第47話 密室
俺と天川は音がした扉のほうに視線を向けた。
何が起こったのかは今の音を聞けば確認せずともわかったが、俺は扉に手を伸ばし、扉が開かないことを確認した。
「……閉じ込められたな」
「……そうっぽいね」
こんなアニメみたいな展開になるとはな。
扉が開かなくなってしまったことには驚いたが、俺は内心喜んでもいた。
亜蘭には天川に告白をしたと嘘をついてしまっているだけに、できるだけ早く天川との距離を近づけたい。
そのために、この状況はあまりにもってこいな状況なのである。
とはいえ、何も行動を起こさずにあえて体育倉庫の外に出ないでおこうとするのは違和感がありすぎるので、俺は亜蘭に電話することにした。
「と、とりあえず亜蘭に電話してみるわ」
「そうだね。私も一応咲良に電話してみる--ってあれ……。私、スマホ教室に置いてきちゃったみたい」
天川、ナイスすぎるぞそれ。
俺は亜蘭くらいしか連絡できる相手がいないので、亜蘭が電話に出なければ、それ以外の人に連絡をすることはできない。
しかし、天川であれば助けを呼んだら来てくれる友達はたくさんいるだろう。
そうなったら、このご褒美みたいな状況はすぐに終わりを迎えてしまう。
「そ、そうか。まあ俺のスマホがあればなんとかなるだろ--ってごめん。俺もスマホ教室だわ」
スマホなんて普段ぜったいポケットに入れているのに、こんなときに限って持ってくるのを忘れるなんて……ナイスすぎるだろ俺。
嘘でスマホを忘れたとは流石に言いづらいが、本当に忘れてしまったのだから堂々としていられる。
「てことは……」
「助けを呼ぶことはできないな。できるとしたら、この扉を思いっきり叩きながら叫び続けることくらいか」
「大変なことになっちゃったね」
「一旦扉叩いてみるわ」
そう言って、俺は扉を叩き誰もいないでくれと思いながら「誰かいませんかー」と大声で叫んだ。
しかし、俺の声に返答はない。
「ダメだ。反応がない--えっ、ちょ、天川?」
俺が扉を叩き終えると、天川は急に俺の背中にピトッと身を寄せてきた。
男子が苦手である天川がする行動とは思えないが、なぜこんな行動をとったのだろうか。
「きゅ、急にどうしたんだよ」
「ごめん。私、閉所恐怖症で……」
「閉所恐怖症?」
天川から俺の背中にひっついてきた理由を聞いた俺は気付いた。
天川の身体が異常なまでに震え、先程まで普通だった呼吸も、何倍もの速さになっていることに。
それに気付いた俺は、自分の浅はかな考えに心底腹が立っていた。
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