丑の刻参り

1話

 天界、コノハの部屋。

「今回の任務は、ある女性に丑の刻参りを止めてもらうことだ」

「今時、丑の刻参りなんて古風なことするじゃないか」

 快斗が変に感心したように言った。

「平安時代から続く呪法よね。鉄輪の能が有名ね」

「そう。よく勉強してるな」

 コノハがりんねの頭を撫でる。りんねは恥ずかしいのか、うつむき加減になる。

「りんねさん、褒められて照れていますね」

 ユキちゃんの言葉に、りんねは顔を赤くする。

「て、照れてないっ!」

「で、はい、これ場所の資料ね。じゃ、いってら~」

 コノハは快斗とりんねを、手を振って送り出した。


「ここが丑の刻参りが行われてる森ね」

「おーい、こっちに五寸釘と藁人形あったぜ」

 ハリ太郎が手招きをする。

「うわ、マジか。実物初めて見た」

 快斗が藁人形を回収する。

一緒に打ち付けられていた写真を見ると、チャラそうな男の姿が写っていた。

「浮気でもされたんかねえ」

「とりあえず丑の刻参りをしている女性に話を聞かないことには始まらないわ」

「だな。丑の刻、午前2時くらいまで待つか」


 待っている間、快斗とりんねはエンジェルルームで学校の宿題をしたりしていた。

「この前のテスト、また一位だったな」

 りんねは中学に上がってからのテストで学年一位を取り続けていた。

「あなただって二位じゃない」

「一位の方がすげえよ。俺けっこう頑張ったのに、お前はもっと頑張ってるってことだよな」

「ま、まあ宿題と、少しの復習だけよ、やってるのは」

「へえ、それだけで一位取れるのか、尚更すげえな」

 素直に褒められて、りんねは顔を真っ赤にして照れている。


 午前2時。

 快斗達は茂みの中に隠れて、女性が現れるのを待った。

 数十分待って、その女性は現れた。

 白装束も着て、準備は万端だ。

 女性が藁人形に釘をを打ち付けようとした時だった。

「はーい、ストップ」

 快斗が女性の腕を掴んで、止めた。

「何よ、アンタ達!」

「あ~、暴れないで。話なら聞くから」

「アンタ達みたいな子どもに、私の気持ちは分からないわよ!」

「まあ、あなたの半分くらいしか生きてなさそうな俺だけど、話聞くくらいは出来るから」

「辛いことがあったのでしょうね。話してみて下さい」

 りんねも女性に寄り添って話しかける。

「えっと、私には付き合ってた人がいて、でも、その人は既婚者で、私が浮気相手だったの。六年も騙されてた。私、子どもも堕ろしたのに……」

 切々と語る女性には悲壮感が漂っていた。

「普通に訴えたら勝てる案件だぞ、それ。何で呪いの方向に行ったんだ。極端過ぎるだろ」

「訴えて勝てる? 私が浮気相手なのに?」

「確かに一番の被害者は奥さんよね」

「六年間騙されていたということで男を訴えるのはどうだ?」

「訴えることが出来るのなら訴えたいけど……」

「大丈夫! 俺に策がある」



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