
思わずデカいため息が出て、その場に座り込む。
それを見て心配そうにこちらに近づくファングと黒フードくんとミミック。
「あぁ、みんな。 ご苦労様・・・黒フードくん、傷の具合大丈夫?」
僕がそう言うと黒フードくんは「問題ない」と言う感じで先ほどまで傷口があった箇所を手で撫でて完治したことを示した。
「あぁ良かった・・・本当に・・・」
「敵対人物の無力化を確認。 次の工程に移る。」
そうだった。
彼らの存在があったんだっけか。
すると、黒フードくんは彼らに向かって膝をつくような仕草をした。
一体何者なんだ、彼らは・・・
「少し待ってくれ。 その前に彼に我々の正体について話す必要がある」
「そうだ。 君たちは何者なんだ? 順を追って説明してくれ」
「了解した。 では説明しよう・・・。」
――――――。
まず、単刀直入に言えば我々は神だ。
「神? それにしては僕が知ってるのとは違うような・・・」
そちらの神は人の姿をしているのが殆どのようだが、我々は違うものなんだ。
それに神とは言ったが、実際は君の世界の神のように管理するような存在ではあるが少し違う。
自然・生物と言ったあらゆる概念などを見守り、世界に危機を訪れる時には誰にも知らぬように処理・修正をするんだ。
「うちのは殆どが堂々としてる点とは違うな」
そういう点を除けば君の世界の神と我々は似た物同士なのかもしれない。
それから我々には上下関係が存在する。
君の世界にもそういった物が存在するようだが・・・
「つまり、あんたらは下の者ってことか?」
そうなる。
我らの上に立つお方・・・上位神とでも言うのだろうか
我らの目的はその上位神たちを目覚めさせることにあるんだ。
「目覚めさせる? 休眠状態って感じにあるのか?」
そう捉えてくれて構わない。
上位神たちはこの世界の特定の場所に眠っている。
我らはその場所に向かい、上位神を目覚めさせる為に行動をしているんだ。
――――――。
「なるほど、大体の経緯はわかった。 とはいえ、まだわからぬことだらけだ。
僕としても他にも色々と説明してほしいが・・・」
「彼女が気になるか?」
僕は頷いた。
これ以上ここに留まっていてはいつ彼女が目覚めるかわからない。
そうなる前に早くここから立ち去らねばならない。
「もう一度荷台を作らなきゃな・・・黒フードくん手伝ってくれる?」
そういうと頷いて周囲の物質を集め始めた。
なるべく死体を避け、残っているレンガなどを拾ったりしてバギーの所まで持っていく
「疑問。 この物質は何か?」
球体の方がバギーを目にして質問してきた。
「これはバギーという乗り物だ。 そういえば君ら浮いてるけど移動速度とかは早い方なの?」
「問題ない。 飛行する生物よりも遥かに素早く動ける」
「わかった」
僕はパンドラシステムを起動させ、レンガなどの物質を分解させ、再度荷台を作り上げる為に組み上げていく。
そしてあっという間に荷台が出来上がり、皆を乗せていく
「驚いたな・・・これほどの力があるとは・・・」
「そう言っても、この力にはデメリットがあってね。 あんまり無理しすぎると脳が焼けるんだ。 文字通りにね」
「ふむ・・・巨大な力ほど重い荷が掛かる訳か・・・」
「そういうこと。 それじゃとっとと行きますか!」
エンジンを掛け、バギーを動かす。
通り過ぎる黒墨になった村を見つめながら、僕は静かに心の中で黙祷を捧げた。
理不尽なことで奪われてしまった住民たちよ。
安らかに眠れることを祈る。
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