第81話 話のすり替え
俺はスマホを入れている方と同じポケットに避妊具を入れてしまった自分を恨んだ。
ポケットからスマホを取り出す時に、避妊具が一緒に出てきてしまう可能性があることくらい少し考えればわかったはず。
それがわかっていれば避妊具をスマホとは別のポケットに入れることで、このような事件が起きるこは回避できたはずなのに……。
「こっ、これはそのっ、俺が持ってきたわけではないというかなんというか……」
「えっ、じゃあ誰が持ってきたの……?」
俺は言い訳の方向性を間違えてしまった。
俺が持ってきたわけではないと言われれば、誰が持ってきたのかと訊きたくなるのは当然のこと。
真白からの質問へ琥珀さんから手渡されたと言ってしまえば俺が真白と避妊具を使って行為に励もうとしていたとは思われずに済むだろうが、琥珀さんのためにも馬鹿正直に真相を伝えるわけにはいかない。
どうすればこの場を上手く乗り切れるだろうかとと頭を悩ませていた俺だったが、ふと一つの疑問が思い浮かんだ。
「……あれ、真白これが何かわかるのか?」
避妊具が見つかってしまい焦っていた俺だったが、意外と冷静でもあった俺の頭の中にふと思い浮かんだ疑問をそのまま口に出した。
男子に対して苦手意識のある真白がなぜこの四角くて薄っぺらい物を見ただけで避妊具だと認識できているのだろうか。
「ち、違うよ⁉︎ 使ったことがあるとかそんなんじゃないからね⁉︎」
「そ、それは最初から疑って無いから!」
男子に苦手意識のある真白が避妊具を使ったことがあるのか、そういう行為をしたことがあるのか、ということについて俺が疑うはずもない。
それに何より、真白がそんなことをするような女の子ではないことは俺が誰よりも理解している。
「ならいいけど……。咲良がね、いつか使うかもしれないからって教えてくれたの。も、もちろん咲良もまだそんなことしてないけどね? スマホの画面見せられて、そこにネットで調べた画像が写ってたから」
真白に対して疑いを持つことはなかったが、三折ならあり得ると思ってしまったのは口が裂けても言えない。
「そういうことか。三折って過保護なとこあるよな。子供とか産まれたら苦労しそうな気がする」
「確かにそうかも。咲良すっごく可愛いのに、ずっと付き合ってるのないのは私が男の子に苦手意識を持ってるからっていうのもあるみたいだし。そんなの気にせず付き合ってもいいって言ってるんだけどね。親より私のこと心配してくれてるかも」
「……そういえば三折付き合い始めならしいぞ」
「--えっ⁉︎ 嘘⁉︎」
卑怯だとは思いながらも、この話をぶっこめば話をすり替えられるのではないかと思い、俺は三折と亜蘭の話をした。
亜蘭と三折からは付き合った話を真白にしておいてほしいといわれておりどのみち今日告げるつもりではあったので、俺は迷うことなく真白に二人が付き合っていることを話した。
「誰と付き合ってるの⁉︎」
「……亜蘭と」
「えぇ⁉︎ それ本当⁉︎ お祝いしないと!」
「ああ。昨日亜蘭から聞いたんだけどな、俺と真白なら気付いてくれるだろうってあえて話してなかったらしいんだけど、俺たちがいつまで経っても気づかないから昨日痺れを切らして教えてくれたらしい」
「そうだったんだ……。気付かなかったのは申し訳ないけど本当に嬉しい。どんな経緯で付き合ったのか早く聞いてみたいな」
「そのあたりは俺も聞いてなかったな。また二人で聞きにいくか」
「うん。そうしよう。それでその避妊具は誰が持ってきたの?」
「え゛っ--」
作戦失敗。
上手く話をすり替えられたかと思ったが、真白は避妊具のことをしっかりと覚えていた。
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