第115話 仲間たち

 道路が渋滞しておりタクシーが全く動かなくなってしまったことで、俺たちは仕方がなくタクシーを降りた。


 こうなってしまったら俺にできることはただ一つ。

 真白をおんぶして、死に物狂いで花火がよく見える穴場まで歩いて行くことだけだ。


 他に何か方法はないかと考えもしたが良い案は思い浮かばず、考えている時間がもったいないと考えてすぐに真白をおんぶして歩き始めた。


 そして真白をおんぶして歩き始めてから十分ほどが経過したが、やはり俺の体は限界を迎えている。

 真白を持ち上げている腕はもちろん、足や腰にも相当な負担がかかっており、腕は震え始めている。


「颯一君、無理はしないでね? かなり遅いスピードなるけど歩けないわけではないから。花火に間に合わなくなるかもしれないけど……」


 真白は俺の腕が震え始めたことを感じ取り、俺を気遣うような発言をしてくれている。

 おんぶをして歩けば残り十五分ほどの道のり、それすら歩ききれないような非力な自分が情けなく、真白に申し訳なさを感じていた。


 明日から筋トレしよう。絶対。


「……いや、大丈夫。もうあと少しだしさ。本会場に向かう大きな道からちょっと逸れたから人が少なくなって歩きやすくなったし」


「そう? ならいいんだけど……」


 真白を安心させるためにそんな発言をしてから、更に十分程歩き続け、本会場まで残り五分と言うところまでやってきた。


 ここまでやってこれただけでも自分を褒めたいが、限界突破して真白をおんぶして歩き続けた俺の体は悲鳴を上げており、絶対に真白をおんぶしたまま目的地までたどり着いてやるという俺の気持ちとは裏腹に、その場にしゃがみ込んでしまった。


「颯一君⁉︎ 大丈夫⁉︎」


「……だっ、大丈夫。もうあと少しだから、あと五分くらいならまだ頑張れるはずだ」


「本当に? もうすぐ花火始まっちゃうけど私もう歩くよ? 少しでも颯一君と二人で花火が見れたら私は満足だから」


「いや、それじゃあダメだ。ダメなんだ。だからもう一回、おんぶさせてくれ」


 俺は真白を目的地である穴場まで連れて行くことで、真白に相応しい自分になれると思っている。

 そうなれたとしたら、真白に想いを伝えようと考えているのだ。


 だから例え絶対に無理だとしても、まだ諦めるわけにはいかなかった。


「う、うん……」


 そして再び真白をおんぶしようとしたその時、力が入らなかった俺は真白の重さに負けるようにして地面に倒れ込んでしまった。


「颯一君⁉︎」


「ごっ、ごめん……。本当にごめん。絶対真白を目的地まで連れてくって決めてたのに、絶対二人で花火を見るって決めてたのに、もう限界っぽい……


「いいよそんなの! 本当にごめんね、こんなタイミングで怪我なんかしちゃって迷惑かけて……。とりあえず歩こう。途中からだったとしても私は颯一君と二人で花火が見たい」


 くそっ、くそっ。絶対花火の開始に間に合わせるって決めたのに。このままなら間に合うと思ったのに……。

 自分が情けなくて頭をどこかに打ち付けたくなるような気分だが、今はとにかくどんな形でも真白と二人で花火を見るために歩かなければ。


 そう考えてしゃがみ込んだ状態から立ちあがろうとしたものの、体に力が入らない。


 これはもう終わってしまったかもしれないな。


 そう思った矢先のことだった。

 

「窪っち、お疲れ」


「えっ--」


 俺が視線をやる先にいたのは、亜蘭と三折、そして王子と姫路だった。

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