3話

「それで私は一体、何をすればいいのかね?」

「特別なことはしなくていいわ。葉月と一緒にいるだけで守護されてるってことになるから」

「そうか」

「ああ、そうだ。今日の宿を取ってくれない?」

「分かった。あそこのホテルでいいかね?」

 そこは高級ホテルであった。ノインの財力では絶対に届かない。

「部屋はどうする? 別でいいかね?」

「ええ」

 ノインの場合は野宿、葉月達はエンジェルテントが定番だった。稀に安宿が取れても、全員一緒の部屋で料金を浮かせていた。

「ディナーの時に出て来てくれ」

「分かったわ」


 ディナーは高級ホテルにお似合いのコース料理だった。

 葉月はまごつきながらも料理を口に運んでいる。


「美味しかったわね、あの料理」

「えっと……」

「どうかしたの?」

「あんまり味がしなかったな。料理マナーをちゃんとしようと思ってたから」

「そう」

(ノインの料理の方が美味しかったかも。何も考えずに食べれたから)

 葉月は、そう思いながら。ふかふかのベッドの上で眠った。


 次の日。

「おはよう、葉月」

「おはよう、モモちゃん」

「やっぱり、ふかふかのベッドは良いわね」

「そう、だね」


「絵のモデルになってくれないか?」

「え、わ、私⁉」

「ああ。本物の天使の羽だ。描きたくなってきてしまってね」

「じゃあ、よろしくお願いします」 


 描き上げた絵は抽象的で、何となく人間っぽいのが分かる程度だった。

「げ、芸術的ですね」

「そうか! 分かるか! ありがとう!」


 午後はおしゃれな店で、アフタヌーンティーで優雅に過ごした。

「こう話し相手がいるというのも良いな」

「今までは、ずっと一人旅だったの?」

「ああ」

「だから今がとても楽しいんだ。葉月、モモちゃん、ありがとう」

 葉月は胸がチクリと痛んだ。


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