第58話 距離を置く

 天川との関係を修復するため亜蘭へ協力をしてもらうようお願いしたが、亜蘭は三折を落とすのに忙しいということで一人で天川との関係を修復しなければならなくなった。


 できれば亜蘭に手助けをしてもらいたかったが、俺の都合で迷惑をかけるわけにもいかない。


 まあその代わり、亜蘭のアタックを受けて三折が迷惑する可能性はあるんだけども。

 

 とにかく一人で天川との関係を修復しなければならなくなった俺は、それから一週間今まで通り変わらず天川にゴリ押しで会話をしようと試みた。


 しかし、近づくだけで逃げられるどうしようもない状況が変わることはなかった。


「はぁ……。どうしたらいいんだよもうこんなの……」


 今日は日曜日で時刻はもう日付を跨ぐかというころ。


 休日の間どのようにして天川との関係を修復するべきかを考えたが、いい作戦は思い浮かばなかった。


 思い浮かばないとはいえ、何か行動を起こさなければ天川との関係が修復されることはない。


 関係修復のためには明日学校に行ったらまた天川に声をかけるしかないが、同じことを繰り返しても状況が改善されることはないだろう。


 八方塞がりの状況で自分ではいい案が思い浮かびそうになかったので、俺はネットで調べてみることにした。


『女友達 仲直り』


 すると、予想以上に多くの関係修復のための方法がヒットした。


 あまりに数が多かったので、手当たり次第にその方法を試すのではなく、どの方法を試せば効果が大きいか吟味の必要があった。


 そして一時間程スマホと睨み合いをして俺の目に止まったのは、実践するのが簡単そうな一つの方法。


 しかし、実践が簡単な反面、かなりのリスクを伴う方法でもあった。


 その方法を試したからと言って関係が悪化することはないが、一向に溝が埋まらない可能性もある。


 リスクは伴うが、どれだけゴリ押ししても会話すらしようとしてくれないような状況だし、ダメ元で一旦やってみるか。


 そして俺は早速その方法を明日から実行することにした。




 ◆◇




 俺がネットで見つけた方法を実践し始めて一週間が経過し、次の月曜日になった。


 試している方法の効果が出ているのか出ていないのかは全くわからない。


 俺が実践した天川と仲直りする方法、それは『距離を置く』という方法だ。


 ネット情報によると一度距離を置くことでお互いが冷静になり、関係を修復しやすくなるらしい。


 とはいえ、一週間が経過しても関係が改善されることはなく、以前のようにゴリ押しするほうがいいのではないかと思ってしまっている。


 今日ももう放課後だし、これ以上距離を置く方法を続けても効果は……。


「あ、あの。窪田君」

「--あっ、天川?」


 もうこの方法は諦めようと考えていた矢先、天川のほうから俺に声をかけてきたのだ。

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