第29話 2度目の
天川と焼き鳥に行く約束をした俺は、夜ご飯前の夕方、駅前の待ち合わせ場所へやってきて往来を眺めながら天川を待っていた。
今こうして集合場所にやってきて天川の到着を待っている瞬間でさえ、天川と2人で焼き鳥を食べに行くことになったのが現実だとは思えない。
なにせ、今回は前回のようにハプニング的に2人で焼き鳥屋にいくことになったわけではなく、最初から2人で焼き鳥屋に行く予定になっているのだから。
いや、まあ三折の協力があったり、亜蘭は予定があると嘘をついて2人で行くことになったわけなので、正真正銘の2人きりとはいえないかもしれないが、それでも2人きりは2人きりだ。
そして俺は今日、なんとしても天川との仲を深めなければならない。
そうでなければ、亜蘭はすぐに差を縮めるどころか、俺になんて目もくれずそのまま抜き去っていくだろうからな。
「お待たせ〜。道迷ってたらちょっと遅れちゃった」
集合時間から5分程遅れて天川が集合場所へとやってきた。
いや、この前来た映画館も近くにあるし、道に迷うなんてあり得ないだろう。
どうやら天川は天然なだけでなく、方向音痴でもあるらしい。
今後も天川と仲を深めていくとなれば、それ以外にもどんどん欠点が出てきそうな気がするな。
というか、やはり天川の私服姿は可愛い、可愛すぎる。
しかも、今日の天川は可愛いだけではない。
今日の天川は、俺と出かけるためだけに今日の服を選び、選んだ服を着てきてくれているのだ。
そんなのもう、嬉しいとかそんな言葉じゃ言い表せられないだろマジで。
「5分くらいなら遅刻ってレベルじゃないだろ」
「……ありがとね」
「よし、じゃあ焼き鳥屋向かうか」
「うん! 今日こそはリベンジだ!」
こうして俺たちは焼き鳥屋へ向かって歩き始めた。
◇◆
「……本当にごめん」
「私も全く確認してなかったし大丈夫だよ。そんなに気を落とさないで」
今回こそは天川と、ゆっくり話でもしながら焼き鳥を食べると意気込んで、もう焼き鳥を食べられないなんてことにならないよう念を入れて定休日の確認もしてきたが、今日が定休日とは記載されていなかった。
しかし、焼き鳥屋に到着すると、『臨時休業』と書かれた張り紙がしてあったのだ。
たまに街中で臨時休業という張り紙が貼られたお店を目にするものの、自分が行く予定のお店が臨時休業になっている可能性があるとは全く考えていなかった。
せめて行く前に電話さえしていれば、臨時休業だと発覚したかもしれない。
まだまだ詰めが甘かったようだ……。
せっかく亜蘭に背中を押してもらってんのに、なにしてんだよ俺ってやつは……。
「いや、せめて来る前に確認しとけば……。とりあえずどこか別の焼き鳥屋探すわ」
「……でもさ、なんかもう絶対この焼き鳥屋にリベンジしてやりたくない?」
「……え?」
「同じお店で2回も焼き鳥がまともに食べれなかったってなったらさ、絶対またここきたいなって」
天川はまだこの焼き鳥屋に来たいと言ってくれているが、それは要するに、今日は帰りたいということだろうか。
今日焼き鳥屋が臨時休業かどうかを確かめてこなかった俺に嫌気がさしたのかもしれない。
「そ、それは確かに……。じゃあ帰るか?」
「そうだね……。とりあえず私の家くる?」
「--へ?」
俺が天川の家に?
え、それってこの前とは逆バージョンのおウチデートってことか⁉︎
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