第22話 白状
亜蘭の前で三折から、俺と天川が2人きりになった話をされた俺は、窮地に立たされていた。
このままでは亜蘭に、亜蘭だけでなく三折も途中で帰宅してしまい、俺と天川が2人きりになったことがバレてしまう。
それだけではなく、三折がいなくなった後で、2人でウィンドウショッピングしたり、焼き鳥屋に行ったこともバレてしまうだろう。
天気の話をして無理やり話を逸らしてやろうかと考えたが、三折も無理やり話を戻してきて、逃げ道がなくなってしまった。
いや、というか三折はなんでニヤニヤしながら俺の方見てるんだよ。
こいつわざと亜蘭の前で、俺が天川と2人になったことを話してやがるな?
それを亜蘭にバラすことで、三折にどのようなメリットがあるというのだろうか。
ただ『面白いから』という理由だけで、この話をしてきているのだとしたら後で三折のコメカミをグリグリしてやろう。
「ああ、焼き鳥な。上手かったよ」
「3人で行ったんじゃないのか? 三折は行ってねぇのか?」
「もちろん私は行って……」
「--ぼんじりって美味しいよね‼︎」
どうすれば亜蘭に天川と2人になったことがバレないだろうかと悩んでいると、俺以上に話の流れをぶっ壊して会話に割り込んできたのは天川だ。
まあ焼き鳥の話をしているという点では、話の流れに沿っているのかもしれないが……。
俺が亜蘭に、天川と2人きりになったことを隠していることを察して、助け舟を出してくれたのだろう。
とはいえ、天川の発言は到底助け舟と言えるようなクオリティではなく、むしろ違和感が増しただけである。
……いや、天川がせっかく出してくれた助け舟を無駄にするわけにはいかない! ここで男を見せないでいつ見せるってんだ!
「ぼ、ぼんじり! そうそう! 美味いよなぼんじり!」
「う、うん! あの丸くてコロコロした感じが可愛いよね!」
天川はこんな状況でも平常運転で、天然をぶっ込んでくる。
可愛いってなんだよ! 美味しいって感想だけでいいんだよここは!
「かっ--、そうだよな! かわいいよなぼんじり!」
自分でも無理があるとは思いながら、天川の話に賛同する。
「颯一と天川が2人で焼き鳥屋に行ったのか?」
「あっ、え、えっと、いや、その……」
亜蘭も三折と同じく、無理やり話を元に戻してきた。
これはもう逃げ道がなくなってしまったな……。
……。
このまま無理矢理にでも嘘を押し通すつもりだったが、俺は亜蘭に対して罪悪感を覚えていた。
亜蘭が女たらしであることは看過できないものの、女の子に向き合う姿勢は真摯である。
そんな亜蘭に対して、俺は亜蘭が自分になびかせようとしている天川と2人で焼き鳥に行ったという事実を隠している。
それでいいのだろうか。
亜蘭は亜蘭なりに真剣なのに、俺だけがただ流れに身を任せて、しかも亜蘭に対して嘘までついて……。
「……はい。そうです」
俺は亜蘭に、天川と焼き鳥に行ったことを白状した。
一度隠そうとしている時点で、俺の行動は真摯な行動だったとは言えないが、それでも思い切って白状した瞬間、俺の心は軽くなった。
亜蘭からは、『なんで俺が狙ってる女の子と2人で遊んでるんだよ』と言われるかもしれないが、それは間違いない事実なので、甘んじて受け入れよう。
「……なんだよそれ! めっちゃ面白ぇじゃねぇか!」
「……え?」
亜蘭は俺の予想に反する反応を見せた。
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