第78話 同じ気持ち

『ま、毎日会いたいの……?』


 ぐぅぅぅぅなんで夏休み中毎日会いたいなんて言ったんだよ俺はぁぁぁぁぁぁああ‼︎

 ただ花火大会に誘おうと思っていただけなのに、その何倍も言いづらいことを言ってしまうなんて何やってんだよ俺は……。


 学校へ行っている間に毎日会うのは当たり前だが、夏休みに入って会えなくなってしまうのもまた当たり前のことだ。

 それを毎日会いたいと言われてしまえば、気分を害すどころか気持ち悪いと思われてもおかしくない。


 実際真白は困った様子を見せているし、これはもう嫌われただろうな……。

 とはいえ、ここで後に引くわけにも行かないので、真白に聞き返された俺は同じ言葉を繰り返した。


「あっ、ああ……。俺は毎日会いたいと思ってる」


『え、えっとその……毎日はちょっと……』

 

 真白からの返答を聞いた俺は、大袈裟でもなんでもなくこの世の終わりだと思った。

 俺の真白に対する想いと、真白の俺に対する想いが平等ではないことを思い知らされたからだ。


 そうだよな。真白が俺のことを定期的に抱きつきたいと思うくらいには好きでいてくれたとしても、好きな度合いが俺と全く同じなんてことはないだろう。

 まずは真白を花火大会に誘うよりも、お互いの好きの度合いを同じにしなければならないのかもしれない。


 そうしなければ仮に真白と付き合えたとしても、どこかで気持ちの乖離が起きてしまいかねない。


「……だよな。ごめん。変なこと言って」


『ち、違うの! 私もね、颯一君とは夏休み中毎日会いたいと思ってるの』


 真白も夏休み中毎日会いたいと思ってる?

 それならなぜ『毎日はちょっと……』と俺と夏休み中毎日会うことを嫌がっているとも取れる発言をしたのだろうか。


「え、そうなのか?」


『うん。そりゃ学校で定期的に抱きついてるくらいなんだから夏休み中でも毎日会いたくなるのも当然でしょ?』


「ま、まあそうかもしれないけど……」


『それに学校だと誰かに見られる危険性があるからって思って毎日抱きつくのはやめておいたけど、本当は毎日抱きつきたかったんだよ?』


 毎日抱きつきたかった⁉︎

 それが本当だとするならば、俺の真白に対する想いよりも、真白の俺に対する想いのほうが大きい可能性すらある。


『だからね、毎日遊ぶのが嫌ってわけじゃなくてむしろ私も毎日会いたいと思ってるの。ただ夏休みは一週間くらいおばあちゃんの家に帰っちゃうからどうしても毎日は会えなくて……』


 ……ふぅぅぅぅぅぅう。そういうことだったのか。

 夏休み、毎日俺と会うのが嫌だったというわけではなかったんだな。


 真白から夏休みに毎日俺とは遊べないと聞いた俺は胸を撫で下ろした。


「それは仕方がないよ。気にしないでくれ」


『で、でもね? おばあちゃんの家に行く時以外は全部会いたいから……。とりあえず明日私の家に来てくれる? 夏休みの計画でも立てない?』


「……わかった」


 こうして俺は夏休み、花火大会以外の日も真白と会えることになった。

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