第116話 築いてきたもの
俺は自分の目を疑った。
ここにはいるはずのない、いてほしくない亜蘭たちが目の前にいたのだ。
今頃花火大会を楽しんでいるはずの亜蘭たちがなぜこんなところにいるのだろうか。
亜蘭たちには迷惑をかけないようにと、『一緒に行こうか?』と言ってくれた三折に大丈夫だと告げて俺一人で真白を迎えに行きここまで運んできたのに、結局亜蘭たちを巻き込んで迷惑をかけてしまったのでは仮に真白と花火を見れたとしても意味がない。
「なんで亜蘭たちがここに⁉︎ 花火大会は⁉︎」
「花火はもちろん楽しみだったんだけどな。颯一たちのこと考えてたら花火大会どころじゃなくてさ、みんなに様子を見にいってみないかって伝えたら、みんな同じ気持ちだったみたいでさ」
「なんで来たんだよ……。亜蘭たちが花火大会を楽しめなかったら意味ないだろ!」
亜蘭たちが来てくれたことを素直に受け止めるとしたら、かなり助かると言うのが正直な気持ちだ。
このまま俺一人では、真白との花火大会を最高の思い出にすることはできないだろうから。
しかし俺が亜蘭たちに助けてもらったとしたら、俺たちは花火大会を楽しめたとしても、亜蘭たちは花火大会を楽しむことができなくなったしまう。
「ねぇ、颯一君」
「……真白?」
俺の言葉を聞いて最初に口を開いたのは真白だった。
「多分さ、国平君たちも颯一君と同じなんじゃないかな」
「同じ?」
「うん。私もさ、颯一君に迷惑をかけないようにと思ってたから颯一君には花火大会に行かなくなった理由を話さずに花火大会に行く予定を断ったの。でもね、結局颯一君は私を迎えに来てくれて、私と一緒に花火大会に行きたいって言ってくれたでしょ? それと同じだと思うんだよ」
そう言われて亜蘭たちの顔を見ると、その通りだと言わんばかりに全員が頷いた。
そして俺は気付いた。
真白の言う通り、みんなは俺が真白に思っていたのと同じことを思ってくれているのだろうと。
きっとみんな自分たちが花火大会を楽しんだとしても、俺と真白が花火大会を楽しめなかったのでは最高の花火大会と言えないと思ってくれているのだ。
自分が真白に説教のようなことを言っておいて、全く同じことに自分が気付けていなかったのだから世話ないな。
ここは自分の仲間に迷惑がかかるからと遠慮をするのではなく、自分の仲間だからこそ迷惑をかけるべきところなのだろう。
「……そうか。真白に偉そうに言っておいて俺自身が気付けてなかったんだな」
「ああ。そうだ。颯一が迷惑をかけたくないと思ってたのと同じくらい、俺たちは颯一と真白ちゃんがこの花火大会を最高の思い出にできることを望んでる」
「亜蘭……」
「そうよ。私も公治もこのメンバーには恩があるんだから」
「そうだよ颯一君。君のおかげで僕たちは今みんな幸せなんだから」
「……みんなごめん。力を貸してくれ」
こうして俺は最高の仲間達に文字通り肩を借り、目的地である穴場へと歩き出した。
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