第119話 背中を押して

 真白が突然頭を俺の肩に預けてきたことでどう反応していいかわからなかった俺は無反応になってしまい、再び沈黙の時間が流れた。

 なぜ真白は俺の肩に頭を預けてきたのか、そしてどのタイミングで告白をすればいいのか、様々な考えが頭の中を駆け巡り、耳の鼓膜を大きく振動させながら咲く花火の大きな音さえ聞こえないような状況となっている。


「ねぇ、颯一君」


「ん? どうした?」


「私ね、颯一君に会えて本当によかった」


「--っ」


 真白の言葉を聞いた俺は、一瞬で我に帰った。


 真白に想いを伝えなければならない、上手く伝えられらだろうか、伝えても上手くいかないのではないだろうか--そんなことばかりを考えて、真白が今何を考えているのかということを考えられていなかった。


 真白は俺に会えてよかったと言ってくれているが、俺だって当然真白に会えてよかったと思っている。

 真白に出会えていなかったら困った時に俺を助けてくれる最高の友達に会えることもなかっただろうし、俺自身が変わることだってできなかっただろう。


 先程までは不安ばかりだったが、これまで真白と過ごしてきた期間のことを考えれば、今真白が何を考えて、俺と一緒にいることをどう思ってくれているかくらい理解できた。

 それを理解した瞬間、騒がしかった俺の心は一瞬で落ち着いたのだ。


 最後の最後まで真白に背中を押される形になってしまうが、これはこれで俺たちらしい気もする。

 終わりよければすべてよし、なんて言葉もあるくらいなので、最後くらいは男らしく完璧に決めてやろう。


「俺も会えてよかったよ。もう真白無しの人生なんて考えられないと思うくらいに」


「そっ、そんなにオーバーに言ってくれても何も出ないからねっ」


 そう言って俺の方から視線を逸らす真白に追撃するように言葉を続けた。


「いや、オーバーでもなんでもないよ。真白がいなかったら俺は今でもずっと亜蘭に引っ付いてるだけのくだらない男だったから」


「そう……なんだ。嬉しい。ありがとう」


 よし、これで完璧に舞台は整った。


 俺たちにとって大切な花火を二人で見ているという状況も、俺たち以外に花火を見ている人が少ないという状況も、想いを伝えるための雰囲気作りも、全てが完璧になりやることはもうあと一つだけ。


 嘘偽りの無い俺の本心を、真正面から真白にぶつけるだけだ。


 そして意を決した俺はついに口を開き、想いを伝えた。


「真白、俺、真白のことが--」


 そう俺が真白に伝えた次の瞬間、今日一番大きいサイズで、これまでのどの花火よりも一番大きい音の花火が上がった。




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みなさま、ここまでお付き合いいただきありがとうございます‼︎


この作品は残り数話で最後を迎えます。


多くの皆様に読んでいただいたこの作品を最高のものにするべく、残り数話も最後まで本気で描き切ります!


そして次回作については、また近況ノートの方で報告いたしますので、引き続きよろしくお願いしマァス‼︎

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