2話

「今回の任務はゾンビの殲滅だ」

「言い方が物騒ね」

「じゃあ言い直してやろう。ゾンビの浄化」

「で、結局どういうことよ」

「とある国が実験で生物兵器のゾンビを開発した。そのウイルスが漏れて、国民丸ごとゾンビになっちまった訳」

「生存者は?」

「いない」


ノイン達にゾンビのことを説明すると「そんなB級映画みたいなことあるんだな」という答えが返ってきた。

「で、そのゾンビの中に俺達も入っていく訳だ」

「ゾンビはヘッドショットでないと倒せないから、全員、銃装備よ」

「頭狙えるかなあ」

「まあ頑張りなさい」


「きゃああああ」

 悲鳴が聞こえた。

 女の子がゾンビに襲われていた。

「助けないと!」

 シアンがゾンビを遠距離射撃で倒す。

 頭を撃たれたゾンビは、もう動かない。


「マロンちゃん! マロンちゃん!」

 友達だったのだろう、女の子はゾンビを揺すって名前を繰り返し呼んでいる。

「生存者はいないんじゃなかったの?」

「でも、あの子は?」

「ゾンビって感じには見えねえな」

「そうか、彼女が女王感染者!」

「何それ?」

「ゾンビの感染源。自分はゾンビのように見せずに周囲を感染させる」

「そうか、もう私もゾンビだったんだ……」

「そうね。だから、あなたも浄化対象よ」

「浄化?」

「この国は、もう国民皆がゾンビになっている。もう浄化させるしかない。浄化っていうのは魂を天に送ること」

「死ぬってことですか……?」

「まあ、分かりやすく言えば、ね」

「そうですか」

「ねえ、何とかならないかな? ゾンビを治す薬とかさ」

「そんなものはない。ゾンビからは治らない」

 それは厳しい真実だった。

「分かりました。浄化お願いします。覚悟は出来てますから」

 少女は決意の込もった眼差しになった。


 ××国上空。

 葉月は国全体に魔法陣を展開させ、聖水を垂らした。

「浄化」


「一度に大量の魂が失われた時は魂管理局に電話するのよ。早めに回収お願いしますって」

 魂管理局は死神達のいる冥界に属する。


「これで良かったのかな……?」

「良かったのよ。そう思うしかないわ」




 ○○年×月×日。

 とある国が滅亡した。



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