第43話 キューピッド作戦
「ふぅ。恋のキューピットになるのも楽じゃないね」
「これでキューピットになれてるのかどうかは怪しいけどな」
俺と三折は颯一と天川を残してファミレスを後にし、自宅に向かって歩いていた。
王子と姫路の話をするためにファミレスに行くことが決まってから、俺と三折は口裏を合わせてファミレスを抜け出す作戦を考えたのだ。
要するに、俺のばあちゃんが前痛めたところがまた痛いと言っているとか、三折が母親から特売の牛肉を買ってきてくれと言われたというのは、真っ赤な嘘なのである。
俺と三折は、颯一と天川を2人きりにすることで、あの2人の距離を縮めようとしているのだ。
「まあこれが決定打になるとは思ってないけど、少なくとも私たちが一緒にいるよりは距離が近づくんじゃない?」
「まあそうだわな」
「アーランはよかったの? ちょっと前までシロシロのこと狙ってたのに」
「颯一が天川といい感じになってるっぽいからな。女の子との関わりなんて全くなかったあの颯一が、学校1の美少女とお近づきになってるとなれば応援するしかないだろ? 俺はまあ、他の女子を狙えばいいだけだし」
女子の前でそういう発言をするのはどうかと思っている部分もあるが、三折は俺のことを全てわかっていそうだし、気にすることはないだろう。
「なんでそんなに女の子が好きなの?」
「うーん……。好きだからとしか言いようがない」
自分でもこれは病気なのではないかと思うくらい女の子のことが大好きだ。
なぜこんなに女の子のことが好きなのかとネットを調べたこともある。
そしてたどり着いた結論は、他の男子よりテストステロンの量が多いというもの。
男すぎるんだよな俺って。
「へぇ。そんなに好きなんだね」
「ああ。三折に彼氏がいなかったら間違いなく三折のことも狙ってるだろうな」
三折には彼氏がいるという情報は掴んでいる。
正直三折はかなり魅力的な女子だが、彼氏がいる女の子に手を出すほど、俺もクズではない。
「彼氏なんていないよ?」
「--は?」
三折は俺が仕入れている情報とは全く別の返答をしてきたので、俺は目を見開く。
「だから、彼氏なんていないよって」
「え、でも俺が仕入れた情報では彼氏がいるって話だったんだが」
「そうだろうね。私が嘘の情報流してるから」
三折本人が、自分には彼氏がいると嘘をついている?
ますます状況がわからなくなってきた。
「嘘の情報を? なんでそんなことしてるんだよ」
「まあそれは内緒かな。私だけの問題でもないし」
「なんだよそれ……」
「どう? 私のこと狙う気になった?」
「……」
彼氏がいなければ三折は狙う対象に、それもトップに入ってくるが、本人からそう訊かれると答えづらさはある。
しかし、こんなことを言ってくる女子に俺は今まで出会ったことがない。
俺はこれまでの女子に感じたことがない何かを、三折に感じていた。
「…‥そんなこと言われて狙わないわけないだろ」
「ふふっ。じゃあ楽しみにしてるね。アーランがどんな手で私を落とそうとしてくるのか」
三折咲良、やはり普通の女子とは一味も二味も違うようだ。
俺の心の中には、沸々と湧き上がってくる何かがあった。
そして、三折を狙うと決めた俺の頭の中からは、申し訳ないが颯一と天川のことなんて頭から消え去っていた。
王子と姫路のことは消え去っていないのかって?
あの2人のことなんて、もってのほかである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます