第97話 思いついた方法
寿子さんの発言はこれまで俺が琥珀さんと寿子さんから聞いてきた発言の中で一番卑猥な発言だった。
最悪だったのは寿子さんがち◯棒と言った駄菓子を、俺たちが咥えようとしていたタイミングでの発言だったということ。
そんなタイミングであんな言葉を言われてしまったら味見なんてできなくなってしまう。
「ちょっとおばあちゃん⁉︎ いい加減怒るよ⁉︎ てかもう怒ってるんですけど!」
「おおすまんすまん。晩ご飯作りながら琥珀にも発言には気をつけるよう注意されたんだけどね。あまりにも露骨に二人が棒状の駄菓子を持ってるもんだから思わず口が滑っちまったよ」
「口が滑るって何⁉︎ というか口が滑る前にそもそもこの駄菓子を見てそんな卑猥な言葉を思い浮かべるのやめてくれる⁉︎」
「次からは本当に気をつけるから許しとくれ。そうそう颯一君、卵焼きは甘いのかしょっぱいの、どっちが好きなんだい?」
「あ、甘いので……」
「はいはい。それじゃあ、お邪魔して悪かったね」
そう言って寿子さんは部屋を出て行ってしまった。
今の発言は寿子さんの平常運転なのか、それとも俺と真白の関係を色々な意味で前進させるための発言なのか。
どちらにせよ俺と真白の間に流れているお通夜のような雰囲気を回避することはできなかっただろうけどな。
正直もう卵焼きが甘いかしょっぱいかなんてどっちでもよかった。
この凍りついた状況のままならどうせ味なんて感じない。
真白は手に持ったうまい棒たこ焼味へと視線を向けており、俺と目が合うことは無い。
目を合わせるのが気まずいというのもあるだろうが、先ほど俺に味見させようとした流れのまま一口味見させるか、味見させるのをやめておくかで悩んでいるように見える。
ここで味見させるのをやめておこうとすれば、真白が手に持っているうまい棒たこ焼味を先程寿子さんが言った通りち◯……いや、男性の性器だと意識していることになってしまうし、気にしていないフリをして俺に味見をさせれば、真白もチョコバットを咥えなければならない状況に陥ってしまう。
どちらへ進んでも地獄の状況で、真白はどちらにするのかを決めきれていないように見えた。
そんな真白に俺は助け舟を出した。
「なぁ、ちょっとうまい棒貸してくれるか?」
「……え? 別にいいけど」
そう言って真白から渡されたうまい棒は俺が味見をする直前だったこともあり既に開封されており、その袋の中にもう一度しっかりうまい棒を入れて、うまい棒を真上から叩いた。
「えっ、何やってるの⁉︎」
「何って一口味見しようと思って、とりあえず四等分したんだよ」
「え? 今ので四等分されてるわけ……って本当だ! 綺麗に四等分になってる⁉︎」
「この前何かのテレビで見たんだよ。こうすれば綺麗に等分できるって。袋を一回開けてあったからカスが飛び散ったのはごめん」
そう言いながら俺は四等分されたうまい棒のひとかけらを手に取り、口に運んだ。
「うん、上手い」
四等分に割った状態であれば、性器をくわえたようには見えないだろう。
「だっ、だよね! 美味しいよね! たこ焼味!」
「はい、じゃあチョコバットも一口どうぞ」
そして俺は開封する前にチョコバットを一口サイズに折り、それを真白に渡した。
「う、うんうんこれこれ! これだよこれ! 美味しすぎる!」
「だろ。どっちも上手いし勝負は引き分けだな」
寿子さんが運んできたとんでもない問題が発生してはしまったが、機転を聞かせることでなんとか問題を乗り越えることができた。
とはいえ寿子さんが来ていなければ俺は真白と間接キスすることができていたのかという事実に気付いてしまったら、寿子さんに対して憎しみが湧いてきたという話は真白には内緒である。
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