第34話 1番の問題
天川は俺のことを『ずっと見てた』と言ったが、見ていただけでは他の男子と同様、苦手意識を払拭することはできないはずだ。
要するに、『天川が他の男子に感じる苦手意識を、俺に対しては感じなくなったなにかしらの行動』を俺は無意識にとっていたのだろう。
それがどんな行動だったかを考えるよりも先に、自分が変な行動をしていないかを急いで思い返したが、ただ亜蘭にひっついているだけなので、そこまで変な行動はといっていないはずだ。
とはいえ、俺が覚えていないだけで、変な行動をとっていた可能性は十分ある。
「ずっと見てたってのはその、えっと……。俺変な行動とかしてなかったか?」
変な行動をとっていなかったかが心配すぎて、俺は天川に直接訊いてしまった。
「うん。全然普通だったよ? まあしいていうなら、変な行動っていうよりも面白い行動はしてたかな」
「……え、なにそれ、俺面白いって人に思われるような行動ができる人間じゃないんだけど」
「でもすっごく面白かったよ?」
「そ、その、面白いっていうのは具体的にどのあたりが……」
「うーんとね……。面白いから教えてあげない」
くぅーー教えてくんねぇのかよぉ!
本来なら教えてくれないことに腹を立て憎たらしく思う場面だが、イタズラっぽく微笑む天川が可愛すぎて、憎たらしさなんてこれっぽっちも感じない。
可愛いは正義。
「……まあ俺に対しては苦手意識を感じないっていうなら変な行動はしてなかったってことだもんな」
「うん。そうだよ。自信持って!」
俺のどんな行動が俺を信頼してくれるきっかけになったのか、めちゃくちゃ気になりはするが、変なことはしてなさそうだし気にしないでおこう。
「でも大変だな。男子に苦手意識があるってことは学校とかかなり大変なんじゃないのか?」
「……うん。私ね? 天然って言われたりするんだけど、男の子と話す時に緊張しちゃって上手く喋れなくて、それで天然って言われちゃってるの」
……いや、普通に俺といる時も天然なので関係ない気もするが、そこは突っ込まないでおこう。
苦手な男子と話すとなれば緊張して上手く喋れないのは事実だろうからな。
「会話もできないレベルで苦手ってなると学校生活にかなり影響あるんじゃないか?」
「うん……。もう学校行きたくないなーって思うくらい大変な時もあるかな」
天川は男子が苦手なのに、その可愛さゆえ男子から話しかけられることも多いだろう。
それでは苦手意識を払拭できるどころか、余計に悪化してしまう。
……あれ、てか待てよ?
今まさに俺と亜蘭は天川を巡って勝負をしているわけだが、亜蘭に話しかけられたりするのってかなり嫌なんじゃないか?
亜蘭は普通の男子と比べてイケメンで女たらしなので、天川にとってはかなり苦手としている人種な気がする。
「あ、あの、もしかして今一番苦労してるのって……」
「……うん。国平君なの」
あちゃー。やっちまってるなこれは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます