第4章

第57話 次のターゲット

 王子と姫路の関係が修復されてから一週間が経過した。


 一時はどうなることかと思ったが、全てが丸く収まりようやく平穏が訪れた……なんてことになればよかったのだが、平穏どころか不穏な空気が流れてしまっている。


 俺と天川の関係は、体育倉庫の一件で完全に悪化してしまい、最悪な状態となってしまった。


 あの一件以降も王子と姫路の関係を修復するための会話をしている時は、ある程度会話のキャッチボールはできていたし、視線も合っていた。


 しかし、王子と姫路の関係が修復されてからは、俺から話しかけようとしてもすぐにどこかへ行ってしまう。


 RINEでメッセージも送ってみたが、返信も来ないような状態。


 どうしようもなく、俺は亜蘭に相談することにして、昼休みに亜蘭に相談をしていた。


「なぁ、口も聞いてもらえない女の子と会話するにはどうしたらいい」

「まあ俺の場合はそうなったらもう手を引くな」


 亜蘭は大勢の女の子に手を出しているので、口を聞いてもらえなくなった女の子も少なからずいるだろう。


 そう思って相談したのだが、そもそも亜蘭からしてみれば、女の子が口を聞いてくれなくなったらすぐに諦めて別の女の子を攻略しにいけばいいだけなので、一人の女の子に固執して、口を聞いてもらえるように努力する必要はないようだ。


「まあ亜蘭はそれでいいよな。でも俺はそれじゃダメなんだよぉ。このままじゃ天川との関係がこのまま終わっちまうじゃねぇかぁ」

「そりゃ俺としてもそうなるのはできればやめてほしいけど……。ちょっと俺も忙しいんだわ」

「忙しいってまた新女の子落とそうとしてるのか?」

「ああ。三折をな」

「……三折を⁉︎」


 これまで亜蘭が三折を落とそうとする素振りを見せることはなかった。


 それは三折に魅力がないわけではなく、三折に彼氏がいるという情報があったから手を出してこなかったのだ。


 そんな三折に手を出すとなると、三折は彼氏と別れたのか?


「そんな驚く必要もないだろ。三折可愛いし、面白いし」

「いや、だって、三折彼氏いたんじゃないのか?」

「ああそれな、嘘らしいぞ」

「は? 嘘?」

「理由は教えてくれなかったけどな。彼氏がいるってのは嘘なんだと」

「……」


 三折が付き合っていると嘘をついていたのは、もしかしたら天川のためかもしれない。


 三折も天川に引けを取らず可愛いし、彼氏がいるとでも言っておかなければ男子が群がってくるのは目に見えているからな。


「だから、俺は手伝えないぞ。ひとりで頑張ってくれ。応援してるから」

「……まあそれなら仕方ないわな」


 こうして俺は誰の手助けを借りることなく、一人で天川との関係を修復しなければならなくなった。

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