第3章

第37話 一難去ってまた一難

「ねぇ、昨日のドラマ見た? いやー私不倫のドラマって大好きでさ--」


 亜蘭を天川から遠ざけることに成功してから半月程が経過したが、俺が一番困っているのは三折が天川を連れて俺と亜蘭の元へやってくることである。

 今日も何も知らない三折は天川を連れて俺たちの元へとやってきた。


 三折は意気揚々と不倫のドラマの話をしているが、天川はその辺デリケートそうだしそんな話すんなよ。


 それに、天川が亜蘭を遠ざけたいと言っているのは三折も知っているはずだ。

 それを知っているのであれば、無理矢理連れてくることなんてないのに……。


 そうは思いながらも、天川とは事前に亜蘭を含めたこのメンバーで会話をする場合どうするかについては話がついていたので、俺は天川が俺たちの元へやってきたのをあまり気にすることはなかった。


 亜蘭が天川にアタックしないようにすることはできたが、同じクラスなので流石に金輪際関わらないというわけにはいかない。

 そこで天川に、『普通の会話はOKなのか?』と訊くと、『うん、それは大丈夫だと思う』と言っていた。


 なので、天川がこうして亜蘭の元にやってきても、気にしていないのである。


 その後に『それに窪田君がいるから』と言われたが、その意味は深読みすればするほど沼にハマりそうだったので、その言葉の意味については考えないことにした。


「不倫のドラマなんて何が面白いんだか」

「えー。女の子はみんな好きだよ。ねっ? シロシロ」

「えっ⁉︎ あ、う、うん。そうだね」


 うん、見てないな今の反応は。


 確かに女子はドラマが好きなイメージがあるので、天川もドラマは好きなのかもしれないが、不倫のドラマは流石に見たくないのだろう。


 とにかく、天川が安心して学校生活を送れるようになってよかった。


「でしょー? ほら、窪っちもアーランも見てみなよ。今やってる不倫のドラマ」

「ああ、あれ面白いよな。不倫相手が実の姉っていうのがハマるポイントだよな」

「え、アーラン見たことあるの?」


 俺は知っている。


 亜蘭が女の子を落とすためだけに、女の子の好きなものを全てチェックしていることを。


 褒めていいのかどうかは知らん。


「当たり前だろ。女の子が好きそうなものは全部チェックしてる」

「へー……」


 三折は亜蘭に冷たい目を向ける。


 無理もないだろう。女の敵みたいなやつだからな。


「……まあ暇があったら見てみるわ」

「こら、窪田君が気遣ってくれてるでしょ。人に無理矢理押し付けないの」

「あーごめんごめん。悪い癖だね」

「そうだよ。まあ夢中になれるのが咲良のいいところでもあるんだけど--」

「ヘイそこのマドモアゼル!」

「--⁉︎」

「僕と付き合ってくれないか?」


 ドラマの話をしていると、突然俺たちの会話に割り込んできた男子生徒。


 それは、この学校で亜蘭と同じく女たらしとして知られている王子公陽おうじきみはるだ。


 せっかく亜蘭を天川から遠ざけたってのに、まさかまた別の女たらしが天川に迫ってくるなんて……。


 いや、てか女たらし多いなこの学校。

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