第120話 最後の告白

 俺はついにこれまで胸の奥にしまい込んできた真白への想いを真正面から伝えた。

 それなのに最悪のタイミングで今日一番の大きな花火が打ち上がり、俺の告白の声と被ってしまった。


 俺の言葉は花火の音で真白に届がなかっただろうか……。


「えっ、今なんて言った? ちょっと花火の音が大きくて聞こえなかったんだけど……」


 最悪だ。


 花火の音で告白が聞こえないというシチュエーションはラブコメではお決まりの展開になっているが、まさか自分が一世一代の告白をした時に、その場面に遭遇するなんて思っていなかった。


「あっ、いやっ……。なんでもない」


 今の失敗で完全にタイミングを見失ってしまった俺は、再び無言になってしまい花火は少しずつクライマックスに近づいていく。


 まずい、このままでは花火が終わってしまう。

 早く俺の想いをもう一度真白に伝えなければ、花火が終わるまでに俺たちの関係に決着をつけることができなくなってしまう。


 俺の告白が花火にかき消されたタイミングで真白から「今なんて言った?」と訊かれていたのだから、あの時もう一度「真白が好きだ」と伝えていればそれで終わった話なのに……。


 まあ俺の気持ちを伝えたら俺たちの関係が終わってしまう可能性もあるんだけど。


 そんなことを考えていると、花火の打ち上げが中断され、一気に静まり返った。

 時間的にもこれはクライマックスに向かう前の最後の小休憩だ。


 大体どこの花火大会でも、クライマックスの前は一度打ち上げを中止して、そこからクライマックスに向けて一気にボルテージを上げていく。

 この休憩の時間に真白へ想いを伝えなければ、クライマックスに打ち上げられる花火の音で俺の告白はかき消されてしまうことになるだろう。


 そう考えた俺は急いで真白に声をかけた。


「……真白」


「ん? どうかした?」


「俺、真白のことがっ--」


 俺が再び真白に想いを伝えようとした瞬間、神様のいたずらかのようにボンッという小さく鈍い音が聞こえてきて、クライマックスの始まりを告げた。

 こうなってしまっては、花火が終わるまでに想いを伝えることなんて……。


 そう弱気になってしまった俺は、そこから再び無言になり、クライマックスに向かっている花火大会をただ眺めることしかできない。


 ……いや、ここで普通のラブコメみたいに何もしなければ、俺と真白の関係は前進しない。

 みんなにここまでしてもらって、諦めるわけにはいかないだろう。


 少しずつボルテージが上がっていき、これが最後の最後だという数の花火が打ち上げられ、これが完全にクライマックスだと思った俺は思いっきり息を吸った。


「真白ぉ!」


「えっ、どうしたの急に大声出して⁉︎」


「俺はぁぁぁぁ! 真白のことがぁぁぁぁ! 大好きだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 クライマックスを迎え、無数に打ち上がる花火の轟音を切り裂くような大声で、俺は真白への想いを叫んだ。

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