2話

 次の日。

 快斗は女性を家庭内裁判所に呼び出した。

「こちらが弁護士のユキさんです」

 人間の姿になったユキちゃんが眼鏡をかけ、いかにも有能そうな弁護士風になっていた。

「相手の男は呼び出せましたか?」

「ええ、はい」

 快斗は今日の朝、男の家に内容証明を投函してきた。

 さすがに、ここまでしたら無視はされないだろう。

 しばらくして、男が到着した。

「さあ、レッツ裁判」

 これは正式な裁判ではない。

 天使の力で裁判所を貸し切って行われる大人な、ままごと。

 快斗は本当の裁判の形式なんて知らない。

 ドラマで見たことのあるシーンを、それっぽくやっているだけだ。

「被告人に罰金100万円の刑に処す」

 

「これで、少しはすっきりしましたか?」

 裁判が終わり、書面で罰金刑の支払いを確定させた後、りんねは女性に聞いた。

「分かりません……。どんなにお金をもらっても、もうあの子は帰って来ないのだから」

「じゃあ、これで丑の刻参りは止めてくれるよな?」

 快斗は一番の本題を切り出した。

「分かりません……」

「おいおい、それじゃあ困るぜ」

「すみません。でも彼を許せない気持ちは変わらなくて……」

「人を呪わば穴二つだぜ? あなたに呪いが返ってくることもある。だから、俺との約束だ。丑の刻参りは止めろ」

 快斗は強い口調で言った。

「分かりました……」

 女性は消え入りそうな声で答えた。


 女性と別れた後。

「あの人、大丈夫かしらね?」

「さあな。俺は伝えるべきことは伝えた。それでも止められないっていうなら、もう俺にはどうすることもできない」

 そこまで対象者に肩入れはしない。

 ドライに行かないといけないこともある。

 りんねは、また一つ学んだ。


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