第107話 頼みの綱

 花火大会を明日に控えた俺は、何をすることもできず自宅で三折からの連絡を待っていた。

 しかし、一向に三折から連絡がくる様子は無く、悶々とした時間を過ごしていた。


 真白から花火大会を断られた理由が判明していないうちは、変に動いて状況を悪化させない方がいいという判断でずっと家に閉じこもっているのだが、それもう我慢の限界。

 花火大会が明日に迫っているという状況で、これ以上黙ってじっとしているわけには行かない。


 そんなことは無いと思うが、このまま三折から連絡がないままなんてこともあり得ない話ではない。

 そうなったらもう完全に手遅れで詰みの状況になってしまう。


 俺は焦ってこの状況をどうするべきなのか、改めて検討し始めた。


 その時、スマホが震える音がきこえてきて、画面を見ると電話をかけて来たのは三折だった。


『あ、もしもし窪--』


「何かわかったのか⁉︎」


 三折からの電話に応答した俺は、三折の言葉を遮るようにして聞いた。


『そう焦らなさんなや窪っちさんや』


「焦るに決まってるだろ⁉︎ もう花火大会は明日なんだぞ⁉︎」


 焦るなと言うのなら、もう少し早く連絡をよこせなかったのかと言いたくなる。


『うーん……そうだよねぇ。それなのに本当に申し訳ないんだけど、シロシロ、どれだけ聞いても理由を教えてくれなかったんだよね。両手じゃ数え切れないくらいの回数は訊いてみたんだけど……』


「--っ、そうか……。すまん、協力してくれてありがとな」


 真白からみたら親友でどんな話でも気兼ねなく話せる仲である三折が、改めて真白になぜ遊びを断ったのかを訊いたというのに、それでも理由を話さないとなるともうどんな理由で真白が俺と三折との予定を断ったのかは見当もつかない。


『いやいや、結局何もできてないし……。こうなったら直接家に行ってみるのもありかもね』


「……そうだな。ちょっと考えてみるよ」


 そう言って俺は三折との電話を切った。

 考えてみるとはいったものの、もう思い浮かぶ策としては真白の家に突撃することくらいしか思い浮かばない。


 直接家に行ったら真白に迷惑がかかるかもしれないし……なんて弱気になっていた俺だが、もし真白が何かしらの理由で俺のために花火大会を断ったのだとしたら、絶対にこのままでいいはずがない。

 花火大会が終わった後で花火大会に行けなくなった理由が俺のためだったとしったら後悔してもしきれないだろう。


 よし、やっぱり突撃あるのみだな。


 そう考えて服を着替えて家を出ようと玄関の扉を開き外に出たその時、再び俺のスマホに電話がかかってきた。

 覚悟を決めて真白の家に向かおうとしていた俺に電話をかけてきたのは、琥珀さんだったのだ。

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