第48話 脱出
俺は天川が自分の背中に引っ付いていることなんてお構いなしで、自分の頬を思いっきり平手打ちした。
「えっ⁉︎ ど、どうしたの急に⁉︎ 閉じ込められて頭おかしくなっちゃった⁉︎」
急に自分の頬を平手打ちした俺に驚いた天川は、顔を上げて俺の顔を覗き込む。
俺の奇行に驚いたおかげかどうかは知らないが、天川の震えは止まっていた。
「いや、ちょっと自分に腹が立って」
「え、別に窪田君が自分に腹を立てる必要あることなんて何もなかったよね?」
「……いや、体育倉庫なんて漫画やアニメでもよく閉じ込められてるところ見るし、別の場所にしとけばよかったなと」
「……? 私も体育倉庫がいいと思ったし窪田君が自分に怒ることなんてないと思うけど」
流石に『体育倉庫の中で天川とお近づきになれるのではないかと思った自分に腹が立った』とは言えるはずもない。
体育倉庫を選んだ自分に怒っているというテキトーな嘘に対して、疑問を持っていそうな天川ではあったが、なんとか乗り切れそうだ。
「いや、自分を戒めるのは大切だからな」
「そう? 窪田君がそう思うならそれでいいけど--あっ、窪田君がほっぺ叩いた音にびっくりしたおかげで震え止まってる」
「それならよかった。でも閉所恐怖症なら一刻も早く外に出ないとな。とりあえず窓があるからそこから出れないか……って思ったけど格子があるな」
唯一外に出られそうな窓には鉄格子がされており、どう頑張っても外に出られそうにはない。
それ以外の出口がないかどうかも一通り見渡したが、まあ見つかるはずはない。
「そうだね。外側から鍵をかけるタイプだから内側に鍵もなさそうだし……」
「……打つて無しか」
「あ、あの、一つお願いがあるんだけどいい?」
一刻も早く外に出なければならない状況で、天川は俺にお願いがあるという。
この状況でどんなお願いがあるというのだろうか。
「お願い? どうした?」
「私ね、閉所恐怖症なんだけど、目を瞑って、ここが狭い場所だったわからなくなって、安心したら多分誰かの助けを待つくらいの時間は耐えられると思うの。だからね……?」
「だから?」
「窪田君に抱きつくから、私のこと抱きしめたもらってもいい?」
「……へ?」
一度は何がなんでも外に出なければならないと思い自分の頬まで思いっきり叩いた俺だったが、ここにきて天川と物理的に急接近するチャンスがやってきてしまった。
いや、物理的距離が近づくイコール心の距離も近づくはず。
「あ、ごめん、私変なこと言ってるよね? 無理ならいいの。閉所恐怖症って怖くない人には理解されないし……」
「それくらいなら全然大丈夫だ」
「--! ありがと! 窪田君!」
こうして俺は、天川を抱きしめることになった。
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※投稿予定報告
すいません、シンプルに予約投稿の日付を1日間違えていましたwww
本日もう1話分、いつも通りの20:12に投稿予定です‼︎
よろしくお願いしマァス‼︎
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