第42話 作戦会議
俺たちは王子と姫路の一件をどうするかを相談するため、学校から程近いファミレスに集まっていた。
「話聞いた感じ、姫ちゃんも姫ちゃんだったね。まあだからって言って王子んが女の子にたくさん声をかけるようになった理由はわかんないけど」
姫路の話を聞いて、姫路の言葉が原因で王子が変わってしまったのは間違いないことがわかった。
しかし、なぜ王子がそこから複数の女の子に声をかけるようになったのかは解明されていない。
まずはそれを解明しなければならないが、俺の中では一つの答えが出でいた。
「多分仕返しだろうな」
「仕返し……?」
俺の言葉に天川と三折は疑問符を浮かべた。
女の子側からすると、男子の気持ちというのはわからないのかも知れない。
「王子のことだから、自分の告白は絶対に成功するって思ってたはずだろ? それなのに失敗するどころか『自分とは釣り合わない』って言われたも同然の言葉を返されてショックだったんだろうな。それで姫路に仕返しをしてやろうって思ったんだと思う」
「ショックな気持ちはわかるけど、仕返しなんて絶対ダメだよ」
「俺もそう思う」
王子が姫路に仕返ししてやろうと思っているという俺の予想は、恐らく間違っていないと思う。
しかし、王子にはもうひとつ、複数の女の子に声をかける目的があったと考えている。
きっと王子は、自分が女の子と関わることで、姫路があわよくば自分へと気持ちを向けてはくれないだろうかと、そう考えていたはずだ。
王子がそう思っているのなら、まだ2人の関係は修復できるはず。
「俺なら一回振られたくらいじゃ諦めないけどな。それくらいで諦めるやつは男じゃないぜ」
「それも一人の女子に対してならかっこいい言葉に聞こえるんだけどな」
「俺はいつでもかっこいいけどな」
俺と亜蘭のやりとりにこの場が笑いに包まれる。
王子と姫路が、今の俺たちみたいに笑い合うにはどうしたらいいのだろうか。
「というかまあ、冷たいこと言っちゃえば私たちがあの2人の面倒見る必要なんて全くないんだけどね」
「まあそれはそうだわな」
「でっ、でも、姫路さんも王子君も本当はお互いが好きなんでしょ? そんな2人の距離が空いちゃって疎遠になるなんて寂しいよ」
天川はやはり優しい。
母親が男性関係にだらしないことで男子に苦手意識のある天川は、自分のことではないにしろ、男女の恋愛には首を突っ込みたくはないはずだ。
それでも、王子と姫路の気持ちを考えて、その気持ちに寄り添える天川はやはり魅力的な女の子である。
「そうだね。それなら私たちでなんとかしよっか」
「--咲良! ありがと」
「よし、それなら王子と姫路の関係をどう修復するかの話を--」
「うわ、私ちょっと帰らないといけなくなっちゃった」
「--は?」
既視感のある三折の言葉に、俺は思わず大口を開けた。
「お母さんから、今日は牛肉が特売日だから急いで買ってきてくれって」
「前も卵がどうのこうのって……」
「うわっ、俺も母さんからばあちゃんが前痛めたところがまた痛いって言ってるから病院行くってきてるから帰るわ」
「--はっ⁉︎ 亜蘭も帰るのか⁉︎」
亜蘭まで帰るなんて、この前映画を見に行った時とあまりにも同じ展開すぎる。
流石に裏で亜蘭と三折が、口裏を合わせていたのではないかと思いたくなるが、ばあちゃんの話は疑うわけにはいかない。
というかまあ、『牛肉が特売だから帰る』って嘘にしては雑すぎるし流石に本当の話なのか。
「ごめんな、それじゃっ!」
「え、ちょっ、ちょっと亜蘭⁉︎」
「ごめんねシロシロ、私も帰ります!」
「え、咲良⁉︎ 咲良ぁ⁉︎」
こうして俺と天川は、2人きりになってしまった。
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