第66話 誰でも輝ける
「おはよっ。颯一君」
「お、おう。おはよ」
亜蘭と会話をしている俺に挨拶をしてきたのは天川だ。
体育倉庫での一件があってから、学校ではまともに会話をできないどころか挨拶すらままならない状態だったので、こうして普通に挨拶をできることの幸せを噛み締める。
「……え、ちょ、おまえら名前呼びになったのか?」
「あ、ああ。体育倉庫での一件も事故だったって理解してもらったし、仲直りして今後も仲のいい友達として付き合っていけるようにってことでお互い名前で呼ぶことにしたんだよ」
というのはもちろん建前だ。
俺と天川がお互いを名前で呼び合うようになったのは、琥珀さんから聞いた天川の父親の一件が理由だが、その話を無関係の人間にペラペラと話すわけにはいかない。
誰かに話したくなるような衝撃的な内容ではあったが、それを話してしまっては琥珀さんに言われた天川を『大切にする』ということが実践できていないことになってしまうからな。
「マジか。正直颯一が体育館の一件で悪化した天川との関係を自分だけの力で元通りにできるなんて思ってなかったわ。そう思ってたからこそ、昨日は『三折を攻略するので忙しいから自分でなんとかしてくれ』なんて突き放すようなこと言ったけど、気になってたから今日にでもその話聞こうと思ってたんだよ」
亜蘭はやはり優しい男なのだ。
女好き、女たらしという部分が先行してしまうが、それ以外に亜蘭の魅力はいっぱある。
「意外とやればできる子っぽい俺。まあ気を遣ってくれたのはありがとな。それで、亜蘭のほうは三折とこれからどうしていくつもりなんだ?」
「ああ、一応昨日告白したんだけどな」
「へぇ。それで結果は--って告白⁉︎」
俺が天川との関係を着実に先へと進めている間に、亜蘭もとんでもないペースで三折との恋愛を先へ進めようとしていた。
普通であればまずは相手の自分に対する好感度を上げて、十分に上がったと判断できてから告白をするものだろう。
それなのに亜蘭はその順序を全く逆にしているのだ。
「何考えてんだお前⁉︎ まだ三折を狙うって決めてからそんなに経ってないだろ⁉︎」
「いやまあ狙うって決めてからはな? でも元から三折のことはいいなと思ってたし、とりあえず告白から始めようと思って」
亜蘭は『とりあえず告白』というわけのわからない名言っぽい言葉を残した。
確かに三折とは亜蘭が狙うと決める前から関わっているので、三折がどんな人間かは見極めなくともわかっているだろう。
とはいえすぐに告白するなんて、女たらしで経験が豊富な亜蘭だからこそできる荒業である。
「まあツッコミどころは色々あるけど……それで、どうだったんだよ。その結果は」
「まだ早いだってさ。可能性はありそうだな」
「お、おお……。なんかすげぇな亜蘭。そういう時だけはお前がやたらと輝いてみえるよ」
「そんなに俺が眩しく見えるなら誰だって簡単に輝けるって。颯一だってすぐ輝けるよ」
「え、どうやって?」
「そんなの告白に決まってるだろ」
『俺は亜蘭じゃないんだぞ……』と心の中で呟きながら、思わずため息をついた。
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毎日すいません(´;ω;`)
遅くなりましたが、よろしくお願いしマァス‼︎
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