第105話 言えない理由
『本当にごめんっ。花火大会いけなくなっちゃった』
突然真白からかかってきた電話でそう告げられた俺は、頭が真っ白になってしまい何も考えられない状態となってしまった。
とはいえ真っ白になったままこの電話を終わらせるわけにはいない。
まずは花火大会に行けなくなってしまった理由を聞かなければ。
「そ、そうなのか……。何か予定が入ったとかか?」
『いや、そういうわけじゃないんだけど……』
予定が入ったわけではないとなると他に考えられるのは、身内の不幸とか、流行病にかかってしまったということくらいだろうか。
そう思って真白に訊いてみたが、そのどちらでもないと返答された。
だとしたら花火大会を断る理由として一体他にどんな理由があるのだろう。
「じゃあ何があったんだ?」
『……ごめん! 私が行けないせいで颯一君が花火大会に行けないのは嫌だから、咲良たちと一緒に行ってきて! 本当にごめん!』
「えっ、ちょっ……」
そう言って真白は花火大会に行けなくなったしまった理由を語ることなく電話を切ってしまった。
理由を伝えずに突然電話を切るということは、何か俺に伝えられないような理由ができてしまったのだろうか。
突然電話を切られてしまい何もわからない状態だったので、その後何度も電話をかけ直したのだが真白は応答してくれない。
勿論何回かメッセージも送ってみたが、送りすぎも気持ち悪いと思われる可能性があるのでそこは自制を効かせて真白からの連絡を待っていた。
そして一時間ほど経過してから『ごめん、夏休み終わるまではもう会わない』とメッセージが送られてきた。
花火大会自体が夏休みが終わる直前なので、夏休み終わるまで会わないとは言っても真白と会わない期間はたった数日で、夏休みが終わり学校に出ていけばすぐに真白と顔わ合わせることにはなる。
それでも理由も知らずにこのまま花火大会に行けなくなってしまうのは納得できない。
せめて理由を聞いて、自分でその理由ならどうしようもないと納得してから花火大会に行くのを諦めたい。
まあその理由が『別の男と一緒に行くことになった』とかだったらもう立ち直れる自信ないけど……。
いや、真白はそんな理由で花火大会を断るような人間ではない。
俺の勝手な予想ではあるが、真白は俺に迷惑をかけないために俺に理由を言わずに花火大会に行かないという選択をしたのではないだろうか。
そう思えるのはこれまで俺たちが築き上げてきた関係があるからこそで、その関係を俺はそれ以上のものにしたいと思っている。
……うん、諦めるのはまだ早い。
まずは行動しなければ。
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