第28話 天川を誘う
亜蘭から天川をデートに誘えと言われた俺は、どうやって天川をデートに誘うかを1日考えていた。
誘い方だけでなく、デートでどこに行くか、何をするかも考えなければならないので、デートに誘うと決めたその日に声をかけることはできなかった--なんて言い訳をしているが、ただその日に声をかける勇気がなかっただけである。
デートでどこに行くか、何をするか、なんて後でいくらでも決められるので、とりあえず日程だけ抑えておくということもできたわけだからな。
しかも結局どうやって誘うかも、どこに行くのかも決めきれていない。
「それで、もう弁当も食べ終わってお昼休みも終わりかけなわけだけど、いつ誘いに行くんだ?」
「う、うるさい。今から声かけに行こうと思ってたところだ」
お昼休み中に天川をデートに誘うと決めていた俺だが、心の準備ができず声をかけるのを後回しにしてしまい、残り5分でお昼休みは終わってしまうところまで来てしまった。
「……はぁ。昨日も言ったけどな、颯一があまりにもとろいようなら俺から行くからな?」
「大丈夫だ。今から行ってくる。……ありがとう」
俺は亜蘭にお礼を言ってから、天川と三折のいる席へと向かった。
天川はいつも三折といるので、そのせいで声がかけづらいのもあるが、もうそんなことを言っていられる状況ではない。
亜蘭にお礼をしたのは、亜蘭が俺の背中を押してくれているからだ。
自分から先に攻めれば、いくら天川といえど少しずつ亜蘭になびいていく可能性はある。
それなのに、亜蘭は俺に先攻を譲ってくれている。
そんな亜蘭をこれ以上待たせるわけにはいかない。
「あ、天川」
「窪田君、どうかした?」
「あ、いや、その、えっと……」
クソッ、ここまできて『遊びにいかないか』って誘うだけの言葉が出てこねぇ。
どれだけチキンなんだよ俺は。
俺が言葉を詰まらせていると、三折がジト目でこちらを見てきた。
あれは完全に呆れてるな……。
俺自身俺に呆れてるもんな……。
「あのさ、焼き鳥こないだあんまり食べれなかっただろ? 今週の土日、また一緒に行かないか?」
結局俺は、前回遊んだ時に天川から『また行こうね、焼き鳥』と言ってもらったこともあって、焼き鳥に誘うことにした。
「うん、いいよ。私もまたみんなで行きたいと思ってたし」
……あ、2人で、って言うの忘れてた!
そりゃそうだよな、俺から声かけられたらそりゃみんなで行くもんだと思うよな!
これは完全にミスったな……。
「私今週は予定があって無理なんだよねー。2人で行ってきなよ」
三折はため息をついた後で、予定があると言いだした。
この雰囲気、本当に予定があるわけではなく、俺に助け舟を出してくれたのだろう。
なぜだかわからないが、三折は俺に協力してくれるらしい。
俺と天川をくっつけようとしているのだとしたら、前回の行動についても説明がつく。
いや、でもなんでくっつけようとしているかの理由は全くわからないんだけど。
「えっ、でもそれならまた別の日に……」
「また別の日にも行けばいいでしょ! だから2人で行ってきなさい」
「あ、国平君もいくんだよね?」
「……あいつも休日は予定があるって」
「そ、そうなんだ……」
すまん亜蘭、ナチュラルに嘘ついた。
勇気出したんだからこれくらいは許してくれ。
てか天川、俺と2人で焼き鳥行くの嫌そうなんだが? 割とマジで泣きそうなんだが?
「うん、じゃあ2人で焼き鳥のリベンジだね!」
「--! 次飲むのは水だけにしとくか」
こうして俺は、なんとか天川と2人で遊びに行く約束を取り付けたのだった。
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