第82話 誘い方
「……琥珀さんから」
完全に逃げ道を失った俺に残された道は、この避妊具を誰から受け取ったかを正直に伝えることだけだった。
そうしなければ俺が付き合ってもいない女の子とそういうことをする男子だと思われてしまう。
最終的には琥珀さんが渡してきたと真白に伝えることになってしまったが、琥珀さんには最後までこの避妊具を琥珀さんから受け取ったという事実を隠そうとしたところを評価してほしい。
「やっぱり」
「……え? わかってたのか?」
「大体予想は付くよ。颯一君がそんなの持ってくるわけないし、誰かから受け取ったんだとしたらお母さんしかいないもん」
俺が避妊具を持ってくるわけないと思ってくれているということは、真白が俺を信頼してくれている証明になる。
琥珀さんには申し訳ないが、真白がそれだけ俺のことを信頼してくれているという事実がわかったのは嬉しかった。
「ふぅ……。誤解されなくてよかった」
「お母さんから受け取ったやつでよかったよ。そんなこと思うわけないってわかってるけど、もし颯一君が私としようと思って持ってきてたんだとしたら私断らなかった気がするし」
「--えっ?」
真白の発言を聞いた俺の頭の中には『それなら自分で持ってきてたら真白とできたのか⁉︎』という邪な考えが芽生えてしまっていた。
というか俺たちまだ付き合ってない状態だしそんなことしていいはずがないんだけど。
……まだとか言ってるけどそもそも付き合える確証なんて無いんだけどな。
「こっ、断らなかった気がするって言うのはその、別にそういうことをしたいっていうわけじゃなくてね⁉︎ えっと、えっと……」
「……なぁ、夏休みの終わり間際にさ、地元の花火大会があるだろ? それ行かないか? 俺たち二人で
」
「えっ?」
真白が俺とそういうことをしたいと思っているだなんて思っていないし、話の流れでおかしなことを言ってしまっただけなのだろう。
焦って釈明をしようとしている真白の姿を見て、俺は助け舟を出すように花火大会へと真白を誘った。
以前真白を誘う時に二人で遊ぶつもりで誘っておいて亜蘭達を含めたメンバーで遊ぶと勘違いされたことがあったので、今回は勘違いされないよう『二人で』と付け加えた。
「毎日会うってことだけは決まったけどまだ夏休みの細かい予定は決まってないだろ? だからどこに行くとか何をするとかも決めていこうと思って」
「絶対行く‼︎‼︎」
「おっ、おお……」
俺からの提案を聞き食い気味に反応した真白の姿を見て、真白は花火が好きという三折の話が正しいことがわかった。
これだけ花火大会が好きなのには何か理由があるのだろうか。
「ただでさえ楽しみな夏休みがもっと楽しくなってきちゃった」
「雨が降らないようにてるてる坊主でも作っとくか」
「そうする‼︎」
真白を花火大会に誘うことに成功した俺は、その後てるてる坊主を作って窓枠に吊るし、それからは余裕を持って夏休みの計画を立てていった。
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