第98話 決意の崩壊
みんなで寿子さんと琥珀さんが作った晩御飯を食べた俺は、その後真白がお風呂に入り終わるのを待ってからお風呂に入り、湯船に浸かり今日の疲れを癒していた。
真白から「先にお風呂入っていいよ」と言われたものの、俺が使った後の汚いお風呂に入らせるわけにはいかないと考えた俺は「大丈夫、俺は後でいいから先に入ってきてくれ」と言って真白が入った後でお風呂に入った。
そんな会話をしている俺たちの後ろで「一緒に入ればいいのにねぇ」なんて言葉が聞こえてきたが、どうせ敢えて聞こえるくらいの大きさで言っているに違いないので、それはもう聞かないフリをした。
湯船に浸かり心身ともに癒された俺だったが、今になって思ったのは、あの時は俺が「俺は後でいいから」と言ったのが間違いだったかもしれないということ。
あの言い方では俺があたかも真白の使った残り汁に入りたいと思っていたかのように思われてしまったかもしれない。
真白はそこまで深読みできないかもしれないが、寿子さんや琥珀さんは間違いなくそう思っただろうな……。
まあ今更気にしたところでもうどうしようもないので、あまり気にしないことにするとしよう。
それにしても本当に信じられない状況だよな……。
俺が真白と仲良くしているだけで信じられないというのに、その親とも仲良くさせてもらって、それどころかおばあちゃんとも仲良くさせてもらうなんて……。
このまま大きな問題もなく順調に進んだとしたら真白と結婚なんてこともあるかもしれない。
……いや、流石に無理だな。少なくとも今のままの俺では。
今までの俺ならどうせ無理だと諦めていたかもしれないが、真白が完璧な女の子だとするならば、俺もそれに追いつけるよう努力をすればいい、そう思えている。
仮に真白と付き合って結婚をするとなれば、琥珀さんとの付き合いも、琥珀さんとの付き合いも一筋縄ではいかなさそうだが、真白だけでなく、真白の親族も全員幸せにできる様な、そんな男になれば、俺が真白と付き合うのも可能になるだろう。
よしっ、もう十分癒されたし出るか。
真白に追いつけるよう努力すると決めた俺は、上機嫌でお風呂を出た。
◆◇
「ごめん、こめんね颯一君。私はそんなつもりじゃないんだけど……」
そう言って焦った様子で申し訳なさそうにしている真白の視線の先には、先程まで俺たちがいた客間に並んで置かれた二枚の布団が置かれていた。
……ごめん。さっきは真白に追いつけばいいなんてえらそうなことを言ったが、やっぱり無理かもしれない。
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