第67話 大変なこと

『誰でも輝ける』なんてことを言うので、何を持ってそんな発言をしたのかと思っていたが、輝くための手段は『告白をする』というものだった。


 亜蘭は女たらしなので感覚が狂っているかもしれないが、告白というのは長い間思いを寄せている異性に対して決死の覚悟で行うもの。


 俺が天川に告白をするにはかなりの覚悟が必要で、そう簡単に告白をすることはできない。


 そもそも輝くために告白をするというのはお門違いなので『誰でも輝ける』なんてことは絶対に無い。


 とはいえそう言われてしまうとやはり考えてしまうもので、授業中もずっと告白のことが頭から離れず、授業の内容は全く頭に入ってこなかった。


「……はぁ。疲れた」


 お昼休みを迎え、頭をフル回転させ疲労していた俺は机に突っ伏し、思わずそんな言葉が口から出てしまっていた。


 俺が天川に告白か……。


 俺は天川が好きだし、最終目標が天川と付き合うことなのは事実だ。


 天川と過ごしてきた時間も少しずつ長くなり、お互いの家に行ったり、天川の父親の話を知ったりと俺たちの関係は前進している。


 そう考えると、そろそろ天川に告白をする頃合いがやってきているのかもしれない。


 付き合って彼氏になれば、今よりも天川を『大切にする』という琥珀さんからお願いされた依頼も遂行することができるだろう。


 ……でもダメだ。


 どうしても俺が告白をして、その告白を天川が受け入れてくれるビジョンが見えてこない。


 どれだけ関係が前進しようとも、俺はイケメンの亜蘭の影に隠れていただけの陰キャで、天川は学校一の美少女という事実は変わらない。


 この事実が俺の告白を邪魔していた。


 それに加えて告白に失敗したら、天川との関係が消え去ってしまう危険性も孕んでいる。


 もう少し自分に自信を持つことができれば、迷わず天川に告白することができるのだろうか。


 色々な要素を勘案すると、やはり告白をすると決断することはできなかった。


 そんなことを考えているとスマホのバイブが鳴り、俺は通知を確認する。


 すると、RINEをしてきたのは天川だった。


 最初は四人のグループにメッセージを送ってきたのかと思ったが、天川は俺個人にメッセージを送ってきていた。


 天川『ちょっとだけ時間大丈夫?』


 窪田『いいけどどうかしたか?』


 天川『ちょっと大変なことになってて……。体育倉庫きてもらってもいい?』


 大変なこと?


 何か事件でもあったのだろうか。


 それとも、昨日聞いた父親の話がまだ受け入れられず、俺に助けを求めてきたのだろうか。


 それならば、まだ昨日のように優しく抱きしめるしかない。


 窪田『わかった。今から行くわ』


 天川『ごめんね。先行ってます』


 そして俺は亜蘭に一言「うんこ」とだけ告げて教室を出た。


 まあ天川も教室からいなくなるので、何か別の用事があることにはすぐに気づかれてしまうだろうけど。

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