第23話 勝負!
「お、面白い……?」
俺が天川と焼き鳥屋に行った話を聞いて、亜蘭は面白いと言い放った。
自分が狙っている女の子と、自分以外の男が2人きりで焼き鶏屋に行ったんだぞ?
普通の男であれば、そんな話を聞いたら嫉妬したり妬んだりするところだ。
それなのに、亜蘭は嫉妬したり妬んだりするどころか、面白いと言い放った。
これが女たらしとして、数多くの女の子を攻略してきた亜蘭の余裕なのだろうか。
「よし、ちょっと2人は自分の席戻ってくれ」
そして亜蘭は唐突に、天川と三折に自分の席へ戻るようお願いをした。
俺としても女の子と喋るのは緊張するので、早く戻ってほしいとは思っていたが、亜蘭はなぜ天川と三折に自分の席へ戻るようお願いしたのだろうか。
今の話の中で、天川と三折に自分の席へ戻るようお願いする理由は見当たらなかったように思うが。
「え、急にどうしたんだよ」
「お前と真面目な話をしないといけないからな」
俺と天川が焼き鳥屋に行った話を聞いた後で、俺としなければならない『真面目な話』とはどのような内容のだろうか。
先程は俺と天川が焼き鳥に行ったことを、『面白い』と言っていたが、あれは痩せ我慢で、本当は俺に一言言いたいことがあったのだろうか?
『もう天川と2人で出かけるな』とか、『もう天川と話すな』とか言われちゃうんだろうか。
最悪、『もう天川を視界に入れるな』とか言われそうだな。
いや亜蘭はそんなこと言うやつじゃないけど。
「真面目な話……?」
「えー、せっかくなんだしもうちょっと焼き鳥の感想を--」
「いいから戻ってくれ。これは男同士の大事な話なんだ」
「……まあいっか。行こっ。シロシロ」
「う、うん……」
三折はすぐにクルッと背中を向けて自分の席へと戻って行ったが、天川は俺の方を心配そうにチラチラと見ている。
俺のことを心配してくれてるんだろう。
美少女なだけでなく、あれだけ優しい心まで持ち合わせていれば、天川がモテるのは当然だな。
「よしっ、邪魔者はいなくなったことだし、話し合おうか」
「話し合うって何を?
「うーん……。焼き鳥屋に行った話は詳しく聞かせてもらいたいんだが……。とりあえず最初に一番言いたいことだけ言わせてもらうわ」
やはり亜蘭は俺に何かしら言いたいことがあるようだ。
どんな内容の話しでも受け入れるつもりだが、いざ聞くとなるとやはり亜蘭の話を聞くのは怖い。
しかし、ここで逃げてしまえば俺と亜蘭の関係は崩れ去ってしまうかもしれないし、俺は亜蘭と向き合わなければならない。
「あ、ああ」
「俺が天川をなびかせるのが先か、颯一が天川をなびかせるのが先か、勝負しようぜ」
「……なんだよその明らかな負け戦は⁉︎」
亜蘭が俺に言い放ったのは俺に全く勝ち目がなく、その勝負を受け入れるとは気軽に言えるはずのない内容の勝負だった。
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