第15話 救助依頼
「とりあえず家まで送るから。どっち向かって歩けば良い?」
酔っぱらってしまった天川を目の当たりにした俺は、とにかく天川を帰宅させようと考えて焼き鳥屋を出た。
そして天川に自宅までのルートを問いかけたのだが……。
「う〜んと〜、右って左だっけ? でも右は右だから、えっと、確か右はお箸を持つ方で--」
天川は右も左もわからない程に酔っ払ってしまっているようだ。
お酒で酔っぱらってしまったことで、元々の天然さに拍車がかかってしまっている。
天川を帰宅させるくらいしか対策は思い浮かばないのに、この様子では天川に道を訊いて帰宅させるのは困難だろう。
だからと言って、漫画やアニメのようにホイホイと天川をラブのホテルに連れて行くわけにもいかないし、今日は偶然両親がいないとはいえ、俺の家に連れ込むのも何かと問題が生じてくる。
早急に天川に道を聞いて帰宅させることを諦めた俺は、次の手段に出ることにした。
「あ、三折か? あのさ、さっき天川と焼き鳥食いに行ってたんだけど、間違って天川がお酒飲んじまってさ……。ちょっと助けに来てくれねぇか?」
次の手段、それは三折に助けを求めることだ。
俺は天川の自宅を知らないが、三折なら天川の家を知っているだろう。
それならば、三折には申し訳ないが、一度俺たちが今いるこの場所まで来てもらって、道案内をしてもらえばいいのではないかと考えたのである。
『え、何その面白い…‥じゃなかった、大変な状況』
「おい待て今面白いって言ったか?」
「言ってないよ〜言うわけないじゃんそんなこと」
こいつ絶対面白いって言いかけだだろ。
俺からしてみれば面白いとは相反した状況であるというのに。
「こっちの気も知らないで……」
「うーん。なんとかしてあげたいところだけど、私今家で今日買ってきた卵で作ったオムライス食べてるから、ちょっと手が離せないんだ〜。だからシロシロのことよろしくね! くれぐれも手を出さないで終わるなんてことがないように!」
「あ、ちょ、オムライスと天川どっちが大事なんだよ⁉︎ あと普通に手は出さないからなッ--」
ツッコミどころが多すぎて全てをツッコミ終える前に、三折に電話を切られてしまった。
いや、てか助けに来てくれねえかってお願いする前に、電話で道を訊くだけでもよかったのか。
でもまあ三折のことだから、電話で道をお願いしても、何かと理由を付けられて電話を切られてしまうのだろう。
……はぁ。
三折の奴、天川と仲良いんじゃねぇのかよ……。
親友なら友達のことが心配で助けに来るもんじゃねぇのか……。
と心の中で文句を垂れつつ、これ以上文句を言ったところで状況は何も改善されないので、酔っぱらっている天川をどうするのか、頭をフル回転させて考えた。
うーん……。よし、こうなったら。
腹を括り目的地を決めた俺は、目的地に向かって歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます