勉強会

1話

夏。現世にて。

「ねえねえ、次の期末テストどうする?」

「どうするって普通に勉強するしかないでしょ」

「でも中学になってから難しいところ増えたよね」

「それは、あなたが異世界にばっかり入り浸って授業をダミーに任せてたからじゃないの」

 ダミーとは異世界に行っている者が行方不明ということにならないよう、本人っぽく振舞ってくれる人形のことだ。

「だって勉強より異世界の冒険の方が楽しいんだもん」

「せめて義務教育までの勉強は普通にできるようになりなさいよ」

「へーい」


「あら、快斗、おはよう」

 廊下で朝学習のプリントを運んでいる少年に声をかける。

「快斗? あ~~~っ!」

 学校で会うのは初めてだった。

 快斗は「げ」と言って顔を逸らす。

「あの快斗だよね! 天使の!」

「あまり学校で話しかけるな」

「何で? 仲良くしようよ」

「五月蝿い」

「ていうか、今までよくエンカウントしなかったわね」

「快斗、それ朝学のプリント」

「ああ。今日は数学だ」

「私も、取りに行ってくるわ」

 二人は共に学級委員だった。

「りんねとは仲良さそうなのにぃ」

「学級委員の話し合いがあるからな」


「おまたせ。何か話してた?」

「特に生産的な話はしてない」

「あっ、そうだ! 皆で勉強会やろうよ!」

「勉強会?」

「期末テスト対策とかさ! りんね、すごいんだよ! この前の中間テスト、学年一位だったんだから」

「それを言うなら、ここの快斗は二位よ」

「すごーい! ツートップ!」

「次は絶対負けねえ」

「じゃあ、快斗の家で勉強会ね!」

「勝手に決めるな!」

「皆にも言っとく!」

「皆って誰だよ!」

「漫画アニメ同好会の唯ちゃんと島田君」

「初対面だな!」

「いいじゃん、異文化交流!」

 何やかんやで押し切られてしまい、快斗は部屋を提供することになった。


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