第108話 成長
「もしもし! 颯一ですけど!」
琥珀さんからの電話に応答した俺は、先ほど三折の言葉を遮って質問した時と同じ勢いで電話に出た。
『突然ごめんね。真白のことについてなんだけど……その様子だと待ちに待ってましたって感じね』
間違いなく真白の話だろうとは思っていたが、琥珀さんはやはり真白の話をするため俺に電話をかけてきたようだ。
「待ちに待ってましたし浅いくらいですよ。その話がずっと聞きたかったんですから。真白の話をしたいってことは、もう僕と真白が一緒に花火大会に行く予定だったことも、その予定を真白に断られたことも全部知っているんですよね?」
『ええ。勿論よ。そして今から颯一君には真白が花火大会を断った理由を話そうと思ってる。真白からは花火大会が終わるまで誰にも言わないでって言われてるんだけどね……。だから颯一君に話すかどうかすごく悩んだの。でも花火大会に行けないって決まった日からの真白ったら完全に元気をなくしちゃって親としては見ていられる状態ではなくてね』
真白の問題が解決する前に琥珀さんが俺に電話をかけてきたということは、琥珀さんに解決できるような類の問題ではないということなのだろう。
そもそも琥珀さんに解決できる問題なら、真白から花火大会の予定を断られることもなかっただろうけど。
琥珀さんに解決できない問題となればそれはかなりの難題になるかもしれないし、俺に解決できるのかどうかはわからない。
それでもこのまま行動をおこさずに真白を放っておくことはできなかった。
「任せてください。僕にはどうにもできないことかもしれませんが、それでも僕は真白の問題を解決して一緒に花火大会に行きたいと思ってます」
自分の口から『任せてください』という頼もしい言葉が出てきたのが意外だった。
今までの俺なら怖気付き、問題を解決しようとする前に目の前の問題から逃げ出していたはずだ。
真白と出会い、地味で暗く控えめで頼りない自分を変えることができたからこそ、今のような発言ができたのだろう。
そうでなければ全ての責任を自分が背負うかのような発言は絶対にできていない。
自分以外の人間から見たら、以前から変わっていないと思われるかもしれないが異論は認めない。
女子から人気の高い亜蘭にくっつき、亜蘭の陰に隠れ居心地のいい場所で毎日を過ごしていたあの頃の俺とはもう違うのだ。
今の俺は自分の力で問題に立ち向かい、死に物狂いで解決することで、誰かを、真白を救えるような人間になりたい。
「……あのね」
それから琥珀さんは真白が三折との予定や、俺との花火大会の予定を断った理由を話し始めた。
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