第45話 作戦実行
……この状況、正直淫らなことを意識せずにはいられない。
俺は天川と2人で体育倉庫の中に隠れ、中から外の状況を伺っている。
そうは言っても、もちろん淫らな行為をするため体育倉庫にやってきたのではない。
俺たちは体育倉庫前に呼び出した王子と姫路の行方がどうなるのかを見届けるため、体育倉庫の中に隠れているのだ。
体育倉庫と言えば、どのラブコメでも閉じ込められたりその中でヒロインを押し倒したりなど、必ず何かしらのハプニングが発生してしまう場所。
まさか天川と2人で体育倉庫の中に入ることになるとはな。
ファミレスで作戦を考えた翌日、俺と天川は二人で王子と姫路に話をしに行った。
王子には『姫路は王子のことを嫌いじゃない』と伝え、姫路にも『王子は姫路のことが嫌いじゃない』と伝えた。
だから、お互いにこれまで相手にしてきた失礼な行動を謝罪して仲直りするように伝えたのだ。
しかし、どちらも『なんでこっちが謝罪をしないといけないのか』というスタンスで、聞く耳を持たなかった。
流石にお互いを好きでいるという事実を伝えるのは気が引けたので、『嫌いじゃない』とだけ伝えたのだが、こうなるくらいならお互いが好きでいることを伝えても良かったかもしれないと、若干後悔はしている。
これ以上は俺たちがどれだけ言い聞かせても無駄だと判断して、強硬手段に出ることにした。
それは、王子と姫路に『向こうが謝罪したいと言っているから体育倉庫の前にやってきてくれ』と伝えるという手段だ。
もしかしたら余計に関係が悪化してしまう可能性もあるが、言い聞かせてどうにもならないのであれば、強行手段に出るしかない。
ちなみに亜蘭と三折は『ちょっと腹痛が』とか言ってどこかに行ってしまった。
毎回毎回大事な時に役に立たないやつらである。
「ねっ、こんなこと言ってたら王子君と姫路さんに申し訳ないけど、ちょっとドキドキするね。隠れて様子を伺うのって」
「あっ、ああ。そうだな」
体育倉庫の中にいる俺たちは、扉の隙間から2人がどのような会話をしているかを確認するため外を覗いていた。
まだ2人とも体育倉庫の前にやってきてはないので問題はないが、天川の声がやばすぎる。
もう王子と姫路がやってくる時間なので、会話をするときは小声で相手の耳元で会話をするように気をつけている。
そのせいで天川は俺にかなり接近し、耳元で囁くように会話をしてくるので、話しかけられるたび耳がゾクゾクしてしまう。
体育倉庫の中なら、王子と姫路に気付かれずに状況を確認できる最善の場所だと考えていたのだが、もっと別の場所を考えるべきだっただろうか。
俺以外の男子生徒なら、理性を保つことができずそのまま襲ってしまうレベルだぞこれ。
「上手くいくかな……」
「まあ今が最低の状態だしな。これ以上悪くなったところで問題はないような気も--あっ、姫路だ」
まずこの場にやってきたのは姫路だ。
そしてしばらくしてから王子もやってきた。
「謝罪したいって何を謝罪したいのよ」
「は? 謝罪? 謝罪するのは君のほうだろ。早く頭を垂れろよ」
うーん……。
頭を垂れろって、もっと他に言い方あるだろ。
1ミリたりとも上手く行く気がしない。
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