第121話 二人の想い
俺が叫ぶように真白へ想いを伝えると、その後すぐに花火は終わり、夜空に咲いた花火たちは少しずつ落ちるようにして夜空へと消え去っていった。
真っ暗になった夜空から真白の方へと視線を移すと、流石に今の叫ぶような声は真白の耳に届いていたようで、花火のように顔を赤らめている。
そんな真白の表情を見て、ふと我に帰った俺が周囲を見渡すと、人数は少ないものの花火を見ていた観客たちの視線が俺たちの方へと向けられていた。
俺たちに視線を送る人の中には、ガッツポーズをして俺を応援してくれる人や、あらまぁと手で口を押さえて驚きを見せている人もいる。
そんな人たちを見て、自分がかなり恥ずかしい行動をとってしまったことを理解した。
これまでの俺だったら絶対にしないであろう相当恥ずかしい行為だ。
そう理解したにも関わらず恥ずかしさや後悔という感情が込み上げてこなかったのは、真白と出会って成長したからだろう。
人目を憚らずに大声を出して告白するなんて俺らしくない。
でもその俺らしくない告白こそが、俺と真白が築き上げてきた成果なのだ。
真白と出会う前の俺なら叫ぶようにして告白をすることなんてできなかっただろうし、そもそも誰かに告白するなんて考えられていなかったはず。
真白と出会っていなかったらきっと今も亜蘭の陰に隠れて、亜蘭と女子の仲介役をしていたことだろう。
だが今の俺は、真白と出会い一人前の男になった。
そして自分の気持ちを真白に伝えられるまでに成長した。
あとは真白の返答がイエスであることを願うばかりである。
「えっ、えっと……そのっ、ありがとう。そう言ってくれてすごく嬉しい」
「お礼を言うのは俺の方だよ。真白はこの先二度と出会えないって言っても過言じゃないくらいの最高の女の子で、そんな女の子に想いを寄せられるだけでも幸せなんだ。それなのにこうして一緒に花火まで見られるなんて、俺の方からお礼を言わないと気が済まないよ」
「わっ、私そんなに最高の女の子じゃないと思うけど……」
「いや、最高の女の子だ」
「--っ」
俺の言葉を聞いて固まってしまった真白は、俺に何と返事をするか考えているようだった。
俺への気持ちが明確に決まっているのだとしたら、俺の告白に対する返事を考えるのにここまで悩むことはないはず。
となると俺の告白に対する真白の返事はノーである可能性が高いかもしれない。
……でもまあそうなったらそうなっただ。
俺は自分の気持ちを伝えられたのだから、仮にフラれたとしても後悔は無い。
「ねぇ颯一君」
「なんだ?」
「……私と付き合ったら大変だと思うよ? 少しずつ改善されてきたとはいえ男の人が苦手だったり、お母さんもおばあちゃんもクセが強いし、私と付き合っても大変なことしかないと思うよ? それでもいいの?」
「ああ。それでもいい。全てひっくるめて俺は真白が好きなんだから」
俺は真白からの質問に、再度自分の素直な気持ちを伝えた。
「……ごめん。自分に自信がなくて変なこと聞いちゃった」
そして真白は覚悟を決めた顔を見せる。
「--私も、全部全部ひっくるめて、颯一君が大好きですっ」
その瞬間、俺たちの周囲にいた人々の歓声が花火のように響き渡った。
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