2話

「ノインが逮捕⁉」

 次の日、警察から事情を聞いた葉月達は驚く。

「ええ、正確には怪盗エンジェルですが」

「じゃあ、本物のノインは何処へ?」

「さあ、何処かで道草でも食ってるんじゃないですか」

「もうちょっと、ちゃんと調べなさいよ!」

 

 取調室。

「さあ、エンジェル。今まで盗んだ物を返せ!」

「だーかーらー、俺はエンジェルじゃないって言ってるじゃないですか!」

 コイン警部が詰め寄る。

「嘘を吐くな!」

「いや、だから、俺は違うんだって!」

 他の刑事が部屋に入ってくる。

「面会者が来ています」


「何で逮捕なんかされてんのよ!」

「俺だって知りたいよ!」

 モモちゃんとノインが、わあわあ言い合っている横で、葉月は考えていた。

「つまりは本物のエンジェルを連れてくれば、ノインは解放されるってこと?」

「まあ、確かに、それはそうだが……」

「だったら、連れてくるよ! この名探偵Tに任せなさい!」

「名探偵T?」

「今、考えたの、今。Tは天間のTね!」


「なんて大口叩いてたけど、どうするのよ」

「まずは現地調査から」

 そう言うと葉月達は、博物館へ向かい、館長に話を聞いた。

「警備は厳重だったはずなんです。オパールの指輪が入った展示ケースも、そう簡単に開けられるはずもないんです」

「その警備の中を怪盗エンジェルはすり抜けたと」

「エンジェルは本当に飛んだのか?」

「ええ。ワイヤーでもなく、本当に飛んでいました」

「分かった! エンジェルは魔法使いだよ!」

「確かに、魔法使いなら飛べるのも、展示物を取り出すのも簡単にできそうね」

 普通なら突飛に思える推理だが、この世界には魔法が存在するため、その推理も成立してしまうのだ。

「そんな魔法使いを、どうやって捕まえるんだ?」

「こっちも魔法を使って捕まえる!」

「それがいいわね。で、エンジェルをおびき出す方法は?」

「館長! オパールの指輪並みに貴重な展示物ってある?」

「あ、はい。今は収蔵庫にしまってありますが、エメラルドの首飾りというのがあります」

「じゃあ、それをオパールの指輪の代わりに展示して、広告も作って」

「わ、分かりました」


 エメラルドの首飾りが展示され、数日が経った頃。

「怪盗エンジェルから予告状が届きました!」

「ていうか、この時点でノインは釈放されてもいいんじゃ?」

「分かった。ずっと取り調べ室にいた彼に、予告状を出すことは不可能。彼を釈放しよう」


「娑婆の空気が美味いぜ!」

 何日かぶりに解放されたノインは、思い切り伸びをして、警察署から出る。

 迎えに来た葉月達に、お礼を言い、戻ってくる。

「で、どうするんだ?」

「私に任せて!」


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