第96話 一番の言葉
寿子さんの家に到着した俺たちは、先ほどまでいた部屋に戻り何の駄菓子を買ったかを見せ合うことにした。
「どうする? 俺から見せればいいか?」
「うーん……でも楽しみは後に取っておきたいから私から見せようかな」
そう言う真白に『おけ』とだけ返事をして、真白は一つしか買っていないのに、俺にどの駄菓子を買ったのかバレないようにわざわざ入れてもらったビニール袋の中から、一番好きだと言う駄菓子を取り出した。
「私が選んだ駄菓子はこちらです! うまい棒! たこ焼味!」
真白が取りだした駄菓子を見て、俺は目を丸くした。
「……たこ焼き味を選ぶとは、お主わかっておるな」
「ふふふ。そうでしょそうでしょ」
うまい棒には様々な味があるが、その中でもたこ焼味は俺が一番好きな味でもある。
先ほど俺が真白と同じく駄菓子屋が好きだという話をした時に真白は『同じものを好きって嬉しいね』と言っていたが、まさに今俺も真白と全く同じ気持ちになった。
それにしても人気の高いめんたい味やチーズ味を選ばずに、たこ焼味を選んでくるあたり、真白は本当にうまい棒が好きなのだろう。
「他のと違ってちょっとサクッてしてるのがいいんだよな」
「そうそう。結構濃い味なところもまたいいんだよね」
「これは強敵だな……」
「ふっふっふっ。うまい棒たこやき味君に勝てる駄菓子なんているのかね?」
「諦めたらそこで試合終了だからな。勝負だけは挑ませてもらうぜ」
そう言って俺が袋から取り出したのは、同じくスティック形状の駄菓子だ。
「そっ、それは! チョコバット⁉︎」
俺が一番好きな駄菓子として選んだのは、スティック形状のパン生地をチョコレートでコーティングしたチョコバットだ。
その美味しさもさることながら、くじ付きというのは子供にとって大きな付加価値となる。
「チョコバットは男の浪漫だからな。当たりを出すためだけに何本も買って食べた記憶があるよ」
「私も昔くじを当てようと思って買った記憶があるなぁ。くじ付きってなんであんなに魅力的なんだろうね」
「それな。値段はうまい棒には勝てないけど、俺はこれが一番好きだな」
「よし、じゃあもう味はわかってるだろうけど味見タイムってことで、まずはこちらのうまい棒たこ焼き味をどうぞ」
そう言って真白は袋を開け、うまい棒を俺のほうへと差し出してきた。
「ありがと。じゃあ一口……」
そう言って真白からうまい棒を一口もらおうとした瞬間、俺たちがいる部屋の扉が突然開かれ、そこに入ってきたのは寿子さんだった。
「なんじゃおまえら、ち◯棒二本も持ちよって」
寿子さんの家に来てから一番の卑猥な言葉に、俺たちは絶句することしかできなかった。
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